1 共有持分の譲渡に伴う合意・債務の承継と組合契約による譲渡の制限
2 共有物に関する合意の持分譲受人への承継(まとめ)
3 共有物に関する分割契約上の債権の承継
4 共有物分割訴訟の換価分割判決の承継(概要)
5 共有物分割または共有物管理に関する特約の承継
6 共有物に関する使用収益・管理・費用分担の合意の承継
7 共有物の管理使用に関する特約上の権利義務の承継
8 決定した使用方法の事後的変更(概要)
9 共有物に関する合意の承継・変更の具体例
10 民法上の組合による持分譲渡の制限
11 共有物に関する合意を承継した譲受人の救済手段
12 共有持分の購入と弁護士法73条違反

1 共有持分の譲渡に伴う合意・債務の承継と組合契約による譲渡の制限

共有持分を購入した場合には,共有持分を取得し,新たな共有者となります。この場合,新たな共有者は,それ以前に共有者が決めたことに拘束されます。
また,民法上の組合の財産については,一種の共有となっていますが,共有持分を譲渡自体ができません。
本記事ではこのような,共有持分の譲渡に関する法律的な問題について説明します。

2 共有物に関する合意の持分譲受人への承継(まとめ)

共有者間で使用方法を合意することがあります。
詳しくはこちら|共有物の変更・管理・保存行為の意思決定に必要な同意の範囲と大まかな分類
一般的な原則論として,合意については(合意した)当事者だけが拘束されますが,当事者以外の者を拘束することはありません。共有物に関しては,不分割特約だけは,登記してあれば持分の譲受人も拘束する(承継される)ことになります。
不分割特約以外の共有物に関する合意は登記することができません。そこで原則に戻って持分の譲受人に承継しないように思えますが,民法254条によって承継することになります。しかし,承継するのはあくまでも共有物の使用・管理に関する内容(合意)だけです。細かい解釈については以下説明します。

<共有物に関する合意の持分譲受人への承継(まとめ)>

あ 不分割特約の承継(概要)

共有者間で不分割特約を合意した場合(実質的な不分割の合意を含む)
→登記することができる
登記をしないと特定承継人に対抗できない
※民法256条
※不動産登記法59条6号
※東京地裁平成3年10月25日(実質的な不分割の合意について)
詳しくはこちら|共有物分割禁止特約の基本(最長5年・登記の必要性)

い 一般的な共有物の使用・管理に関する合意の承継

共有者が共有物の使用・管理に関しての合意・決定した内容
→『あ』以外は登記することはできない
登記をしなくても特定承継人に対抗できる
=合意・決定内容は承継される(後記)

う 共有物の使用・管理に関係しない合意の承継

共有物の使用・管理とは関係ない(共有と分離できる)権利関係
→特定承継人に対抗できない
=合意・決定内容は承継されない

3 共有物に関する分割契約上の債権の承継

結論としては,共有者間の合意は広く,持分の譲受人に承継されることになります。
まず最初に,共有物分割に関する合意が,持分の譲受人にも承継されると判断された最高裁判例を紹介します。

<共有物に関する分割契約上の債権の承継>

あ 共有者間の合意

土地がA・Bの共有となっていた
A・B間で次のような合意をした

い 合意内容

土地を甲・乙に分割する
甲土地はAが独占的に使用する
事後的に分筆登記・単独所有にする登記を行う

う 共有持分譲渡

Bが共有持分をCに譲渡した

え 裁判所の判断

Cは『特定承継人』に該当する
→合意の結果生じた『分割契約上の債権』として
→A・B間の合意はCにも承継される
※民法254条
※最高裁昭和34年11月26日

4 共有物分割訴訟の換価分割判決の承継(概要)

前述のように,共有物分割契約(合意)上の債権は持分の特定承継人に承継されます。この点,共有物分割訴訟の判決の後に持分の譲渡があった場合にも,同じように持分の譲受人にも判決の効力が及びます。具体的には,換価分割の判決の後の持分の譲渡を,担保権の譲渡と同じように扱うという解釈です。
詳しくはこちら|形式的競売における差押の有無と処分制限効,差押前の持分移転の扱い

5 共有物分割または共有物管理に関する特約の承継

少し古い判例で,共有物分割・共有物の管理に関する権利関係という広い範囲で持分譲受人への承継を認めたものがあります。
一方,共有物を購入する資金に関する貸し借りについては,さすがに共有物の使用や管理とすらいえないので,承継されないと示されています。

<共有物分割または共有物管理に関する特約の承継>

あ 持分譲受人への承継の有無

ア 承継される
共有と相分離できない共有者間の権利関係
例=共有物分割または共有物管理に関する特約
イ 承継されない
共有物買い入れの資金を借り入れた債務,これを借り入れるにあたり要した費用

い 判決文の引用

共有の持分を譲り受けた者は,譲渡人の地位を承継して共有者となり,共有物分割または共有物管理に関する特約等すべて共有と相分離できない共有者間の権利関係を当然承継するが,共有物買い入れの資金を借り入れた債務及びこれを借り入れるに当り要した費用等につき,共有者間で締結した,各自の持分に応じてこれを負担する契約などは,これに関する特別の意思表示がないかぎり,譲受人が当然承継すべきものではない。
※大判大正8年12月11日

6 共有物に関する使用収益・管理・費用分担の合意の承継

次に,共有物に関する使用収益・管理と費用分担に関する合意が持分の譲受人に承継されると示された裁判例を紹介します。『債権』ではなく,合意そのものの承継が認められています。

<共有物に関する使用収益・管理・費用分担の合意の承継(※1)>

あ 裁判例の規範

共有者間の共有物に関する使用収益,管理又は費用の分担についての定めは,その共有者の特定承継人に対しても当然承継されるものと解すべきものである

い 理由

けだし,共有物の使用収益,管理又は費用の分担に関する定めは,共有関係と相分離しえないものであり,共有者は,自己が持っていた以上の権利を譲り渡すことができず,譲受人も,譲渡人が受けていたと同じ制限を受ける権利を取得するのが当然であるからである
民法254条は,右の当然の事理を前提とし,更に具体的に発生した債権についても特定承継人に承継されることを規定しているのである
(承継されるものを債権に限定する趣旨ではなく,承継されるものの一部として確認するものである)

う 公示(登記)との関係

なお右特約については公示方法がないので,持分の譲受人が不測の損害を受け,取引の安全を害することがないとはいえないが,これは譲渡人の瑕疵担保責任,あるいは,共有者となつた譲受人による共有解消の問題として考慮すれば足りるものというべきである
※東京高裁昭和57年11月17日(使用収益・管理の方法,費用の分担について)

7 共有物の管理使用に関する特約上の権利義務の承継

さらに,共有物の管理使用に関する特約上の権利義務が持分の譲受人に承継されると示された裁判例を紹介します。正確には,この解釈は前提部分であり,事案としては,複数の者が(土地の)使用収益権を共同して有する状態であり,この場合に,民法254条(共有の規定)を準用したという理論的構造になっています。

<共有物の管理使用に関する特約上の権利義務の承継(※2)>

あ 裁判例の規範

民法第254条によれば,共有者の1人が共有物につき他の共有者に対して有する債権はその特定承継人に対してもこれを行うことが出来るものとされていて,共有持分の譲受人は共有物の管理使用に関する特約上の権利義務をも当然に承継し,登記その他の公示方法がないからと言ってこれを否認することは出来ないと解される

い 事案への適用(あてはめ)

共同使用収益権者による一括仮換地の一部をその中の1人だけに専用して使用収益させるという合意について
民法254条の準用により,XはAから持分の一部を特定承継したYに対しても右合意の効力を主張して本件宅地の専用使用収益権を行使することが出来る
※仙台高裁昭和42年2月20日(専用使用収益について・前提として)

ところで,このような共有物の使用に関する合意の承継の問題が具体化する典型的ケースの1つは,共有の土地の利用に関する合意がある状態で抵当権が実行(競売)されたという状況です。これについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|担保権実行における土地共有者が合意した利用権の消滅か存続

8 決定した使用方法の事後的変更(概要)

共有物の使用方法について合意が成立した後の問題もあります。
後から『決定した内容を変更したい』というケースです。
初めての『決定・合意』とは違う扱いになります。
『共有者全員の同意が必要』となるのです(※4)
詳しい内容については別に説明しています。
詳しくはこちら|共有物|『変更』『処分』行為

9 共有物に関する合意の承継・変更の具体例

合意の承継や変更が問題となる具体例を紹介します。

<共有物に関する合意の承継・変更の具体例(※4)>

あ 使用方法の合意

建物がA・B・Cの共有となっていた
建物にはAが単独で居住していた
B・Cは無償でAが単独で居住することを承認していた

い 持分譲渡

Cが共有持分をDに売却した
DはAに対して明渡・賠償金を請求した

う 承継

A・B・Dは従前の合意に拘束される
→Aが単独・無償で占有する合意は有効である
Dの明渡・賠償金の請求は認められない

え 変更

A・B・Dの全員が合意しない限り
→『あ』の合意は解消できない(前記※3)

この結論はDが困るものと言えます。
その法的な救済手段については次に説明します。

10 民法上の組合による持分譲渡の制限

不動産の共有持分を譲り受ける(購入する)時のリスクとして,民法上の組合もあります。
仮に共有者間で組合契約が成立していて,共有物が組合財産となっている場合は,そもそも持分の譲渡自体が無効となってしまいます。
組合財産となっていることは,登記などの公示がなされません。
そこで,共有持分を譲り受ける者が負うリスクといえます。

<民法上の組合による持分譲渡の制限>

あ 民法上の組合による譲渡無効

共有者間に民法上の組合が成立していた場合
→出資した共有持分の譲渡は無効となる
詳しくはこちら|民法上の組合の財産の扱い(所有形態・管理・意思決定・共有の規定との優劣)

い 公示なし

民法上の組合(の財産であること)について
→不動産の登記も法人(商業)登記もなされない
→共有者(組合員)以外が公的記録から知ることはできない

11 共有物に関する合意を承継した譲受人の救済手段

前記事案の譲受人の救済手段をまとめます。

<共有物に関する合意を承継した譲受人の救済手段>

あ 前提事情

前記※3の事案において
持分を購入したDは現実的な利益がほとんどない
Cが事前に『合意内容』をDに説明していなかった
Dとしては想定外の損失を受けた

い 救済手段|売買契約

売買契約に問題があったと言える
→DはCに対して次の主張・責任追及をすることができる可能性がある
ア 契約の取消
錯誤・詐欺による取消
イ 説明義務違反→債務不履行責任
ウ 契約不適合責任(瑕疵担保責任)
詳しくはこちら|売買契約に関する責任の種類(瑕疵担保・債務不履行・不法行為)

う 救済手段|共有一般

根本的な共有関係からの離脱の手段がある
ア 共有物分割請求
イ 共有持分を第三者に譲渡する
ウ 共有持分を放棄する

12 共有持分の購入と弁護士法73条違反

不動産の共有持分を購入した場合,通常はそのままでは不動産を使えることにはなりません。占有する共有者や入居者(賃借人)に対して明渡や金銭(賃料相当の損害金)を請求し,さらに状況によっては共有物分割を請求することが前提となっています。
このようなプロセスを繰り返して行う場合,他人の権利の譲り受けとその後の権利の実行として,弁護士法73条違反となることがあります。弁護士法73条に違反すれば,犯罪(刑事罰の対象)になるとともに,取引(共有持分権の売買)も無効となります。
詳しくはこちら|業としての権利の譲受と実行の禁止(弁護士法73条の全体像)

本記事では,共有持分を譲り受けた者が拘束される可能性のある事情,つまり譲受人の負うリスクについて説明しました。
共有持分を取得する際は,多くの法的なリスクが生じるので,十分に把握・理解することが求められます。
共有持分の譲り受け(購入)を予定している方や,これに伴う問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。