1 『終身』の建物賃貸借は借地借家法に抵触するが高齢者住まい法で認められる
2 終身借家を提供するには認可が必要
3 終身借家の事業の認可手続では,資力と高齢者向けの住居性能が審査される
4 集合住宅ではなくても終身借家は利用できる
5 期間(年数)と『終身』という設定を併用できる;期間付き死亡時終了建物賃貸借契約

1 『終身』の建物賃貸借は借地借家法に抵触するが高齢者住まい法で認められる

終身借家契約とは,文字どおり終身,つまり,賃借人が亡くなった時に終了する賃貸借契約です。
このような不確定である期限(期間)は,借地借家法に抵触すると思われます。
そこで,従来は終身という期間の賃貸借契約がなされることは通常なされませんでした。
しかし,高齢者の居住の安定確保に関する法律によって『終身借家契約』が正面から認められました。
この法律は,略して,高齢者住まい法とか高齢者住居法とか呼ばれています。
終身借家権は,高齢者に良好な居住環境を提供するという政策の一環として創設されました。

2 終身借家を提供するには認可が必要

終身借家契約は,高齢者向けの住宅供給,という政策的な配慮から,借地借家法の例外として認められたのです。
そのような経緯から,高齢者の居住に適した住環境であること,が大前提となっています。
事業者は,個別的に,都道府県知事の認可を受ける必要があります(高齢者住まい法52条~)。

3 終身借家の事業の認可手続では,資力と高齢者向けの住居性能が審査される

終身借家の事業の認可要件は事業の運営者,運営する環境が適切であるかどうか,ということです。
以下,代表的な判断要素を示します。

<終身借家契約を利用した事業の認可要件>

あ 資力

終身賃貸事業の事業者が,事業遂行に問題がないと言える程度の資力が必要とされます。

い 住居の性能

・バリアフリー構造
・床面積,廊下の幅,居室の出入口の幅,浴室の大きさなどについて一定の基準を満たす

4 集合住宅ではなくても終身借家は利用できる

終身借家(契約)の事業者は,特に大規模であったり法人であるという限定はありません。
個人で認可を取られている方もいらっしゃいます。
結果的に,借地借家法の適用がなく,個別的な事情に合致した不動産の利用ができることになります。

5 期間(年数)と『終身』という設定を併用できる;期間付き死亡時終了建物賃貸借契約

終身借家契約では終身,つまり,借家人が亡くなった時に終了するという規定が原則です。
これに加えて,通常の期間,つまり年数などを併用することも可能です。

<期間付き死亡時終了建物賃貸借契約>

賃借人が亡くなった時と規定した期間(例=10年間)の経過の早い方で賃貸借が終了する

通常の終身借家契約よりも,賃借人に不利(制限が大きい)です。
そこで,期間付き死亡時終了建物賃貸借契約は,賃借人から特に申出があった場合にだけ締結することができるとされています(高齢者住まい法57条)

なお,高齢者向けの施設,建物を運営する事業として,『サービス付高齢者向け住宅』というものがあります。
これは,一定の設備,サービスを備えて登録すると,費用の補助,税金・融資の優遇措置が受けられる制度です。
サービス付高齢者向け住宅については,別の項目で説明しています。
<→別項目;サービス付高齢者向け住宅

条文

[高齢者の居住の安定確保に関する法律;高齢者住まい法]
(事業の認可及び借地借家法の特例)
第五十二条 自ら居住するため住宅を必要とする高齢者(六十歳以上の者であって、賃借人となる者以外に同居する者がないもの又は同居する者が配偶者若しくは六十歳以上の親族(配偶者を除く。以下この章において同じ。)であるものに限る。以下この章において同じ。)又は当該高齢者と同居するその配偶者を賃借人とし、当該賃借人の終身にわたって住宅を賃貸する事業を行おうとする者(以下「終身賃貸事業者」という。)は、当該事業について都道府県知事(機構又は都道府県が終身賃貸事業者である場合にあっては、国土交通大臣。以下この章において同じ。)の認可を受けた場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、借地借家法(平成三年法律第九十号)第三十条の規定にかかわらず、当該事業に係る建物の賃貸借(一戸の賃貸住宅の賃借人が二人以上であるときは、それぞれの賃借人に係る建物の賃貸借)について、賃借人が死亡した時に終了する旨を定めることができる。

(認可の基準)
第五十四条 都道府県知事は、第五十二条の認可の申請があった場合において、当該申請に係る事業が次に掲げる基準に適合すると認めるときは、同条の認可をすることができる。
 一 賃貸住宅が、次に掲げる基準に適合するものであること。
  イ 賃貸住宅の規模及び設備(加齢対応構造等であるものを除く。)が、国土交通省令で定める基準に適合するものであること。
  ロ 賃貸住宅の加齢対応構造等が、段差のない床、浴室等の手すり、介助用の車椅子で移動できる幅の廊下その他の加齢に伴って生ずる高齢者の身体の機能の低下を補い高齢者が日常生活を支障なく営むために必要な構造及び設備の基準として国土交通省令で定める基準に適合するものであること。
(略)

(期間付死亡時終了建物賃貸借)
第五十七条 第五十二条の認可(前条第一項の変更の認可を含む。以下「事業の認可」という。)を受けた終身賃貸事業者(以下「認可事業者」という。)は、当該事業の認可に係る賃貸住宅(以下「認可住宅」という。)において、第五十四条第二号及び第三号の規定にかかわらず、賃借人となろうとする者(一戸の認可住宅の賃借人となろうとする者が二人以上であるときは、当該賃借人となろうとする者の全て)から特に申出があった場合においては、公正証書による等書面によって契約をする建物の賃貸借(一戸の認可住宅の賃借人が二人以上であるときは、それぞれの賃借人に係る建物の賃貸借)であって借地借家法第三十八条第一項の規定により契約の更新がないこととする旨が定められた期間の定めがあり、かつ、賃借人が死亡した時に終了するもの(以下「期間付死亡時終了建物賃貸借」という。)をすることができる。