1 婚姻の有効性(婚姻意思)
2 婚姻の実質的意思がないと無効となる
3 婚姻意思は婚姻届を提出する時にも必要とされる
4 婚姻は届出(婚姻届の提出)によって成立する
5 婚姻の要件全体のまとめ
6 協議離婚届との比較(参考)
7 婚姻が無効でも戸籍を修正するには調停や訴訟が必須となる
8 不本意な婚姻届の提出を回避する不受理申出の制度

1 婚姻の有効性(婚姻意思)

婚姻届が提出された後に,婚姻が無効となることがあります。
つまり,婚姻が有効となるには一定のハードル(要件)があるのです。
本記事では,婚姻の有効性を説明します。
主な説明内容は,婚姻意思の内容と,いつの時点で婚姻意思が必要かという2つです。

2 婚姻の実質的意思がないと無効となる

憲法上,婚姻に必要なのは合意だけであると強調して規定されています(日本国憲法24条1項)。
そして民法上,届出で効力を生じると規定されています(民法739条)。
この合意の内容,つまり婚姻意思については2つの見解があります。

<婚姻意思の内容(意義)>

あ 形式的意思説

婚姻届を提出する戸籍上の婚姻状態とするという意思で足りるという見解
実務ではこの見解はとられていない

い 実質的意思説(※2)

『あ』の形式的意思に加えて共同生活をする意思も必要である
真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する効果意思のことである
※最高裁昭和44年10月31日

判例上,の実質的意思説が採用されています。
形式的意思のみ,という場合は,婚姻は無効となります。
典型的な例は,相続権をもらう目的公的手当を受けるためというものでしょう。
別項目;遺留分対策;遺留分キャンセラー,緩和策,税務の扱い

3 婚姻意思は婚姻届を提出する時にも必要とされる

婚姻意思は,まず,婚姻届を作成する時点で必要です。
さらにその後,婚姻届を提出する時点でも婚姻意思が継続している必要があります。

<婚姻意思が必要な時点(※3)>

あ 婚姻意思が必要な時点

婚姻意思は『い・う』の両方の時点で必要である

い 届出作成(調印)時

婚姻届出(書)を作成する時点

う 届出時

届出(婚姻届の提出)の時に婚姻意思が撤回されていないことである
届出作成の後に翻意していないという状況のことである
※最高裁昭和44年4月3日

4 婚姻は届出(婚姻届の提出)によって成立する

婚姻が成立するのは婚姻届を役所に提出した時点です。
婚姻の日は婚姻届に調印した日,ではなく婚姻届の受理日となります。
当事者の意思や合意があっても,事務的な手続(提出)は必須なのです。
婚姻の形式的要件と呼んでいます。
婚姻届の性格を考えると,これの提出によって新たな身分関係がつくられるといえます。
そこで,届出の種類としては,創設的届出として分類されます。

5 婚姻の要件全体のまとめ

以上で説明した婚姻の要件を整理します。

<婚姻の要件全体のまとめ>

あ 実質的要件

ア 基本的な内容
婚姻意思の合致が必要である
イ 婚姻意思の意義(内容)
実質的意思のことである(前記※2)
ウ 婚姻意思の存在時期
届出書作成時,届出時の両方の時点において
婚姻意思が必要である(前記※3)

い 形式的要件

婚姻届の提出(届出)

6 協議離婚届との比較(参考)

なお,協議離婚についても,婚姻と似ています。
ただし実質的意思までは必要とされず形式的意思で足ります。
詳しくはこちら|協議離婚の『離婚意思』|届出時に『形式的意思』があれば有効

7 婚姻が無効でも戸籍を修正するには調停や訴訟が必須となる

婚姻意思が撤回された後に婚姻届が提出されると無効だけども戸籍に記録されている状態となります。
事情を役所の窓口で説明しても,役所の判断で戸籍を修正(抹消)することはできません。
戸籍の記録を修正(抹消)するためには,家庭裁判所の調停や訴訟を行う必要があります。
要するに裁判所が婚姻の無効や取消を認めないと戸籍は直せないのです。
なお,家裁の手続は,別表第2事件に分類されます。
詳しくはこちら|家事調停・審判の種類の分類(別表第1/2事件・一般/特殊調停)
なお,婚姻離婚の無効や取消は同じ分類です。また,手続の内容も似ています。
詳しくはこちら|離婚無効|調停・訴訟|『無効』の離婚届受理の撤回→家裁の手続が必要
婚姻の無効や取消の内容や,実際に婚姻の取消を認めた珍しい裁判例については,別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|婚姻の無効や取消は明確な理由が必要(年齢サバ読み詐欺を認めた裁判例)

8 不本意な婚姻届の提出を回避する不受理申出の制度

実際に婚姻届を記入した後に,結婚する気がなくなったときに,婚姻届を相手が持っている時は要注意です。
そのまま役所に提出されてしまうと,(理論的には無効でも)前記のように,戸籍を直すために家庭裁判所の手続が必要となってしまうのです。
相手に強引に提出されるリスクを回避する制度があります。
不受理申出という制度です。
詳しくはこちら|不受理申出|協議離婚届提出を阻止できる・報告的届出は対象外

本記事では,婚姻の有効性として,婚姻意思について説明しました。
婚姻意思が欠けているケースでは,婚姻は無効となりますが,実際に家庭裁判所に認めさせるには立証のハードルがあります(前記)。
当然,主張の組み立て方や証拠の選択と提出の方法によって裁判所の判断は変わってきます。
実際に婚姻意思(有効性)が十分とはいえない婚姻届に関する問題に直面されている方は,弁護士の法律相談をご利用くださることをお勧めします。