1 共有物分割訴訟(形式的形成訴訟)の性質
2 各種基本ルールの共有物分割訴訟への適用の有無
3 共有物分割訴訟における処分権主義
4 共有物分割訴訟における弁論主義
5 共有物分割訴訟の性格に関する理論と実務の違い

1 共有物分割訴訟(形式的形成訴訟)の性質

共有物分割訴訟は訴訟の中では特殊な性格があります。
『形式的形成訴訟』として分類されています。
その基本的な内容をまとめます。

<共有物分割訴訟(形式的形成訴訟)の性質>

あ 共有物分割訴訟の法的性格

形式的形成訴訟である

い 形式的形成訴訟の内容

次の『ア・イ』の2つの性格を併せ持つ
ア 形成の訴え 実体法上の権利・法律関係の変動を裁判所に求める
イ 非訟事件 実体法上に要件の定めがない
※大阪高裁昭和51年10月28日

2 各種基本ルールの共有物分割訴訟への適用の有無

通常の訴訟には適用されるルールについて,共有物分割訴訟ではその性質により適用されない,というものがいくつかあります。

<各種基本ルールの共有物分割訴訟への適用の有無>

あ 基本

共有物分割訴訟について
次の『い〜え』の特徴がある
形式的形成訴訟としての性格である

い 弁論主義→適用なし

分割の方法について
→裁判所は当事者の主張に拘束されない
→当事者が主張していない分割類型を選択できる
法律上の分割類型選択基準には拘束される

う 控訴審の不利益変更禁止→適用なし

原審判決より控訴人に不利な控訴審判決について
一般的には禁止されている
→共有物分割訴訟では適用されない

え 処分権主義→制限的

ア 一般的な訴訟における処分権主義(前提) 裁判所の判断が原告の申立と異なるまたは立証・主張が不十分である場合
→一般的な訴訟では裁判所は請求棄却にする
イ 共有物分割訴訟における処理 共有物分割訴訟では,裁判所は請求棄却にすることはできない
裁判所は判決(分割を実現)をすることになる
※大阪高裁昭和51年10月28日
ウ 例外的な請求棄却(概要) 一般条項(権利の濫用や信義則違反その他)によって共有物分割訴訟において裁判所が請求棄却とすることがある
詳しくはこちら|共有物分割訴訟における権利濫用・信義則違反・訴えの利益なし(基本・理論)

3 共有物分割訴訟における処分権主義

共有物分割訴訟は形式的形成訴訟の性質があるので,当事者が決定できる(処分権を持つ)のは共有物分割請求権の行使をするかしないかだけとなります。
具体的な分割の方法(分割類型の選択)は,裁判所に全面的な決定権限があり,当事者の主張が裁判所を拘束する(当事者が処分権を持つ)わけではありません。理論的には,当事者が分割の方法の希望を主張すること自体が必要ではないことになります。
ただし,近年では,別の見解も有力になりつつあります。

<共有物分割訴訟における処分権主義>

あ 「分割請求」についての処分権(肯定)

共有物分割請求訴訟において当事者が主張すべきことについて
単に共有物分割を求める旨を申し立てれば足りる
※最高裁昭和57年3月9日

い 分割の方法(分割類型)についての処分権(否定)

ア 当事者の主張の裁判所への拘束力(否定) 当事者の(分割方法についての)希望は,裁判所を拘束しない
※『最高裁判所判例解説平成8年度(下)民事篇』財団法人法曹会p892〜894
イ 当事者の主張の要否(否定) 当事者は,分割の方法(分割類型)を具体的に指定することは必要でない
※最高裁昭和57年3月9日
ウ 当事者の主張の位置づけ(複数の請求の意味) 共有物分割訴訟は,形式的形成訴訟であるから,裁判所は当事者の申立内容に拘束されることなく判断することができる。
本件において,原告は,主位的請求と予備的請求の二つの請求をするが,これはあくまでも原告の分割方法に対する希望の表明としての意味しかない。
※東京地判平成17年2月17日

4 共有物分割訴訟における弁論主義

共有物分割訴訟で,裁判所が分割方法を判断,決定する際には,一定の要件(事実)があります。この点,一般的な民事訴訟では,個々の要件(事実)について当事者が主張しないと裁判所が自発的に認定することはできません(弁論主義)。
しかし,共有物分割訴訟は形式的形成訴訟の性質を持つことから,当事者の要件(事実)の主張がなくても裁判所が当該事実を認定することができることになります。これについて,別の見解もあります。

<共有物分割訴訟における弁論主義>

(全面的価格賠償の要件について)
当事者が主張立証責任を負う事実ではない
※岡口基一著『要件事実マニュアル 第1巻 第5版』ぎょうせい2016年p390

5 共有物分割訴訟の性格に関する理論と実務の違い

以上の説明のように当事者のアクションの比重が軽いのです。
しかしこれは理論的・講学的なものです。
実務においては主張・立証が結果に大きな影響を与えます。
例えば当事者の『希望』自体が判断対象となっています。
詳しくはこちら|共有物分割における全面的価格賠償の要件(全体)
この点,テーマが異なりますが,弁護士の受任における利益相反の判断でも共有物分割訴訟の法的性質が議論されています。
弁論主義が制限されていますが(前記),現実には主張・立証の対立があるという判断をした裁判例があります。
詳しくはこちら|協議と賛助や依頼の承諾による弁護士の受任の利益相反
とにかく,実際の共有物分割の交渉や訴訟では,戦略的に主張を構成し,的確・効果的な立証すべきです。

本記事では,共有物分割訴訟の性質について説明しました。
共有物分割の交渉や訴訟のノウハウはとても幅広く,また細かいものがあります。
実際に共有物(共有不動産)に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。