1 相続税の計算における生命保険金の控除
2 生命保険金の非課税額の上限
3 相続税の計算における死亡退職金の控除
4 死亡退職金支給原資として,会社が生命保険に加入する方法
5 礼拝施設は非課税|広めに解釈されつつある
6 ミニ礼拝施設で相続税非課税に〜たびのとびら判決〜

1 相続税の計算における生命保険金の控除

相続税の算定上『生命保険金』を控除することとされています。
これについて説明します。

まず,掛け金を被相続人が負担し,保険金受取人が相続人(の1人)である,というケースが前提です。
この場合,遺産分割,遺留分などの民法上の扱いでは,原則的に『遺産ではない』とされています。
詳しくはこちら|生命保険金の相続財産と特別受益の該当性(基本・判例の判断基準)
しかし,税務上は『みなし相続財産』とされます。
相続財産に含まれるのです。
その一方で,一定額は『控除』してもらえます。

2 生命保険金の非課税額の上限

生命保険金の非課税額は次のように算定されます。

<生命保険金の非課税額>

500万円 × 法定相続人の数

なお,以前の税制改正の案の中では『非課税枠縮小』もありました。
結果的には見送りとなりました。
そこで,従前からの算定方法(上記)が現在でも適用されます。

3 相続税の計算における死亡退職金の控除

被相続人が生前勤務していた勤務先からの『死亡退職金』が,相続人に支払われることがあります。
支払先が『相続人』という規定になっているという意味です。
この場合,民法上は,原則的に『遺産』としては扱われません(前述)。

しかし,税法上は『相続財産』として扱われます(相続税法3条1項2号;みなし相続財産)。
『本来,会社で働いていた役員が受け取るべきもの→役員が受け取った財産が相続により遺族に移転した』
というロジックで考える趣旨です。
結論として,『死亡退職金は相続税課税対象となる』のです。
その上で,『一定の非課税枠がある』というわけです。
死亡退職金の非課税の上限額は次のとおりです。

<死亡退職金の非課税限度額>

500万円 × 法定相続人の数

4 死亡退職金支給原資として,会社が生命保険に加入する方法

死亡退職金は節税面や,特別受益,遺留分の算定上回避する効果などの特徴があります。
例えば,家族で経営している会社の場合,積極的な節税,相続対策として死亡退職金を活用する発想があります。
ここで,死亡退職金を設定する場合,その支給のための『資金』が必要です。
『資金準備』の方法の1つとして『会社が生命保険に加入する』ということもよくあります。
次のような形態です。

<保険契約の設定>

・契約者=会社
・被保険者=役員個人

当然,会社が保険料を負担することになります。
しかし,単純に現金を準備しておくのと比べてメリットがいくつかあります。

<会社が生命保険に加入するメリット>

・法人の節税(4分の1~2分の1の損金算入)
・個人の保険料負担を排除できる(法人への転嫁)
・死亡保険金を(退職金の支払いではなく)事業資金として使う方法も取れる
・役員がご健在のまま満期を迎えた場合,(通常の)退職金原資として使える

5 礼拝施設は非課税|広めに解釈されつつある

(1)礼拝施設は非課税

相続税法上,一定の『宗教』に関する財産は『非課税』と規定されています。

<墓地などの非課税規定>

墓所,霊びよう及び祭具並びにこれらに準ずるもの
※相続税法12条1項2号

なお,参考として,相続(遺産承継)においても,墓所などは『対象外』とされています。
関連コンテンツ|祭祀供養物の承継・祭祀主宰者の指定|葬儀の方法・遺骨・墓所引取トラブル

(2)非課税対象は『広め』に解釈される

この点,庭に設置するもので『宗教』のニュアンスの有無が曖昧というものもあります。
神や稲荷などを奉る施設です。
これらの施設の敷地部分が相続税課税の対象となるかどうかで,大きく税額が異なります。
判断が問題になることが多いです。
これについての基準を示した判例を紹介します。

<墓地に準じて非課税となる設備・施設|判断基準>

あ 基本的な解釈

直接的な祖先祭祀のための設備・施設に限定されない
日常礼拝することにより間接的に祖先祭祀等の目的に結びつくものも含む

い 所有目的により除外される

商品・骨とう品・投資の対象として所有場合は『非課税』ではない
※東京地裁平成24年6月21日

6 ミニ礼拝施設で相続税非課税に〜たびのとびら判決〜

上記判例では,さらに,具体例まで説明しています。

<非課税となる施設|具体例>

あ 庭内神し(ほこら系)

ア 意味
ご神体を祀り日常礼拝の用に供されているもの
イ 一般的な形態
例;屋敷内にある神の社・祠(ほこら)
ウ 『ご神体』の意味
特定の者or地域住民の信仰の対象とされているもの
例;不動尊・地蔵尊・道祖神・庚申塔・稲荷など

い 小規模グッズ

神たな・神体・神具・仏壇・位はい・仏像・仏具・古墳など
※東京地裁平成24年6月21日

前述のように,実際にはこれらの設備本体ではなく『敷地部分』つまり土地の評価が大きいので問題になりやすいのです。
この判例の基準を先取りして,生前の相続税対策として『ほこら設置』が静かなブームとなっています。
相続を見越した,という意味で『たびのとびら』という商品名(ネーミング)の発想もあるようです。

<アレフガルドの伝説>

ほこらの中にある『たびのとびら』に入ると黄泉の国に移動する

条文

[相続税法]
(相続又は遺贈により取得したものとみなす場合)
第3条 次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該各号に掲げる者が、当該各号に掲げる財産を相続又は遺贈により取得したものとみなす。この場合において、その者が相続人(相続を放棄した者及び相続権を失つた者を含まない。第15条、第16条、第19条の2第1項、第19条の3第1項、第19条の4第1項及び第63条の場合並びに「第19条第2項に規定する相続人の数」という場合を除き、以下同じ。)であるときは当該財産を相続により取得したものとみなし、その者が相続人以外の者であるときは当該財産を遺贈により取得したものとみなす。
1.被相続人の死亡により相続人その他の者が生命保険契約(保険業法(平成7年法律第105号)第2条第3項(定義)に規定する生命保険会社と締結した保険契約(これに類する共済に係る契約を含む。以下同じ。)その他の政令で定める契約をいう。以下同じ。)の保険金(共済金を含む。以下同じ。)又は損害保険契約(同条第4項に規定する損害保険会社と締結した保険契約その他の政令で定める契約をいう。以下同じ。)の保険金(偶然な事故に基因する死亡に伴い支払われるものに限る。)を取得した場合においては、当該保険金受取人(共済金受取人を含む。以下同じ。)について、当該保険金(次号に掲げる給与及び第5号又は第6号に掲げる権利に該当するものを除く。)のうち被相続人が負担した保険料(共済掛金を含む。以下同じ。)の金額の当該契約に係る保険料で被相続人の死亡の時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分
2.被相続人の死亡により相続人その他の者が当該被相続人に支給されるべきであつた退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与(政令で定める給付を含む。)で被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものの支給を受けた場合においては、当該給与の支給を受けた者について、当該給与
3.相続開始の時において、まだ保険事故(共済事故を含む。以下同じ。)が発生していない生命保険契約(一定期間内に保険事故が発生しなかつた場合において返還金その他これに準ずるものの支払がない生命保険契約を除く。)で被相続人が保険料の全部又は一部を負担し、かつ、被相続人以外の者が当該生命保険契約の契約者であるものがある場合においては、当該生命保険契約の契約者について、当該契約に関する権利のうち被相続人が負担した保険料の金額の当該契約に係る保障料で当該相続開始の時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分
4.相続開始の時において、まだ定期金給付事由が発生していない定期金給付契約(生命保険契約を除く。)で被相続人が掛金又は保険料の全部又は一部を負担し、かつ、被相続人以外の者が当該定期金給付契約の契約者であるものがある場合においては、当該定期金給付契約の契約者について、当該契約に関する権利のうち被相続人が負担した掛金又は保険料の金額の当該契約に係る掛金又は保険料で当該相続開始の時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分
5.定期金給付契約で定期金受取人に対しその生存中又は一定期間にわたり定期金を給付し、かつ、その者が死亡したときはその死亡後遺族その他の為に対して定期合又は一時金を給付するものに基づいて定期金受取人たる被相続人の死亡後相続人その他の者が定期金受取人又は一時金受取人となつた場合においては、当該定期金受取人又は一時金受取人となつた者について、当該定期金給付契約に関する権利のうち被相続人が負担した掛金又は保険料の金額の当該契約に係る掛金又は保険料で当該相続開始の時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分
6.被相続人の死亡により相続人その他の者が定期金(これに係る一時金を含む。)に関する権利で契約に基づくもの以外のもの(恩給法(大正12年法律第48号)の規定による扶助料に関する権利を除く。)を取得した場合においては、当該定期金に関する権利を取得した者について、当該定期金に関する権利(第2号に掲げる給与に該当するものを除く。)
2 前項第1号又は第3号から第5号までの規定の適用については、被相続人の被相続人が負担した保険料又は掛金は、被相続人が負担した保険料又は掛金とみなす。ただし、同項第3号又は第4号の規定により当該各号に掲げる者が当該被相続人の被相続人から当該各号に掲げる財産を相続又は遺贈により取得したものとみなされた場合においては、当該被相続人の被相続人が負担した保険料又は掛金については、この限りでない。
3 第1項第3号又は第4号の規定の適用については、被相続人の遺言により払い込まれた保険料又は掛金は、被相続人が負担した保険料又は掛金とみなす。