不動産×ベンチャー|講義資料|専門弁護士ガイド

1 共有となっている土地(や建物)が活用されてないことが多い
2 土地の一時的,小規模面積の活用
3 定期借地
4 借地権買い取り(古典的)
5 抵当権が付いたままでの不動産売買
6 『ワケあり物件』=心理的瑕疵のある物件取引
7 トレーラーハウスの利用
8 空き家放置問題
9 終身借家契約,サービス付高齢者向け住宅
10 その他・参考

平成26年6月27日の講義の資料です。
『※イタンジ伊藤氏登壇 増席決定!【第2回】不動産系スタートアップ勉強会』
法律的な観点からの現状の問題をご紹介します。
社会に価値を提供するサービス構築の参考情報にしていただければ良いと思います。

1 共有となっている土地(や建物)が活用されてないことが多い

(1)活用できるとすれば

地方,山林→再エネ(風力発電,太陽光パネル設置)
都市部→建物建築→賃貸
 ただし,需給は飽和気味。シェアハウスは古い建物を再利用だと効率が良い。
 新築は経済効率で成り立たない。

(2)活用するためには

共有者間の協議→疎遠の場合は内容証明などの一定の通知
共有物分割訴訟や立て替えている固定資産税での強制的な買い取り手続を利用
通行権の確保→隣地所有者との協議や調停,訴訟

詳しくはこちら|共有物の使用方法の意思決定の方法(当事者・協議の要否)
詳しくはこちら|使用方法の意思決定プロセス|具体例|通知書サンプル・トラブル予防
共有物の変更・管理・保存の判別と必要な共有者の数
詳しくはこちら|共有持分買取権の基本(流れ・実務的な通知方法)
詳しくはこちら|共有物分割の手続の全体像(機能・手続の種類など)
太陽光パネル設置の土地利用形態は賃貸借,地上権など

(3)太陽光発電設備の法的問題

太陽光発電設備の運用では,通信技術・設備が活躍する場面があります。
PCS(パワーコンディショナー)の停止後の再稼働操作の遅れで,損害が生じるトラブルがあるのです。
その防止策として,常時監視という業務が有用となっているのです。
太陽光発電システム;日照阻害,販売,設置,運用トラブル予防策

2 土地の一時的,小規模面積の活用

一例として,駐輪場やレンタサイクル(シェア)というものもあります。
エコ,省エネという意味で,自転車の普及が促進されている背景もあります。

<小規模の土地活用×エコの組み合わせ例>

小規模の土地上に太陽光パネルが屋根となっている電動自転車スタンドを設置

無給電のシェア電動バイクのステーションになる

建物所有ではない土地賃貸借は借地借家法の適用なし→解約申入で終了する

3 定期借地

一般的な借地は,オーナー側の不都合が大きく,使いにくいのです。
問題は,終了した時です。
通常,例えば30年間限定で事業プランを立てています。
事業者は,建物を解体して更地に戻して土地を返還する義務があります。
土地・建物の利用ニーズによっては,建物と低廉で買い取り,地主と新たな定期借地契約を締結することもあり得ます。
結局,用地,建物,内装などの格安居抜きが実現します。
cf ステーキのけん

定期借地は普通借地と違って法定更新がない;3種類がある
事業用定期借地は10〜30年,30〜50年の2タイプがある

参考
借地,雇用,結婚;共通点=「期間限定」の流行り

4 借地権買い取り(古典的)

借地について,地主の都合で明渡を請求する場合には明渡料の支払が前提となります。
逆に,借地人がその建物を利用(居住)しなくなった場合に,借地権を地主に買い取ってもらう強制的な手段はありません。
例外として建物買取請求権はありますが,条件が限定されていて,代金額借地権価格というわけではありません。
詳しくはこちら|建物買取請求における代金算定方法・場所的利益の意味と相場

そこで,借地権を売却するということが考えられます。
当然,マーケットでの流動性は低いので,低廉になります。
逆に,購入するスキームとしては,低廉で購入後,建替承諾などの手続により,建物を立て替えて,建物を賃貸するなどの収益化,事業化ができます。
詳しくはこちら|借地上の建物の賃貸|借地権譲渡ではない|建物賃貸禁止特約の有効性
詳しくはこちら|再築禁止特約と増改築許可の利用(新旧法共通)

5 抵当権が付いたままでの不動産売買

通常は,担保の負担がない/消滅させる前提で,売買が行なわれます。
しかし,敢えて担保が付いたままで購入するというイレギュラーな方法もあります。
購入後に,購入者の方で,返済などにより担保を抹消するというスキームです。
代価弁済抵当権抹消請求第三者弁済という制度が用意されています。
また,敢えて競売が実施されるのを止めないという変わったスキームもあります。
リゾートマンションでワンシーズンを10万円で使えるというようなものです。
バブル期のリゾートマンション建設ラッシュの痕跡が,新たなビジネスチャンスにつながるのかもしれません。

抵当権負担のある不動産売買;抵当権消滅請求など

6 『ワケあり物件』=心理的瑕疵のある物件取引

その物件内や,周辺で過去,死亡事故があったという場合は,賃貸や売買の際に,一定期間は告知義務があります。
当然,賃料相場は下がるということになります。
最近は,ワケあり物件でも安いなら進んで借りるという都心部の若年層が増えています。
以前は,半額程度だった賃料相場が,70%程度まで上がっている模様です。
また,シェアハウスという方式と組み合わせると,ますます嫌悪の程度は解消されるので値下げ幅は小さくで済むと思われます。
さらに,最近の話題としてペット付きマンションというのもあります。
次のようなニーズが合致して流行りつつあるものです。
これも仲間が一緒にいる嫌悪の程度軽減と言えるかもしれません。

<ペット付きマンションのニーズのモト>

ア 少子化,晩婚化・未婚化が進み,ペットを家族にするというニーズ上昇イ マンション供給過剰で空き室リスク上昇→貸しやすくする工夫へウ 保健所では,動物愛護法の強化により殺処分が困難に→引き取り手歓迎

ただ,1つの居室に多人数を入居させるシェアハウスについては,法規制が今法律制定の準備中で,まだ曖昧な部分もあります。
不動産賃貸と「人の死」;告知義務,損害賠償,賃料相場の減額
詳しくはこちら|不動産売買・賃貸×過去の人の死|基本|法的構成・責任・発覚ルート
シェアハウスの『寄宿舎』扱い→規制緩和

7 トレーラーハウスの利用

トレーラーハウス,キャンピングカーを利用すると,建築制限を回避できます。
また,設置と撤去が用意です。
スピーディーな設置や,一時的な使用に適しています。
実際に,震災復興の際,一部エリアで活躍したスキームです。
ただ,ライフラインをしっかりと接続すると,建築物扱いとなり,規制の対象となります。
トレーラーハウス,建築基準法の建造物に該当するか

8 空き家放置問題

土地,建物は,使える状態ではないと,単なるお荷物になります。
管理のコストがかかるだけで,賃貸や売却ができない,という状態です。
ただ,ニーズがうまく合致すれば利用する可能性はあります。
実際に全国各地で自治体や民間の努力により,空き家バンクが運用されています。

空き家放置問題のまとめ;民事上の責任,行政的解決方法,空き家バンク

9 終身借家契約,サービス付高齢者向け住宅

政府の用意したスキームです。
公的な助成,税や融資での優遇措置などがあります。
このような既成のメリットだけではなく,例えば,リタイアしたミュージシャンを集結など,工夫によっては新たな事業化も考えられます。
海外の実例もあります。

終身借家契約は借地借家法に抵触するが高齢者住まい法で認められた
サービス付高齢者向け住宅

※参考 定期借家
詳しくはこちら|定期借家の基本(更新なし=期間満了で確実に終了する)

10 その他・参考

(1)重要事項説明・2重価格表示など

買付証明書,宅建業者の評価根拠説明義務なども含む。
不動産売買の2重価格表示が解禁されている
詳しくはこちら|買付証明書・売渡承諾書・仮契約書|記載事項・活用方法・法的意味
宅建業者は評価額根拠説明義務を負う;まとめ
詳しくはこちら|重要事項説明義務の基本(説明の相手方・時期・内容)
宅建業者は売買,賃貸の仲介,自己取引で重要事項説明義務がある
賃貸住宅管理業登録のまとめ

(2)不動産競売

不動産競売の法律問題のすべて|専門弁護士ガイド

共有不動産の紛争解決の実務第2版

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