1 現物分割|基本|概要
2 共有不動産|現物分割|典型例
3 部分的価格賠償|概要
4 土地の現物分割|持分割合の反映
5 土地の現物分割|具体的方法|決定方針
6 土地の現物分割|不能・価値減少|基本
7 土地の現物分割|不能・価値減少|具体例・判例
8 現物分割|著しい価値減少|基準

1 現物分割|基本|概要

基本的な分割類型は3つあります。
詳しくはこちら|共有物分割|分割類型|全体
本記事では『現物分割』について説明します。
まずは現物分割の基本的事項をまとめます。

<現物分割|基本|概要>

あ 現物分割=狭義の分割|概要

共有物を持分割合に応じて現実に分割すること
持分の交換契約と言える
詳しくはこちら|共有物分割|分割類型|全体

い 選択基準|概要(※1)

優先的に選択する分割類型である
しかし,次のいずれかに該当する場合
→換価分割を選択できる
=現物分割は選択できない
ア 不能
現物分割が不可能
イ 著しい価値減少
現物分割によって著しく価格を損するおそれがある
※民法258条2項
詳しくはこちら|分割類型|選択基準=優先順序|全体

2 共有不動産|現物分割|典型例

不動産の現物分割の典型例をまとめます。

<共有不動産|現物分割|典型例>

あ 土地の現物分割

線を引いて,土地を複数エリアに分ける

い 建物の現物分割|原則

1個の建物の場合,通常は物理的に分けることはできない

う 建物の現物分割|例外

専有部分に分けられる構造の建物の場合
→区分所有+現物分割という組み合わせが可能である
詳しくはこちら|区分所有とすることを伴う現物分割もできる

3 部分的価格賠償|概要

現物分割と価格賠償を合わせる方法もあります。

<部分的価格賠償|概要>

あ 内容

現物分割をする
『価値の過不足』について補償金で調整する

い 性格

現物分割と価格賠償の組み合わせである
※最高裁昭和62年4月22日
詳しくはこちら|価格賠償|基本|判例による創設|部分的→全面的|典型的争点

4 土地の現物分割|持分割合の反映

土地については『現物分割』をしやすいです。
現物分割の際は共有持分割合を反映します。
具体的な内容をまとめます。

<土地の現物分割|持分割合の反映>

あ 面積

『面積』を共有持分割合と同じにするとは限らない

い 評価額

評価額を共有持分割合に対応させる
『う』のような事情による有利・不利を含めて評価する

う 評価要素|例

ア 形状
イ 位置
特に接道の状況など

5 土地の現物分割|具体的方法|決定方針

土地の現物分割では『物理的に線を引く』ことになります。
当然,線を引く場所をどこにするかについて対立が生じやすいです。
これについての基準を示した判例を紹介します。

<土地の現物分割|具体的方法|決定方針>

あ 基本

土地の現物分割の具体的内容について
→『い〜え』のような事情を考慮して定める
=分ける線を引く場所を決める

い 持分割合

原則として持分割合に応じた面積とする

う 使用収益状況・隣接地との関係

次の事情を考慮する
ア 現に行なわれている使用収益の状況
イ 隣接地との関係

え 有利総量最大

分割後の各範囲の位置・地形について
→各所有者にとって最も利用価値が高くなる
※仙台地裁昭和39年3月24日

6 土地の現物分割|不能・価値減少|基本

現物分割が認められない状態もあります。
典型的な状況をまとめます。

<土地の現物分割|不能・価値減少|基本>

あ 基本

現物分割が不可能or著しい価値減少を生じる場合
→現物分割を選択できない(上記※1)

い 典型例|狭小

現物分割により狭い土地となる
→価値が大きく減少する

う 典型例|建築不可

分割後の土地が建築基準法の建築規制を受けることになる
→建物の建築ができない土地となる
→価値が著しく減少する

7 土地の現物分割|不能・価値減少|具体例・判例

土地の現物分割が認められない具体例をまとめます。

<土地の現物分割|不能・価値減少|具体例・判例>

あ 極度の細分化

極度に細分化することになる
→現物分割を選択できない
※東京高裁大正9年4月14日

い 建物の敷地|一般

土地上に建物がある場合
→事情により現物分割が選択できなくなる
※大阪地裁昭和25年10月16日

う 第三者所有建物の敷地

土地上に第三者所有の建物がある場合
→価値の毀損が大きい
→現物分割を選択できない
ただし反対説も強い
※東京地裁昭和29年7月15日

8 現物分割|著しい価値減少|基準

『著しい価値減少』がある場合は現物分割は認められません。
『著しい価値減少』の基準をまとめます。

<現物分割|著しい価値減少|基準>

あ 価値下落率|目安

『著しい価値減少』と認められる目安
=20〜30%程度

い 価値下落率|判例

ア 前提事情
現物分割にした場合の経済的価値について
→一括売却に比べて10%程度価値が低下する
イ 『著しく減少』→否定
『著しい価値減少』とは認めない
※東京地裁平成9年1月30日