1 養子縁組が及ぼす相続税への効果
2 相続税の算定上,養子への承継は2割加算の対象となる
3 養子縁組による相続税の節税,養子の人数上限
4 節税目的の養子縁組と有効性(概要)

1 養子縁組が及ぼす相続税への効果

養子縁組によって,相続税の算定に違いが生じます。
いわゆる節税の効果です。
別項目;相続税;民事的解決との関係,算定方法,小規模宅地,物納

(1)基礎控除額が増える

相続人が1人増えると,基礎控除額は500万円増えます。
(平成26年までの相続では1人1000万円)

(2)相続税の税率が下がる

相続税は累進課税です。
『相続人1人』の課税額が上がると税率も上がります。
控除額が増額になると,課税額が減少→税率減少,となります。

(3)『2割加算』の排除

『1親等の血族・配偶者』以外の者が相続を受けた場合,相続税が2割加算されます。
これは,イレギュラー要素が強い(偶発性が高い,と言います)場合には税負担を重くしても良い,という考えが元になっています。
養子は『1親等の血族』に該当します。
2割加算の対象外です。

(4)死亡保険金・死亡退職金の非課税枠が適用される

死亡保険金については『非課税枠』は撤廃されました。
(平成26年までの相続では1人500万円)
死亡退職金については,相続人1人で500万円の非課税枠があります。

(5)孫を養子にすると,1代分の相続税がスキップできる

孫が『養子』となると『2代で承継』ではなく『1代で承継』となります。
『1代分』が短縮できます。
しかし『2割加算』の措置が適用になります(後述)。

2 相続税の算定上,養子への承継は2割加算の対象となる

孫を養子にして『1代飛ばして』相続させる場合,相続の回数を減らせます。
『相続税』も大きく節約できます。
その代わり,一定額の上乗せが適用されます。
『1親等の血族・配偶者』以外の者,への相続として,一律に2割加算が適用されるのです。

この点,孫が養子になると『養子としては1親等』となります。
しかし『元々,孫は将来は相続を受ける立場だった』という実質があります。
そこで,『実親子関係』だけで親等を算定することになっているのです。
結果的に『2親等』ということになります。
『2割加算』の適用対象となるのです。

なお,『孫への相続』については,税務上以外のケアも必要です。
一般論として『消費されてしまう』という現実的な可能性(リスク)もあります。
とにかくあらゆるリスクを含めて分析,検討することが肝要です。

3 養子縁組による相続税の節税,養子の人数上限

『養子』が多いほど,相続税は軽減される,という発想があります。
しかし,極端な方法は許容されません。
相続税算定における控除額算定上の『養子』の数は上限が設定されています。

<相続税算定上の養子の数の上限>

実子の有無 養子の上限
実子が存在しない場合 2人まで
実子が存在する場合 1人まで

この制限より多く養子が居ても『相続税の計算上は』算定されません。
相続税の算定上は,納税額の合計を出してから各相続人に分担します。
仮に制限以上の人数の養子が居た場合でも『誰を養子として扱うか』という『軽減措置の取り合い合戦』にはなり得ません。

なお,小規模宅地の評価減などの適用は,相続人のうち特定の者しか使えません。

また,相続などにおいては,全員が正式な養子として扱われます。
別項目;遺留分対策;遺留分キャンセラー,緩和策,税務の扱い
制限を受けるのはあくまでも税法上だけです。

4 節税目的の養子縁組と有効性(概要)

節税を意図した養子縁組はよく活用されています。
これに関して,縁組の意思が欠けるとして養子縁組が無効であるという主張があります。
このテーマについて,平成29年の最高裁判例が判断しています。
節税目的であることだけで無効となるわけではないという判断です。
詳しくはこちら|養子縁組の目的の実例と縁組意思(有効性)の判断(集約)