1 共有物の「軽微変更」の意味や具体例(令和3年改正による新設)
2 軽微変更に関する改正前の規定の不合理性
3 令和3年改正民法による解決
4 形状の変更・効用の変更の意味
5 軽微変更の具体例
6 変更行為・管理行為などの分類の個別性(概要)

1 共有物の「軽微変更」の意味や具体例(令和3年改正による新設)

共有物の使用・収益に関する意思決定は、その内容によって要件(必要な賛成の数)が違います。
詳しくはこちら|共有物の変更・管理・保存行為の意思決定に必要な同意の範囲と大まかな分類
そして、変更行為の意思決定をするには、共有者全員の同意が必要となるのが通常です。
詳しくはこちら|共有物の変更行為と処分行為の内容
このルールは、令和3年改正で少し変わりました。変更行為のうち軽微なものについては、管理行為と同じ扱い(持分の過半数の賛成で決定できる)となったのです。本記事では、このことについて説明します。

2 軽微変更に関する改正前の規定の不合理性

令和3年改正より前は、共有物の変更行為にあたるものは一律に共有者全員の同意が必要でした。物理的な変化を伴う行為は、(形式的には)変更行為にあたります。そこで、ごくわずかな物理的変化があった場合でも、共有者全員の同意が必要となります。共有者のうち1人でも反対すればその行為はできなくなってしまいます。これは厳しすぎるという指摘がありました。

軽微変更に関する改正前の規定の不合理性

あ 「変更」行為の意味(前提)

物理的変化を伴う行為は変更行為に該当する
詳しくはこちら|共有物の変更行為と処分行為の内容

い 不合理性

[問題の所在]
現行法上は、共有物に軽微な変更を加える場合であっても、変更行為として共有者全員の同意が必要(現民法251)と扱わざるを得ず、円滑な利用・管理を阻害
※「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」法務省民事局2021年p30

3 令和3年改正民法による解決

令和3年改正で新たなルールが作られ、前述のような不合理性が解消(解決)しました。
条文の中身としては、まず、民法251条1項で、共有者全員の同意が必要な変更行為から、軽微なものを除外します。次に、民法252条1項で、広義の管理行為から、軽微でない変更行為を除外した残りを、狭義の管理行為とします。
この2つによって、結果として、軽微な変更行為は狭義の管理行為と同じ扱い、つまり持分の価格の過半数で決定できることになっています。

令和3年改正民法による解決

あ 条文

ア 民法251条1項 各共有者は,他の共有者の同意を得なければ,共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
※民法251条1項
イ 民法252条1項 共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み,共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決する。
・・・
※民法252条1項

い 法務省の説明

共有物に変更を加える行為であっても、形状又は効用の著しい変更を伴わないもの(軽微変更)については、持分の価格の過半数で決定することができる。
新民法251Ⅰ、252Ⅰ
※「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」法務省民事局2021年p30

4 形状の変更・効用の変更の意味

前記のように、条文の規定では、「軽微」な変更、と記述されているわけではありません。「形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」という記述です。
形状とは、外観、構造などであり、効用とは機能や用途を意味します。

形状の変更・効用の変更の意味

「形状の変更」とは、その外観、構造等を変更することをいい、「効用の変更」とは、その機能や用途を変更することをいう。
※「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」法務省民事局2021年p30

5 軽微変更の具体例

以上のことをまとめると、軽微な変更とは、物理的な変化は生じるけれど、外観・構造・機能・用途の変化は小さい、という行為のことです。
軽微な変更にあたる行為の具体例としては、砂利道をアスファルト舗装にすることや建物の外壁や屋上の防水工事が挙げられています。

軽微変更の具体例

具体的事案によるが、例えば、砂利道のアスファルト舗装や、建物の外壁・屋上防水等の大規模修繕工事は、基本的に共有物の形状又は効用の著しい変更を伴わないものに当たると考えられる。
※「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」法務省民事局2021年p30

6 変更行為・管理行為などの分類の個別性(概要)

以上のような解釈を前提としても、軽微な変更にあたるかどうかがはっきりしないものはいくらでも存在します。そもそも、変更・管理・保存行為の区別は、行為の類型だけではっきりと判定できるわけではなく、個別的事情によって判断するという傾向が強いです。
詳しくはこちら|共有物の変更・管理・保存行為の意思決定に必要な同意の範囲と大まかな分類
改正法の施行後に、裁判例が蓄積されてゆくでしょう。

本記事では、令和3年改正で新たに作られた共有物の軽微な変更について説明しました。
実際には、個別的な事情によって、法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に共有物(共有不動産)の使用に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。