1 遺留分の保護の副作用で遺言者の意図が妨害される
2 遺言作成時に遺留分侵害となる内容を避ければ遺留分紛争は起きない
3 遺留分の放棄により将来の遺留分紛争を未然に防ぐ
4 生命保険金死亡退職金受益者連続型信託遺留分の計算対象外;遺留分キャンセラー
5 配偶者,養子,実子が増えると遺留分割合が減少する
6 事業承継であれば除外合意固定合意将来の遺留分紛争を抑止できる
7 事業承継では種類株式の活用によっても将来の遺留分紛争を抑止できる

1 遺留分の保護の副作用で遺言者の意図が妨害される

遺留分の制度は強いもので,そう簡単に避けられないことになっています。
合理的な財産承継の計画でも,遺留分によって実現しないこともあります。
事前の準備により,完全に避ける,ということは難しいですが,一定程度緩和することはできます。
遺留分による紛争発生を抑える手段を説明します。

2 遺言作成時に遺留分侵害となる内容を避ければ遺留分紛争は起きない

生前に遺言を作成する際,内容を遺留分侵害がないように注意すると良いです。

しかし,遺留分の計算上,財産の評価は相続発生時(死亡時)となります。
別項目;遺留分;算定方法
遺言作成後の時間経過により,不動産・有価証券(株等)の評価が変わってくる,ということは多いです。
結果的に遺留分に関する規定に違反してしまう可能性があります。

3 遺留分の放棄により将来の遺留分紛争を未然に防ぐ

生前(相続の開始前)に,相続放棄はできません。
しかし,遺留分放棄については生前に行うことが可能です。
その場合,家庭裁判所の許可を受ける必要があります(民法1043条)。
別項目;遺留分放棄;手続,家庭裁判所の許可基準,不許可事例,遺言との連携
ただし,当然ですが,この方法は推定相続人の協力が大前提となります。
遺留分放棄と活用する場合,遺留分を侵害する内容の遺言とセットになります。
当然ですが,遺留分放棄だけ単体では意味がありません。

4 生命保険金死亡退職金受益者連続型信託遺留分の計算対象外;遺留分キャンセラー

(1)遺留分算定基礎財産に含まれない財産がある

一定の財産は,遺留分の計算の対象外という扱いを受けます。
このような方法を用いる工夫もあります。
遺留分キャンセラーとでも言うべきものです。
3種類について,まとめます。

<遺留分キャンセラー3種>

ア 生命保険金
相続人が受取人の保険金
詳しくはこちら|遺留分キャンセラー|生命保険金・死亡退職金×特別受益・遺留分・税務
詳しくはこちら|生命保険金の相続財産と特別受益の該当性(基本・判例の判断基準)
イ 死亡退職金
相続人が受取人の死亡退職金
詳しくはこちら|死亡退職金の相続財産と特別受益の該当性(基本・判断の傾向)
ウ 受益者連続信託
『財産の処分はできないけれど価値は承継する』ということが可能です。
受益権の設定の自由度が高いのです。
別項目;遺留分対策;遺留分キャンセラー;受益者連続型信託,後継ぎ遺贈型遺言

(2)税務上は遺産とみなされ相続税の対象となる

上記のとおり,民法の解釈としては,遺産から除外されます。
しかし,相続税法上の扱いはこれとは別です。
みなし相続財産,となります。
つまり,相続税の対象となるのです。
その一方で一定額の控除額が適用されます。
節税対策の1つです。
別項目;相続税;節税;生命保険金,死亡退職金

5 配偶者,養子,実子が増えると遺留分割合が減少する

(1)『分母』が増えると遺留分割合が減少する

遺留分割合は,法定相続分が基礎になります。
別項目;遺言がないと,相続の割合は法定相続分となる
そこで,法定相続人が増えると,1人の遺留分割合は下がります。
結果的に遺留分侵害を小さく抑える結果となります。

<遺留分割合が減少する遺留分緩和策

あ 子供を増やす(作る)

養子縁組,実子が該当します。

い 配偶者を作る

婚姻という意味です。
ただし,遺留分対策目的の婚姻は無効とされます。
詳しくはこちら|婚姻の実質的意思が婚姻届提出の時まで維持していないと無効になる

(2)税務上は控除額が増える養子縁組は1〜2名まで

相続税法上の扱いは民事的なものとは別です。

実子については,無制限に控除額算定上カウントされます。
養子については,控除額算定上カウントされるのは1or2名が上限とされています。
別項目;相続税;節税;養子縁組

6 事業承継であれば除外合意固定合意将来の遺留分紛争を抑止できる

相続の対策をする方が,事業主,という場合に,活用できる制度があります。
遺留分の算定上,特定の財産を除外したり,評価額を固定する,という手続です。
これは別に説明しています。
別項目;中小企業経営承継円滑化法;遺留分キャンセラー

7 事業承継では種類株式の活用によっても将来の遺留分紛争を抑止できる

事業主の相続での工夫として種類株式も活用できます。
株式の種類,設定は広いバリエーションが認められています。
議決権を後継者に集中させつつ,遺留分侵害も避ける,という設計が効果的です。
別項目;種類株式を活用した事業承継