1 借主の死亡による使用貸借の終了と土地の使用貸借の特別扱い
2 借主の死亡による使用貸借の終了の規定と趣旨・性質
3 建物所有目的の土地の使用貸借における借主の死亡の扱い
4 相当期間の経過による終了(参考)
5 使用貸借における貸主の死亡(参考)

1 借主の死亡による使用貸借の終了と土地の使用貸借の特別扱い

使用貸借契約は借主の死亡によって終了するという規定があります。
詳しくはこちら|一般的な使用貸借契約の終了事由(期限・目的・使用収益終了・相当期間・解約申入)
通常はこの規定のとおりなのですが,建物所有目的の土地の使用貸借は原則と例外が逆転します。
本記事では借主の死亡による使用貸借の終了について説明します。

2 借主の死亡による使用貸借の終了の規定と趣旨・性質

まず,民法の条文は単純に借主の死亡によって使用貸借が終了するという内容が規定されているだけです。もともと貸主は特定の人に対して(無償で)貸すという認識であるのが通常です。そこで,相続で他の者が借主になることを回避できるようになっているのです。
なお,これは任意規定です。当事者が借主の死亡で終了しないと合意する(民法599条を適用しない)ことが可能です。

<借主の死亡による使用貸借の終了の規定と趣旨・性質>

あ 条文の規定

(借主の死亡による使用貸借の終了)
第五百九十九条 使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う。
※民法599条

い 趣旨

使用貸借は無償契約である
借主との特別の関係に基づいて貸すのが大部分である
借主その人を考慮し,その人に対してのみ貸与したとみるべき場合が多い
借主の死亡によって相続人に承継されないというのが当事者の通常の意思であると推定される
※大阪高裁昭和55年1月30日

う 任意規定

この規定は任意規定である(強行規定ではない)
当事者がこれとは異なる内容を合意できる
※幾代通ほか編『新版 注釈民法(15)債権(6)増補版』有斐閣1996年p126

え 使用借権の相続(参考)

仮に借主の死亡の際,民法599条が適用されない場合
→借主の相続人が借主の地位(使用借権)を承継する
※民法896条

3 建物所有目的の土地の使用貸借における借主の死亡の扱い

建物所有目的の土地の使用貸借では,契約が終了すると,建物を解体して土地を明け渡すことになります。貸主としては通常,借主が死亡したら(借主の相続人が)建物を解体するということは想定していないと考えられます。
そこで,借主の死亡で終了する規定(民法599条)は原則として適用されません。つまり,借主の相続人が借主の地位を引き継ぐという状態になるのです。
ただし,当事者の間で借主の死亡で契約は終了すると合意することは可能です。その場合は原則に戻る,つまり民法599条が適用されることになります。

<建物所有目的の土地の使用貸借における借主の死亡の扱い>

あ 契約の終期の一般論(前提)

建物所有を目的とする土地の使用貸借においては,個人的考慮をする必要はない
特段の事情のない限り,建物所有の用途にしたがって使用を終わった時にその終期が到来する
※大判昭和13年3月10日

い 借主死亡の扱い

個人的考慮を重視すべきでない
借主の死亡によって契約が終了する(民法599条を適用する)のは当事者の通常の意思に反する
→建物の使用が終わらない間に借主が死亡しても,特段の事情のないかぎり敷地の使用貸借が当然に終了するものではない
=民法599条を適用しない
※大阪高裁昭和55年1月30日
※東京地裁昭和56年3月12日

4 相当期間の経過による終了(参考)

建物所有目的の土地の使用貸借で借主が死亡すると,原則として借主の相続人が新たな借主になります(前記)。
そうすると,永久に使用貸借が終了しないように思うかもしれませんがそうではありません。借主の死亡以外にも使用貸借の終了事由があります。実際に該当することが多いのは,相当期間の経過として使用貸借契約が終了するというものです。これについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|建物所有目的の土地の使用貸借における相当期間を判断した裁判例

5 使用貸借における貸主の死亡(参考)

以上の説明は,借主が死亡した時についての扱いでした。
一方,貸主が死亡した場合に終了するという規定はありません。そのまま貸主の相続人貸主の地位を承継することになります。
当事者の間で貸主の死亡で終了すると合意(特約)しておくことも可能です。

<使用貸借における貸主の死亡(参考)>

使用貸借の貸主の死亡によって契約が終了するという規定はない
別段の特約がない限り使用貸借は存続する
※幾代通ほか編『新版 注釈民法(15)債権(6)増補版』有斐閣1996年p127

本記事では,使用貸借において借主の死亡で契約が終了する規定(民法599条)とその例外を説明しました。
実際には,個別的な事情や主張・立証のやり方次第で結論は違ってきます。
実際に使用貸借の終了(明渡)の問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。