1 共有物の変更・管理・保存行為の意思決定に必要な同意の範囲と大まかな分類
2 行為の対象の区別(共有物か共有持分・前提)
3 共有物に関する意思決定に必要な共有者の同意
4 変更・処分の意思決定要件と分類される行為(概要)
5 管理の意思決定要件と分類される行為(概要)
6 共有物の管理と組合財産の管理との意思決定要件の比較
7 保存の意思決定要件と分類される行為(概要)
8 共有物の使用方法の意思決定のプロセス(概要)

1 共有物の変更・管理・保存行為の意思決定に必要な同意の範囲と大まかな分類

共有者は,共有物に関するいろいろな行為について,単独での意思決定ができないことが多いです。具体的なアクションによって同意が必要な共有者の数が決まってきます。具体的には変更(処分)・管理・保存(行為)の3つに分類されます。
本記事では,変更・管理・保存(行為)に分類される行為の大まかな内容と,その行為の意思決定の要件(どの範囲の共有者の賛成が必要なのか)について説明します。

2 行為の対象の区別(共有物か共有持分・前提)

これから説明する変更・管理・保存の分類とは,共有物(全体)を対象とする行為についての分類です。
共有持分を対象とする行為は,変更・管理・保存の分類とは関係ありません。誤解が生じやすいところなので最初に押さえておきます。

<行為の対象の区別(共有物か共有持分・前提)>

あ 共有物全体を対象とする行為

共有物全体を処分する場合
共有者全員に効果が及ぶ
→内容によって意思決定できる条件が異なる

い 共有持分を対象とする行為

共有持分だけを処分する場合
例;共有持分の売却・担保設定
→共有者単独で行うことができる

問題となるのは『共有物全体』を対象とするアクションです。
以下『共有物全体』の処分について説明を続けます。

3 共有物に関する意思決定に必要な共有者の同意

共有物に関する意思決定は,変更・管理・保存行為のそれぞれで違います。

<共有物に関する意思決定に必要な共有者の数>

管理(広義)の種類 条文(民法) 必要な共有者の同意
変更 251条 全員の同意
管理(狭義) 252条本文 持分価格の過半数(※1)
保存 252条ただし書き 各共有者単独

4 変更・処分の意思決定要件と分類される行為(概要)

変更・処分行為の意思決定には,共有者全員の同意が必要です。
変更・処分行為に分類される行為とは物理的変化を伴う行為法律的な処分です。実際にはこれらに該当するかどうかがはっきりしないことがよくあります。

<変更・処分の意思決定要件と分類される行為(概要)>

あ 意思決定の要件

『変更・処分』に関する意思決定
→共有者全員の同意が必要である(前記)
※民法251条

い 変更・処分行為の意味(概要)

次のいずれかに該当する行為
ア 物理的変化を伴う行為
イ 法律的に処分する行為
詳しくはこちら|共有物|『変更』『処分』行為

5 管理の意思決定要件と分類される行為(概要)

狭義の管理行為の意思決定には,共有持分の価格の過半数を有する共有者の同意が必要です。
管理行為に分類さえる行為とは,利用と改良行為です。当然,実際にはこれに該当するかどうかがはっきりしないこともよくあります。

<管理の意思決定要件と分類される行為(概要)>

あ 意思決定要件

狭義の『管理』に関する意思決定
→共有者の持分の価格の過半数で決する(前記)
※民法252条本文

い 管理行為の意味(概要)

狭義の管理(行為)の意味
→共有物の使用・利用・改良行為

う 利用と改良(行為)の意味(概要)
利用 共有物の性質を変更せずに収益を上げる行為
改良 共有物の交換価値を増加させる行為

詳しくはこちら|共有物の(狭義の)管理行為の基本的な内容

6 共有物の管理と組合財産の管理との意思決定要件の比較

民法上の組合の財産も(一種の)共有です。しかし,一般的な共有とは,意思決定の要件が違います。
一般的な共有物の管理は持分価格(持分割合)の過半数ですが,組合財産の管理は,組合員の(頭数としての)過半数の賛成で決定するのです。同じ過半数でもカウント方法が違ってくるのです。

<共有物の管理と組合財産の管理との意思決定要件の比較>

あ 意思決定方法|比較
決定の対象 決定方法 根拠|民法
共有物の『管理』 共有者の持分価格の過半数(上記※1) 252条本文
組合財産の『管理』 構成員の頭数の過半数 670条1項(※2)

※2 組合の『業務執行』に該当する

い 実務・表面化|典型例

『組合』に該当するかどうかによって
管理方法の意思決定の方法が異なる(有効かどうかが違ってくる)
詳しくはこちら|民法上の組合の財産の扱い(所有形態・管理・意思決定・共有の規定との優劣)
組合に該当するかどうかの見解が対立する
詳しくはこちら|民法上の組合の共同事業の基本(目的となりうる事業・事業の共同性)

7 保存の意思決定要件と分類される行為(概要)

保存行為は,各共有者が単独で行うことができます。意思決定というプロセス自体が不要です。
保存行為に分類さえる行為とは,物理的な現状を維持し,かつ,他の共有者に不利益が及ばない行為です。当然,実際にはこれに該当するかどうかがはっきりしないこともよくあります。

<保存の意思決定要件と分類される行為(概要)>

あ 意思決定の要件

各共有者が単独で行うことができる(前記)
※民法252条ただし書き

い 保存行為の意味

『ア・イ』の両方に該当する行為
ア 物理的な現状を維持すること
イ 他の共有者に不利益が及ばない
詳しくはこちら|共有物|『保存』行為

8 共有物の使用方法の意思決定のプロセス(概要)

以上の説明は,共有物に関する行為を意思決定するために必要な要件(賛成の範囲)でした。管理行為の意思決定のためには,共有者が協議して多数決をすることになります。このような意思決定のプロセス(方法)については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|共有物の使用方法の意思決定の方法(当事者・協議の要否)

本記事では,共有物の変更(処分)・管理・保存行為の意思決定要件とそれぞれに分類される行為の大まかな内容を説明しました。
実際には,具体的・個別的な事情によって違う結論となることもあります。
実際に共有物の扱いの問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。