1 遺留分権利者・遺留分割合と遺留分額の計算(改正前後)
2 民法1042条の条文(改正後)
3 遺留分権利者・遺留分権を行使できる者(改正前後)
4 (総体的)遺留分割合(改正前後)
5 (個別的)遺留分額の計算(改正前後)
6 遺留分侵害額の計算(概要)
7 遺留分の計算の具体例(概要)
8 遺留分権の行使と効果(概要・改正前・後)

1 遺留分権利者・遺留分割合と遺留分額の計算(改正前後)

<民法改正による遺留分の規定の変更(注意)>

平成30年改正民法により,遺留分の規定(制度)の内容が大きく変更されました。
令和元年6月30日までに開始した相続については,改正前の規定が適用されます。
令和元年7月1日以降に開始した相続については,改正後の規定が適用されます。

遺留分の権利を行使することができるのは,遺留分の権利を持つ者が遺留分を侵害された場合です。
本記事では,誰が遺留分の権利を持つか(遺留分権利者),また,遺留分の侵害といえるかどうかを判断する時に使う遺留分額をどのように計算するか,を説明します。なお,これらは平成30年改正の前後で変わりはありません。

2 民法1042条の条文(改正後)

最初に,遺留分権利者と,遺留分割合(遺留分額の計算で使う)を規定する条文を押さえておきます。

<民法1042条の条文(改正後)>

第千四十二条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
2 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第九百条及び第九百一条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。
※民法1042条(改正後,改正前の1028条に相当する)

3 遺留分権利者・遺留分権を行使できる者(改正前後)

遺留分権利者は,民法1042条1項で兄弟姉妹以外の相続人と定められています。子の代襲相続人も相続人と同じ扱いとなるので遺留分権利者に含まれます。
遺留分権利者自身は当然,遺留分の権利を行使できます。さらに,遺留分権利者の(包括と特定)承継人も遺留分の権利を行使できます。

<遺留分権利者・遺留分権を行使できる者(改正前後)>

あ 遺留分権利者

ア 兄弟姉妹以外の相続人 ※民法1042条1項
イ 子の代襲者,再代襲者

い 遺留分権を行使できる者

遺留分権利者,その承継人
特定承継人を含む
※内田貴『民法Ⅴ』p507

う 遺留分権を行使できない者

ア 相続放棄,欠格,廃除 相続放棄者,相続欠格者,被廃除者は遺留分権を行使できない
※『判例タイムズ1250号』p21
(参考)相続欠格,廃除を説明している記事
詳しくはこちら|相続人の範囲|法定相続人・廃除・欠格|廃除の活用例
イ 遺留分権利者の債権者 遺留分権利者の債権者による遺留分減殺請求権(遺留分権)の代位行使は,特段の事情がない限り認められない
※最判平成13年11月22日
ウ 被相続人の債権者 被相続人の債権者による遺留分権の代位行使は認められない
※『判例タイムズ1250号』p22
※岡口基一著『要件事実マニュアル 第5巻 第5版』ぎょうせい2017年p670

4 (総体的)遺留分割合(改正前後)

遺留分の制度の趣旨は,相続人に最低限の財産の取得を保障するというものです。
詳しくはこちら|遺留分の制度の趣旨や活用する典型的な具体例(改正前・後)
この取得が保障された最低限の財産遺留分なのです。具体的には,相続財産や相続財産とみなせるものの全体(遺留分算定基礎財産)のうち一定割合が遺留分となります。この一定割合は,遺留分割合として民法に規定されています。遺留分割合は2分の1または3分の1です。

<(総体的)遺留分割合(改正前後)>

あ 遺留分割合
状況 遺留分割合
直系尊属のみが相続人である場合 3分の1
その他の場合 2分の1

※民法1028条

い 『直系尊属』の意味

直系尊属とは,ストレートに上に延びる血縁者である
例=父母・祖父母・そのさらに上の世代

5 (個別的)遺留分額の計算(改正前後)

相続人が1人であれば,その者の遺留分額は,遺留分算定基礎財産に遺留分割合を乗じたもの(総体的遺留分)そのものになります。相続人が複数である場合,総体的遺留分に個々の相続人の法定相続割合を乗じた金額が当該相続人の(個別的)遺留分額になります。

<(個別的)遺留分額の計算(改正前後)>

あ 個別的遺留分額の計算式

個別的遺留分額 = 遺留分算定基礎財産 × 総体的遺留分(割合) × 各遺留分権利者の相続分(割合)
※民法1042条

い 遺留分算定基礎財産(概要)

遺留分算定基礎財産とは,相続財産と一定範囲の生前贈与(相続財産とみなす)である
詳しくはこちら|遺留分算定基礎財産の計算の基本部分(基礎的計算式・改正前後)

う 法定相続分(概要)
相続人となる者 配偶者(夫・妻) 子供 直系尊属(父母,祖父母) 兄弟姉妹
配偶者と子供 2分の1 2分の1 ゼロ ゼロ
配偶者と直系尊属 3分の2 存在しない 3分の1 ゼロ
配偶者と兄弟姉妹 4分の3 存在しない 存在しない 4分の1

※民法900条
詳しくはこちら|法定相続分(現行法と過去の相続に適用される法定相続割合)

6 遺留分侵害額の計算(概要)

個々の相続人の遺留分額が計算できたら,これはその相続人が保障された金額ということになります。ということはその相続人が取得した財産が遺留分額を下回っている場合,その不足額が,遺留分侵害額ということになります。正確には,特別受益にあたる生前贈与やその相続人が承継した債務がある場合はその分を調整することになります。これについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|遺留分侵害額の計算(改正前・後)

7 遺留分の計算の具体例(概要)

以上のように,遺留分の計算は結構複雑です。具体例を用いた計算を見ると理解しやすいでしょう。遺留分の計算の具体例を別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|遺留分の計算の具体例

8 遺留分権の行使と効果(概要・改正前・後)

遺留分が侵害された相続人(遺留分権利者)は,遺留分の権利を行使することにより,不足分を回復できるこことになります。具体的な回復の内容(法的効果)は,平成30年改正の前後で違います。
改正前であれば,遺留分減殺請求により,対象物の所有権(共有持分権)を取得することになります。
改正後は,遺留分侵害額分の金銭を請求できることになります。
詳しくはこちら|遺留分の権利・効果の法的性質(平成30年改正による金銭債権化)

本記事では,遺留分権利者や遺留分割合,遺留分額の計算方法を説明しました。
実際には,個別的な事情により,法的扱いや最適な対応が違ってきます。
実際に遺留分や相続に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。