代表弁護士三平聡史1 使用貸借契約の終了|期限or目的or相当期間or解約申入
2 使用貸借の終了|設定された期限
3 使用貸借の終了|『目的に従った使用・収益』が終了した時
4 使用貸借の終了|『相当期間』経過+解約告知
5 『期限,目的』を定めていない場合は『解約申入』
6 『使用・収益する期間』は背景事情から判断される
7 『使用収益に足りる期間=相当期間』は『使用収益する期間』を短縮したもの
8 『相当期間』の判断基準・判断例|ブレが大きい

本記事では『使用貸借契約の終了』について説明します。
『使用貸借と賃貸借との判別』については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|使用貸借|賃貸借・地上権との判別|通常の必要費・固定資産税の負担

1 使用貸借契約の終了|期限or目的or相当期間or解約申入

『使用貸借契約』の終了時期は,主に4種類に分けられます。借主の死亡を含めると5種類となります。

<使用貸借契約の終了>

終了事由 民法
設定された期限 597条1項
目的に従った使用・収益終了時 597条2項本文
使用・収益に足りる期間=『相当期間』 597条2項但書
解約申入 597条3項
借主の死亡 599条

これらは使用貸借特有の終了事由です。最後の借主の死亡はイレギュラーなものです。また,特殊性を反映した解釈もあります。
借主の死亡による終了については別の記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|借主の死亡による使用貸借の終了と相続(土地の使用貸借の特別扱い)
これら以外にも一般的な終了事由はあります。
債務不履行解除などです。
上記のそれぞれの終了事由の内容について,順に説明します。

2 使用貸借の終了|設定された期限

期限が設定されていれば,その期限の設定は有効です。
この点,賃貸借契約の場合は『期間』についての強い制限があります(借地借家法)。
しかし『使用貸借』は『借地借家法』の適用はありません。
『期限』は自由に設定できます。

<使用貸借|『不確定期限』の例>

あ 債務を完済して資力が充実した時

※大判大正7年2月19日

い 借主の長男が成年に達した時

※大判昭和11年6月5日

3 使用貸借の終了|『目的に従った使用・収益』が終了した時

使用貸借契約では『目的』を設定することができます。
この場合『目的に従った使用・収益』が終了した時点で契約が終了します。
実際には,不明確なことが多く『見解の対立→トラブル発生』ということが多いです。

<使用貸借|『目的』に関するトラブルの典型例>

あ 『目的』が不明確

『契約書上明記しているわけではない』ケースが多い

い 『目的に従った使用・収益』・『終了』が不明確

例;『建物所有』や『居住』という目的→いつ『終了』と言えるのか

4 使用貸借の終了|『相当期間』経過+解約告知

『使用・収益をなすのに足りる期間』が経過した時点で,貸主から『解約申入』をすれば,契約は終了します。
『使用・収益をなすのに足りる期間』のことを『相当期間』と呼んでいます。
この方法を『相当期間経過後の解約申入』と呼んでいます。
実際の『使用・収益』が終わってなくても『相当期間』経過で終了にできる,という方法です。
『相当期間』は曖昧であることが多いです。
実務では『見解の対立→トラブル発生』ということがとても多いです。

5 『期限,目的』を定めていない場合は『解約申入』

期限も目的も定めていない場合は,貸主が『解約申入』をした時点で契約は終了します。
実際には,暗黙のうちに『期限や目的を定めた』と認定されるケースが多いです。
この判断も非常に曖昧です。

6 『使用・収益する期間』は背景事情から判断される

”使用・収益が終了する期間については,貸借が始まる経緯から判断されます。
不動産を無償で貸す,という場合は,当然背景として特殊な人的関係などがあるはずなのです。

<『使用・収益の終了時期』の例>

あ 建物が朽廃するまで

土地の使用貸借;東京地裁昭和31年10月22日

い 内縁関係解消に関する紛争の解決まで

建物の使用貸借
※東京地裁平成18年3月30日

う 借主が自活できるまで

建物の使用貸借
※東京地裁平成17年3月25日

7 『使用収益に足りる期間=相当期間』は『使用収益する期間』を短縮したもの

『使用収益する期間』と『使用収益に足りる期間=相当期間』は次のように整理できます。

<『使用収益する期間』と『使用収益に足りる期間=相当期間』>

あ 前提・事例

建物の使用貸借の『目的』=借主の居住

い 使用収益する期間

借主が亡くなるまで

う 使用収益に足りる期間=相当期間

一般的に『居住を許容できる期間』
=『い』を短縮したもの

元々使用貸借契約は,無償という前提であり,借主は実質的に『負担なし』です。
そこで『使用収益する』期間だと長過ぎる,という不合理性があるのです。
そのため,現実には『目的』が完了していないとしても『使用・収益に足りる期間』が経過した時点で終了が認められているのです。
具体的には『貸主(オーナー)からの解約申入』という方法です。

8 『相当期間』の判断基準・判断例|ブレが大きい

(1)『相当期間』の判断基準

『相当期間』の判断基準をまとめます。

<『使用・収益に足りる期間=相当期間』の判断基準>

使用貸借の『目的』から平均的に想定される期間

このように『相当期間』の判断は曖昧と言えます。
『相当期間』が判断された具体例を整理します。

(2)相当期間の判断の実例(土地の使用貸借)

実際のケースでは,個別具体的な事情によってその期間の判断は大きく変わります。
また,明確な基準もないので,読みにくいとも言えます。
あくまでも参考として,裁判例を示しておきます。まずは土地の使用貸借に関する事例です。

<相当期間の判断の実例(土地の使用貸借)>

あ 転居先を探すまでの暫定的な意図

目的=新たな移転先を探すまで
契約開始後4年半の時点で『相当期間』経過を認めた
※東京地裁昭和41年4月19日

い 一般的居住用建物所有の目的

目的=居住用の建物所有
建物の新築後29年(契約開始後31年)
元の貸主の相続により借主が複数人存在した
元の借主の妻・その子(3女)と夫・孫2人が同居していた
元の借主の妻が病気であり,家族が面倒をみる必要があった
→相当期間の経過を否定した
→明渡請求を認めなかった
※東京地裁昭和56年3月12日

(3)相当期間の判断の実例(建物の使用貸借)

建物の使用貸借に関する事例を紹介します。当然,土地よりも短期で契約終了を認める傾向が強いです。

<相当期間の判断の実例(建物の使用貸借)>

あ 相当期間=32年4か月(の時点で認めた)

目的=居住
※最高裁昭和59年11月22日

い 相当期間=27年(の時点で認めた)

目的=居住
※東京地裁平成18年1月13日

結局,裁判官の判断による『ブレ』が大きいです。
『再現性が小さい』→『予測の制度が低い』という状態です。
実際に使用貸借契約を利用する場合,契約書上で『明確な期限』を条項化することが有益です。