1 共有物の使用・管理に関する令和3年改正民法(新旧条文と要点)
2 民法249条=共有物の使用
3 民法251条=共有物の変更
4 民法252条=共有物の管理
5 民法252条の2

1 共有物の使用・管理に関する令和3年改正民法(新旧条文と要点)

令和3年の民法改正の中に、共有に関する規定が入っています。共有に関する改正は大きく2つに分けられます。
1つは、共有を維持する前提のルール(共有物の変更・管理)で、3つの条文変更と1つの条文の新設がありました。
もうひとつは、共有関係の解消のルールで、1つの条文変更と3つの条文の新設がありました。これに関連して、準共有の規定1つも、形式的に変更されています。
本記事では、共有を維持する前提のルールについて、改正前後の(新旧)条文と、変更された要点を説明します。
共有関係の解消のルールについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|令和3年改正民法258条〜264条(共有物分割・持分取得・譲渡)の新旧条文と要点
なお、公布は令和3年4月28日であり、ここから2年以内に施行される予定です。現時点(令和3年6月)ではまだ施行されていません。

2 民法249条=共有物の使用

<民法249条=共有物の使用>

あ 改正前

(共有物の使用)
第二百四十九条
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。

い 改正後

(共有物の使用)
第二百四十九条
(改正前と同じ)
2 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。
3 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。

共有物の使用に関する民法249条に、2つのが追加されました。
2項は、共有物を単独で使用(占有)する共有者に対して、他の共有者が金銭を請求できるというものです。平成12年判例の内容を条文化したものです。
詳しくはこちら|単独で使用する共有者に対する金銭請求(平成12年判例)
実質的には改正前と変わりはありません。
3項には、共有物を使用する共有者の善管注意義務の規定が新設されました。改正前から、共有物の使用態様がひどい場合には、他の共有者が明渡や原状回復を請求することが認められていました。
詳しくはこちら|共有物を使用する共有者に対する明渡・原状回復請求(特殊事情のあるケース)
このような、共有物の使用の許容範囲、ということと善管注意義務は整合します。

3 民法251条=共有物の変更

<民法251条=共有物の変更>

あ 改正前

(共有物の変更)
第二百五十一条
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。

い 改正後

(共有物の変更)
第二百五十一条
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
2 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

共有物の変更(行為)は、共有者全員の同意が必要であるという規定です。
物理的な変更ではあっても軽微なものは管理行為と同じ扱いになるということが1項にカッコ書きで追加されました。これは、新たなルールです。
詳しくはこちら|共有物の「軽微変更」の意味や具体例(令和3年改正による新設)
軽微変更を1つの分類とするなら、全体は4つに増えた、ということもできます。
詳しくはこちら|共有物の変更・管理・保存行為の意思決定に必要な同意の範囲と大まかな分類
また、2項として、共有者やその所在が不明である場合に、当該共有者に代わって裁判所が変更する決定(裁判)をする制度が新設されました。

4 民法252条=共有物の管理

<民法252条=共有物の管理>

あ 改正前

(共有物の管理)
第二百五十二条
共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

い 改正後

(共有物の管理)
第二百五十二条
共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。
共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
2 裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。
一 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
二 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。
3 前二項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない
4 共有者は、前三項の規定により、共有物に、次の各号に掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(以下この項において「賃借権等」という。)であって、当該各号に定める期間を超えないものを設定することができる。
一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 十年
二 前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 五年
三 建物の賃借権等 三年
四 動産の賃借権等 六箇月
5 各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。

民法252条は、1項が変更され、2〜5項が新設されました。
1項は管理行為の基本的なルールです。前段部分については改正前と同じ内容です。
詳しくはこちら|共有物の(狭義の)管理行為の基本的な内容
1項後段は新たに追加されました。その内容は、(共有者による協議や決定がなく)共有物を使用する共有者がいる場合でも、通常の管理行為として扱う、つまり持分の過半数で決定できるというルールです。
詳しくはこちら|協議・決定ない共有物の使用に対し協議・決定を行った上での明渡請求
改正前の解釈では、単純に持分の過半数だけでは決定できないという傾向がありました。
詳しくはこちら|協議・決定ない共有者による共有物の使用の保護(令和3年改正前の解釈)
改正によって、使用している共有者の保護が弱くなったといえるでしょう。
なお、共有者で使用方法として決定した上で共有者の1人が使用している場合に、この決定内容を変更する場合は3項のルール(後述)が適用されます。
2項として、共有者に代わって裁判所が管理行為の決定(裁判)をする制度が新設されました。民法251条と同じ、共有者やその所在が不明である場合に加え、共有者に意見を催告したが反応がない、というときにも適用されます。
改正前は、管理方法の決定(多数決)のプロセスについて、条文上なにも規定されていませんでした。そこで、プロセスについての解釈はいろいろとありました。
詳しくはこちら|共有物の使用方法の意思決定の方法(当事者・協議の要否)
しかし、所在不明のため決定できない問題を解決する解釈はありませんでした。この問題を2項が解決しました。
3項は、いちど共有者として決定した使用方法を変更する、ということについて、原則として管理行為としつつ、特別の影響が及ぶ共有者の承諾を要する、という新設の規定です。改正前から、この問題についてのいろいろな解釈がありました。3項として新設された規定の内容は、従前の解釈とまったく同じではないけれど、実質的にはとても近いと思えます。
詳しくはこちら|共有者が決定した共有物の使用方法(占有者)の事後的な変更
4項は、一定の期間を超えない賃貸借と使用貸借の契約締結(権利設定)について、管理行為に分類されることを規定しました。
改正前の複数の下級審裁判例の見解が条文化されたものです。
詳しくはこちら|共有物の賃貸借契約の締結・更新の管理行為・変更行為の分類
5項自体は新設されましたが、内容はもともとただし書であったものを独立したにしただけです。
以上のように、新設された制度によって、従前の解釈が実質的に変更されたという部分は限られています(少ないです)。
なお、持分の過半数で決定する際には、持分割合をカウントするのですが、遺産共有の場合には、はっきりしないこともありました。これについて、令和3年改正で民法898条2項が新設され、法定相続分(相続分の指定がある場合は指定相続分)を使うということになりました。
詳しくはこちら|遺産共有に共有の規定を適用する際の持分割合(令和3年改正民法898条2項)

5 民法252条の2

<民法252条の2>

あ 改正前

(なし)

い 改正後

(共有物の管理者)
第二百五十二条の二
共有物の管理者は、共有物の管理に関する行為をすることができる。
ただし、共有者の全員の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
2 共有物の管理者が共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有物の管理者の請求により、当該共有者以外の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。
3 共有物の管理者は、共有者が共有物の管理に関する事項を決した場合には、これに従ってその職務を行わなければならない。
4 前項の規定に違反して行った共有物の管理者の行為は、共有者に対してその効力を生じない。
ただし、共有者は、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

民法252条の2は、枝番がついていることから分かるように、条文自体が新設されました。
共有物の管理者という制度自体が新たに作られたのです。共有者が多数である場合に、従来から代表して特定の共有者が管理するのが普通でしたが、これを正式な制度としたのです。制度の中には、共有者の所在不明のときに、裁判所が代わって変更を加えることを決定(裁判)できるというものもあります。

本記事では、民法の令和3年改正のうち、共有物の使用・管理に関する規定について説明しました。
実際には、個別的な事情によって、法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に共有不動産(共有物)に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。