1 分割類型|選択基準・優先順序
2 現物分割と価格賠償の優劣に関する複数の判例
3 参考|遺産分割|換価分割の補充性

1 分割類型|選択基準・優先順序

共有物分割では分割類型の選択が非常に重要です。
詳しくはこちら|共有物分割|分割類型|全体
本記事では,分割類型の選択基準を説明します。
まずは,全体的な選択基準・優先順序をまとめます。

<分割類型|選択基準・優先順序>

あ 1番目=価格賠償|判断

価格賠償を希望する共有者が存在する場合
→その要件充足性を判断する
詳しくはこちら|全面的価格賠償|要件|特段の事情=相当性+実質的公平性

い 2番目=現物分割|判断

『あ』が認定されない場合
→現物分割の要件充足性を検討する
詳しくはこちら|現物分割|典型例・具体的決定方針・不能・著しい価値減少

う 3番目=換価分割|補充性

『い』が認定されない場合
→換価分割を選択する
換価分割は補充的である
※最高裁平成8年10月31日
※最高裁平成9年4月25日
※最高裁平成10年2月27日
※『最高裁判所判例解説平成8年度(下)民事篇』財団法人法曹会p889

2 現物分割と価格賠償の優劣に関する複数の判例

前記の優先順序については誤解が多いので注意を要します。
平成8年の判例では,それ以前の判例にはない基準が示されました。
従前の判例の内容を否定したわけではありません。その意味で,判例変更ということではないです。
裁判官・弁護士でも正確な理解が不足している実例がありました。

<現物分割と価格賠償の優劣に関する複数の判例>

あ 従来の要件

次の『アorイ』が全面的価格賠償の要件であった
ア 現物分割が不可能
イ 現物分割によって著しく価格を損するおそれがある
※最高裁昭和57年3月9日

い 従前の判例との違い

『あ』の要件は不要となった
※最高裁平成8年10月31日
※『最高裁判所判例解説平成8年度(下)民事篇』財団法人法曹会p888

3 参考|遺産分割|換価分割の補充性

前記の優先順序の中で『換価分割』はラストでした。
要するに『他の選択肢がNG』という場合に選択されるのです。
これを『補充性』と呼びます(前記)。
このことが明確に示された判例を紹介します。
なお,これは共有物分割ではなく遺産分割のケースです。
ただし,理論的に重複するところです。

<参考|遺産分割|換価分割の補充性>

あ 遺産分割・共有物分割の共通性

遺産分割も共有物分割の規定が準用される

い 換価分割の補充性

遺産分割において次の判断がなされた
『イ』よりも『ア』の審理・判断を優先させる
ア 債務負担による代償分割
イ 換価分割
※仙台高裁平成5年7月21日