【民法上の組合の財産の扱い(所有形態・管理・意思決定・共有の規定との優劣)】
1 民法上の組合の財産の扱い
2 民法上の組合の特徴(目的・性格)
3 組合財産の所有形態の基本
4 組合財産の所有形態の特殊性
5 組合財産の財産と意思決定(基本)
6 組合の規定と共有の規定の適用における優劣関係
7 民法上の組合に関する訴訟の当事者適格・共同訴訟形態(参考)
1 民法上の組合の財産の扱い
民法上、共同事業を行うための組合という制度があります。組合が所有する財産(組合財産)の法的な扱いには特徴があります。
本記事では、組合財産の所有形態、管理や意思決定、共有の規定と組合の規定との適用における優劣関係などを説明します。
2 民法上の組合の特徴(目的・性格)
組合が財産を所有する形態はちょっと複雑です。それは、組合という制度の特徴が制度設計に反映されているからです。
特徴とは、組合員の共同の目的のために組合が存在していて、人的な関係が前提となっているというものです。
<民法上の組合の特徴(目的・性格)>
あ 目的の存在
組合員相互の共同目的のために組合を維持・存続させる
※民法667条1項
い 団体の性格
団体的な人的結合関係が存在している
3 組合財産の所有形態の基本
民法上の組合の財産の所有の仕組みは少し特殊です。
まず、組合は法人格がないので、組合の財産は、組合員全員が所有することになります。つまり共有です。各組合員は共有持分を有することになるのです。
ここまでは一般的な共有そのものですが、いくつかの制限がかかっています。制限については後述します。
<組合財産の所有形態の基本>
あ 条文・規定
条文上、組合員の共有とされている
※民法668条
い 原則
原則的に民法の共有の規定が適用される
組合員は財産の(共有)持分を有する
※民法249条〜
※最高裁昭和33年7月22日
う 特殊性(合有)
通常の共有とは異なる点がある(後記※1)
合有と呼ばれる分類である
※最高裁昭和33年7月22日
※潮見佳男『基本講義債権各論1 契約法・事務管理・不当利得』新世社p240
※能見善久ほか編『論点体系 判例民法2物権 第3版』第一法規2019年p335
4 組合財産の所有形態の特殊性
民法所の組合の財産は、前述のように組合員による共有ですが、通常の共有と違って、共有物分割請求と処分(譲渡)が制限(禁止)されています。組合の特徴を反映したルールです。
<組合財産の所有形態の特殊性(※1)>
あ 財産の支配権一般
ア 一般的な支配権
組合財産に対する組合員各自の自由な支配権
→否定される
イ 組合財産債権の権利行使
組合財産である債権について、その持分についての権利を単独で行使することはできない
※民法676条2項(平成29年改正により新設された)
い 分割請求の制限
組合の存続中において
→組合財産の分割請求はできない
※民法676条3項(平成29年改正により2項から3項に変わった)
う 持分処分の制限
持分の処分を組合及び組合と取引をした第三者に対抗できない
※民法676条1項
※大判昭和7年12月10日
※大判昭和11年2月25日
5 組合財産の財産と意思決定(基本)
組合として、組合財産の管理について意思決定することがあります。
意思決定の要件をまとめます。
<組合財産の財産と意思決定(基本)>
組合財産の管理行為について
→組合の業務執行である
→頭数の過半数で決する
※民法670条1項
6 組合の規定と共有の規定の適用における優劣関係
組合が所有する財産は、同時に組合員の『共有』でもあります。
そこで2つの規定のどちらが適用されるか、という問題があります。
優劣関係についてまとめます。
<組合の規定と共有の規定の適用における優劣関係>
あ 共有物の管理(比較)
共有物の管理行為について
→持分の価格の過半数で決する
※民法252条
い 組合・共有の規定の優劣(概要)
組合財産について
→組合の規定が優先的に適用される
共有の規定は適用されなくなる
詳しくはこちら|共有物の変更・管理・保存行為の意思決定に必要な同意の範囲と大まかな分類
7 民法上の組合に関する訴訟の当事者適格・共同訴訟形態(参考)
以上のように、組合財産の所有関係は特殊性があります。この特殊性が、組合に関する訴訟の当事者が誰になるか(当事者適格)や、複数の組合員が当事者になる場合の扱い(共同訴訟形態)に影響を及ぼします。このことについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|民法上の組合に関する訴訟の当事者適格・共同訴訟形態
本記事では、民法上の組合の組合財産の法的扱いについて説明しました。
実際には、個別的な事情や主張・立証のやり方次第で結論が違ってくることがあります。
実際に民法上の組合の財産に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。