1 共有物分割の分割類型の選択基準(優先順序)の全体像
2 分割類型の選択基準(優先順序)の不明確性
3 分割類型の選択基準(優先順序)全体のまとめ
4 全面的価格賠償と現物分割の優先順序(概要)
5 全面的価格賠償と換価分割の優先順序(概要)
6 現物分割と換価分割の優先順序(概要)
7 換価分割の補充性
8 遺産分割と共有物分割の比較(参考・概要)

1 共有物分割の分割類型の選択基準(優先順序)の全体像

共有物分割では,複数の分割類型があります。
詳しくはこちら|共有物分割の分割類型の基本(全面的価格賠償・現物分割・換価分割)
実際には,どの分割類型を選択するか,ということについて熾烈な対立が生じることが多いです。
この点,分割類型の選択に関して,多くの判例の判断が蓄積されています。そこから分割類型の選択基準(優先順序)の目安が読み取れます。
本記事では,分割類型の選択基準を全体的に説明します。

2 分割類型の選択基準(優先順序)の不明確性

以下で分割類型の選択基準を説明しますが,実は,「これにあてはめれば結論が導ける」というような,どんなケースにも確実にあてはまる基準(優先順序)があるとはいいきれません。最初に指摘しておきます。

<分割類型の選択基準(優先順序)の不明確性>

あ 山田誠一氏の指摘

判例は,必ずしも一般的には,分割方法の選択順序について,見解を明らかにしていない。
※山田誠一稿『民法256条・258条(共有物の分割)』/広中俊雄ほか編『民法典の百年Ⅱ』有斐閣1998年p536

い 新注釈民法(小粥太郎氏)の指摘

分割の諸方法の優先劣後関係に関する現在の法状況は,混沌としている
※小粥太郎編『新注釈民法(5)物権(2)』有斐閣2020年p601

3 分割類型の選択基準(優先順序)全体のまとめ

分割類型の選択基準については多くの理論(判例)があります。全体としてまとめると,次のように整理できます。
ただし実際には,複数の分割類型の組み合わせが選択されることもあります。また,1と2番目ははっきりとこのように順序が決まっているわけではありません(後述)。

<分割類型の選択基準(優先順序)全体のまとめ>

あ 1番目=全面的価格賠償

全面的価格賠償を希望する共有者が存在する場合
→その要件充足性を判断する
詳しくはこちら|共有物分割における全面的価格賠償の要件(全体)

い 2番目=現物分割(1番目タイ)

『あ』に該当しない・認定されない場合
→現物分割の要件充足性を検討する
詳しくはこちら|現物分割の要件(消極的要件の基本的解釈・著しい価格減少の減少率基準)

う 3番目=換価分割

『い』が認定されない場合
→換価分割を選択する
換価分割は補充的である(後述)

4 全面的価格賠償と現物分割の優先順序(概要)

詳しくいうと,全面的価格賠償を選択する際,現物分割の(共有者による希望)の合理性も判断材料となります。その意味では,全面的価格賠償が1番,現物分割はその次,というようにはっきりと優先順序がつけられるわけではありません。
なお,令和3年改正の民法258条では,全面的価格賠償と現物分割が並列的に記載されており,条文上は優劣が示されていません。従来の解釈がそのまま活きているといえるでしょう。
詳しくはこちら|全面的価格賠償と現物分割の優先順序

5 全面的価格賠償と換価分割の優先順序(概要)

全面的価格賠償と換価分割の2つについては,全面的価格賠償の方が優先であるという見解が一般的です。
詳しくはこちら|全面的価格賠償と換価分割の優先順序

6 現物分割と換価分割の優先順序(概要)

現物分割と換価分割の2つについては,現物分割の方が優先であるという見解が一般的です。この点,部分的価格賠償は,通常,現物分割の一種であるという位置づけとされています。そこで,換価分割よりも部分的価格賠償の方が優先であるといえます。
詳しくはこちら|現物分割(部分的価格賠償)と換価分割の優先順序

7 換価分割の補充性

以上で説明した優先順序の中で,換価分割は常に劣後となっています。要するに他の選択肢を選択できない場合に換価分割が選択されるのです。このように最終手段であることを補充性と呼びます。換価分割の補充性については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|換価分割の補充性・分割請求権の保障との関係

8 遺産分割と共有物分割の比較(参考・概要)

以上で説明した共有物分割の分割類型の優先順序は,遺産分割でも似ていますが少し違うところもあります。分割類型以外の違いも含めて,別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|2つの分割手続(遺産分割と共有物分割)の違い

本記事では,共有物分割の分割類型の選択基準を説明しました。
実際には,細かい事情によって分割類型の選択や最適な対応方法は違ってきます。
実際に共有不動産に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。