1 空家の統計では急速に空家が増えつつある
2 『空家・土地』放置の問題や弊害
3 空家・土地の『所有者』のリスク・コスト
4 『空家・土地』放置問題|活用・売却できない理由
5 『空家』放置問題|社会的背景=大都市集中・核家族化・少子化
6 『空家』放置問題|典型的原因=相続・税金関係
7 『空家』放置|解体しない理由は『税金を抑える』ため
8 建物を所有しているだけでも一定の法的責任を負う
9 不動産の所有権放棄→国庫帰属という解決法は不可能という傾向

日本の各地で『空き家』による問題・リスクが生じています。
本記事では空き家問題全体について説明します。
なお,民間や行政による『対策』『有効活用』『復興』に向けた取り組みは別記事で説明しています。
詳しくはこちら|空家問題→有効活用による解消|コンテンツ発掘・地域復興・民事信託

1 空家の統計では急速に空家が増えつつある

空家の数が増加し続けています。
まずは統計的なデータから紹介します。

<空家の数に関する統計>

あ 住宅調査|国土交通省|最終報告書

平成26年3月20日
国土交通省
個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会

い 住宅調査|国土交通省|平成20年度

全国の空き家の総数 約760万戸
うち個人住宅 約270万個

う 住宅調査|総務省|平成25年度速報

平成25年住宅・土地統計調査・速報集計

項目 集計結果 5年前との比較
総住宅数 6063万戸 5.3%アップ
空家数 820万戸 8.3%アップ
空家率 13.5% (過去最高)

※別荘など2次的住宅数を除外すると12.8%

外部サイト|総務省統計局|平成25年度速報

2 『空家・土地』放置の問題や弊害

『空き家』の放置が社会的な問題になっています。
具体的な『弊害・迷惑』をまとめます。

<管理不十分な空き家による弊害の例(※2)>

あ 防災

ア 建物倒壊
周囲のモノや動物,人が損壊,傷害を受ける
イ 火災発生
例;放火されて延焼する

い 防犯

ア 『足のつかない場所』の発生
犯行に用いられる→犯罪を助長する
イ 不法侵入
第三者が建物に住みつくことがある

う 衛生

ア ゴミ・廃棄物の不法投棄
イ 周辺への悪臭や虫害などの影響

え 景観

古びた建物→地域の景観を損ねる
草・木の越境→隣家の迷惑も生じる

3 空家・土地の『所有者』のリスク・コスト

不動産による周囲への『弊害』は,所有者の法的責任と直結しています。

<空き家・土地の所有者の責任や負担>

あ 『周囲への影響』に対する賠償責任

前記※2の弊害について法的責任が生じることもある
共有の場合は各共有者が全額の賠償責任を負う
詳しくはこちら|土地工作物責任の全体像(条文規定・登記との関係・共同責任)
詳しくはこちら|竹木の管理不備による占有者・所有者の責任の解釈と具体例

い 税金(固定資産税)の負担

所有しているだけで納税義務が継続する
詳しくはこちら|固定資産税の賦課期日や建物の新築基準時点と台帳課税主義
土地・建物の状況により課税の扱いが異なる(後記※3)

う マンション管理費

例;リゾートマンションは豪華設備→管理費が高い

え メンテナンス

物理的な建物維持・敷地管理の費用
例;修繕・修理・草木の伐採・廃棄物処理

お 建物解体費用

『使えない』状態となっているとこのように負担が大きいのです。
つまり経済的に『マイナスだけ・プラスはない』という状態になります。

4 『空家・土地』放置問題|活用・売却できない理由

不動産が活用できない・売却できない,という事情としてよくあるものをまとめました。

<活用・売却できない=買い手がつかない不動産>

あ 活用できない

ア 住宅地・商業地ではない
イ 『山奥』である場合など
ウ 住宅地ではあるが過疎化が進んでいる
エ 住宅地ではあるが建築基準法の建築条件が欠けている
例;接道義務を満たしていない(※1)
オ 面積が小さいため,用途が限られている
例;土地の収用で中途半端な面積に減った
カ 過去に大きな事故(殺人など)があった
詳しくはこちら|旅館業×『過去の人の死』告知義務|賃貸借との違い・ワケあり物件有効活用

い 価値(活用の程度)と比べて『コスト』が高い

ア 固定資産税が高い
イ マンションの管理費・修繕積立金が高い
ウ 測量費用が高い

<既存不適格×再築|接道義務違反の例(上記※1)>

あ 既存不適格|要点

接道義務のルール制定前は『適法』であった場合
→現在でも『違法』扱いはしない

い 既存不適格×再築

建物を再築する場合
→既存不適格の制度の保護が適用されない
=確認申請に対して『不適合』となる

既存不適格については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|セットバック・敷地後退|既存不適格×再築
以上のような事情が『空き家・土地』放置という現象を生んでいるのです。

5 『空家』放置問題|社会的背景=大都市集中・核家族化・少子化

『空き家』が放置される主な原因はいくつかあります。
背景事情と,そこから生じる典型的な原因を整理します。

<『空家』放置問題|社会的背景>

あ 大都市集中現象・地方の過疎化

『古い家』から若者が大都市に出て行く

い 核家族化

若者が大都市で家族を持つ
→『古い家』に戻らなくなる

う 少子化・人口減少

『家族・子供』を持たない者も急増している
→『古い家』を継ぐ者自体が減っている

このような社会的な背景事情から,次のような傾向につながります。

6 『空家』放置問題|典型的原因=相続・税金関係

空家が放置される問題の直接的な原因を整理します。

<『空家』放置問題|典型的原因>

あ 相続人の誰も利用しない

居住者が亡くなり,その相続人の誰も当該建物を利用しない
全員が相続放棄をすれば最終的に政府が所有権を取得する手続がある
しかし,相続人が相続放棄をしない,かつ,空き家の管理(取壊し)をしない,という場合に『放置』となる

い 相続・承継の不備

相続人の中に利用したい者がいるが完全に承継できていない
ア 他の相続人が取得
イ 他の相続人との共有

う 建物を取り壊すと固定資産税が跳ね上がる

不動産を所有していると『固定資産税』や『都市計画税』が課せられる
この税額は『課税標準』によって算定される
『住宅用地』については,税額が減額される制度がある

え 住宅供給サイドの利益が『新築>中古』

新築建物の販売の場合,仲介業者が買い側・売り側の両方から手数料を得られる(両手数料=『両手』)
『双方代理禁止法案』は以前議論されたが,現在立法化されていない
関連コンテンツ|不動産流通業界の基礎知識|3つの『価格』|干す→値こなし→囲い込み→両手実現

お 金融機関の審査→中古住宅だとローン審査が下りにくい

金融機関が『中古住宅』の評価を低く見積もる
→住宅ローンの対象として審査が下りにくい
→中古住宅が『売れない』
→『売れない』ので評価として低く算定する
→戻る(スパイラル)

7 『空家』放置|解体しない理由は『税金を抑える』ため

老朽化した空き家が解体されない理由に『税金を減額する』というものがあります。
このルールについてまとめます。

<住宅用地の課税特例措置(※3)>

あ 特例の対象

『住宅用地』=建物の敷地(土地)

い 特例の内容
特例の種類 対象部分 固定資産税 都市計画税
小規模宅地 200平方メートル以下 6分の1 3分の1
一般宅地 200平方メートル以上の部分 3分の1 3分の2

これは建物が存在することが条件です。
逆に言えば,『建物を解体した』時点で減額がされない=税額が跳ね上がる,ということになります。
この制度が,『解体することのブレーキ』となっています。
そこで,平成27年に税制改正でこの制度が変更されました。
詳しくはこちら|空家問題|税制改正・補助金|課税の優遇措置除外・解体・改修補助金

8 建物を所有しているだけでも一定の法的責任を負う

ごく一般に建物所有という理由で管理の義務を明文で規定する条文はありません。
ただし,当然ではありますが,建物の管理不十分が原因で周囲に損害を与えた場合は,法的責任を負います。
建物や塀など,土地の工作物から損害が生じた場合,占有者や所有者が賠償責任を負います。
そのような意味では管理する義務は存在する,と言えます。
詳しくはこちら|建物の瑕疵や火災による近隣の損害|工作物責任・失火責任法

9 不動産の所有権放棄→国庫帰属という解決法は不可能という傾向

不動産の所有権放棄ができれば『所有者なしの不動産』となります。
こうなったとすれば『無主の不動産』として『国庫帰属』というルールが使えます。
所有権を強制的に国に譲渡する=所有の負担から脱すことにつながります。
しかしこの見解については明確なものがなく,現実的にはできないという状況です。
詳しくはこちら|無主の不動産→国庫帰属|不動産の所有権放棄は現実的にはできない傾向