1 共有物の賃貸借契約の締結・更新の管理行為・変更行為の分類
2 賃貸借契約の締結の分類
3 処分相当の賃貸借締結を個別的事情により管理行為とした裁判例
4 短期賃貸借の期間(概要)
5 区分所有建物の共用部分の賃貸借契約締結(参考)
6 賃貸借契約の期間満了の際の更新

1 共有物の賃貸借契約の締結・更新の管理行為・変更行為の分類

共有物(共有不動産)について賃貸借契約を締結することは非常によくあります。いわゆる収益物件が共有になっている状態のことです。共有不動産の賃貸借に伴う各種行為が,管理行為・変更行為のいずれに分類されるかという問題があります。
詳しくはこちら|共有物の賃貸借に関する各種行為の管理行為・変更行為の分類(全体)
本記事では共有物の賃貸に関する行為のうち,契約締結や更新に関するものの分類について説明します。

2 賃貸借契約の締結の分類

共有物の賃貸借,つまり,共有者全員が賃貸人となる賃貸借契約の締結は,原則としては管理行為に該当します。ただし,短期賃貸借の期間を超える,または借地借家法の適用がある場合には変更(処分)行為に該当することになる方向性です。実際には,例外の方に該当することの方が圧倒的に多いです。ただし,この類型的な分類は確実に一般化できるものではありません。個別的事情によって違う扱いとなることも十分にありえます。

<賃貸借契約の締結の分類>

あ 前提事情

共有物について賃貸借契約を締結する
賃貸人=共有者(全員)
賃借人=第三者

い 原則=管理行為

賃貸借契約の締結の一般論
→『管理』に該当する
※最高裁昭和39年1月23日(土地の賃貸借であるが期間や借地法の適用の有無(建物所有目的であるか否か)には触れられていない)

う 過重負担→『処分』相当

次の『ア・イ』のいずれかに該当する場合
→『処分』に相当する
=共有者全員の同意が必要である
ア 短期賃貸借の期間(後記※1)を超える
イ 借地借家法の適用がある
※東京高裁昭和50年9月29日(『ア』について・土地)
※東京地裁昭和39年9月26日(『ア』について・土地)
※東京地裁平成14年7月16日(『ア』について・前提としての一般論)
※東京地裁平成14年11月25日(建物・『え』)

え 個別事情による修正

『う』に該当する場合でも,個別的な事情によっては管理行為に分類される(後記※2)

3 処分相当の賃貸借締結を個別的事情により管理行為とした裁判例

前述の判断基準によると処分行為に分類される賃貸借契約締結であっても,個別的事情によっては管理行為に分類されます。その実例(裁判例)を紹介します。

<処分相当の賃貸借締結を個別的事情により管理行為とした裁判例(※2)>

あ 事案

共有不動産を対象とする複数の賃貸借契約が締結されていた
その中には,短期賃貸借の期間を超えるもの,借地借家法の適用されるものが含まれていた

い 原則と例外(概要)

賃貸借契約の締結は,原則として管理行為であるが,短期賃貸借の期間を超える場合または借地借家法の適用がある場合には処分行為に該当する

う 個別的事情による修正の基準

(『い』によると処分行為に該当する場合であっても)
持分権の過半数によって決することが不相当とはいえない事情がある場合には,管理行為にあたる

え 当該事案の判断(あてはめ)

当該賃貸借契約は,もともと予定されていた本件ビルの使用収益方法の範囲内にあるものということができる
共有者全員が予定していた本件ビルについての共有権の行使態様を何ら変更するものではない
原告は,自己の持分権に基づき,他の共有者(補助参加人)に対する求償権を有すると考えられるから,本件賃貸借契約を有効としても,原告の利益に反するものではない
→持分権の過半数によって決することが不相当とはいえない事情がある
→管理行為にあたる
※東京地裁平成14年11月25日

4 短期賃貸借の期間(概要)

前記判断の中で短期賃貸借の期間が使われています。短期賃貸借の期間の規定内容をまとめておきます。

<短期賃貸借の期間(概要・※1)>

目的物 上限期間
山林 10年
山林以外の土地 5年
建物 3年
動産 6か月

※民法602条
詳しくはこちら|明渡猶予制度・短期賃貸借|競売→建物の賃借人は一定の保護が与えられる

5 区分所有建物の共用部分の賃貸借契約締結(参考)

ところで,区分所有建物の共用部分は区分所有者の共有となっていますが,一般的な共有の不動産とは扱いが異なります。共用部分の賃貸借は,期間に関わらず,原則として管理に関する事項として普通決議となります。賃貸借の期間以外の内容によっては変更にあたることもあります。一般的な共有物の変更であれば共有者全員の同意が必要ですが,区分所有建物の共用部分の変更は特別決議,つまり,一定の多数の賛成で可決します。

<区分所有建物の共用部分の賃貸借契約締結(参考)>

あ 裁判例

(区分所有建物の)共用部分を第三者に賃貸して使用させる場合に必要な決議は,第三者に使用させることにより『敷地及び共用部分の変更(改良を目的とし,かつ,著しく多額の費用を要しないものを除く。)』をもたらすときは特別決議,これをもたらさないときは普通決議であると解される
※札幌高裁平成21年2月27日

い 普通決議・特別決議の対象事項と決議要件

ア 普通決議
対象事項=共用部分の管理に関する事項
決議事項=区分所有者及び議決権の各過半数(原則)
※区分所有法18条1項,39条1項
イ 特別決議
対象事項=共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)
決議要件=区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数(原則)
※区分所有法17条1項

6 賃貸借契約の期間満了の際の更新

期間満了の際に,契約を更新するかしないかを決めることは,最初の契約の締結と同じように考えられます。最初の締結が管理行為であれば,更新するかしないかの決定管理行為と考えるのが自然です。

<賃貸借契約の期間満了の際の更新>

(契約締結が管理行為に該当する賃貸借について)
賃貸借契約の期間満了に際し,契約を更新する,更新しないの意思決定について
→賃貸借契約を締結し直すことになるため,管理行為に該当することになる
※鈴木一洋ほか編『共有の法律相談』青林書院2019年p66,67(明記はないが締結が管理行為に該当することが前提になっていると思われる)

本記事では,共有物(共有不動産)の賃貸借契約の締結・更新が管理行為・変更行為のいずれに分類されるか,ということを説明しました。
実際には,個別的な事情によって法的扱いや最適な対応が違ってきます。
実際に共有不動産の賃貸借に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。