1 建物所有目的の土地の使用貸借における相当期間を判断した裁判例
2 相当期間の経過(終了)を認めた裁判例(集約)
3 短期に限る意図→4年半で相当期間経過を認めた裁判例
4 相当期間の経過(終了)を認めなかった裁判例(集約)
5 居住者の窮状により31年でも相当期間を否定した裁判例

1 建物所有目的の土地の使用貸借における相当期間を判断した裁判例

建物所有目的の土地の使用貸借において目的に従った使用収益に足りる期間(相当期間)の判断が問題となることが多いです。つまり,明渡請求が認められるかどうかという判断です。
詳しくはこちら|一般的な使用貸借契約の終了事由(期限・目的・使用収益終了・相当期間・解約申入)
本記事では,土地の使用貸借の相当期間が経過したかどうかを判断した実例(裁判例)を紹介します。

2 相当期間の経過(終了)を認めた裁判例(集約)

契約開始から10年前後で相当期間が経過したと認められるケースが多いです。典型的な判断といえます。

<相当期間の経過(終了)を認めた裁判例(集約)>

裁判例 契約開始からの期間
東京地裁昭和43年6月3日 10年間
大阪高裁昭和55年1月30日 11年間

3 短期に限る意図→4年半で相当期間経過を認めた裁判例

土地を貸す経緯として,貸主と借主が短期間に限るという認識を持っていたというケースです。このような経緯が重視されて,契約開始から4年半で,相当期間が経過したと認められました。

<短期に限る意図→4年半で相当期間経過を認めた裁判例>

あ 土地の使用貸借の目的や経緯

当事者には,借主が転居先を探すまで土地を貸借するという意図があった
=短期間に限って貸す(借りる)という認識

い 相当期間の判断

契約開始後4年半の時点で相当期間が経過したと判断した
※東京地裁昭和41年4月19日

4 相当期間の経過(終了)を認めなかった裁判例(集約)

次に,相当期間は経過していないと判断した裁判例を紹介します。契約開始後2年間は短いので相当期間の経過が否定されたのは分かりやすいです。一方,契約開始後10年や20年でも相当期間の経過が否定されています。
経過期間以外の個別事案の細かい事情も大きく影響することがあるのです。

<相当期間の経過(終了)を認めなかった裁判例(集約)>

裁判例 契約開始からの期間
神戸地裁尼崎支部昭和49年10月30日 20年間
東京高裁昭和54年2月26日 10年間
東京高裁昭和55年10月15日 2年間

5 居住者の窮状により31年でも相当期間を否定した裁判例

個別的な事情が大きく影響して相当期間の経過が否定された事例を紹介します。
契約開始から31年が経過していたので,平均的な想定期間(相当期間)は経過していると思えます。
しかし,実際に居住している者は,病気により監護が必要な高齢の者と,手助けをしている家族でした。このような事情が,まだこの土地を使うことを認める方向に働いたと思われます。

<居住者の窮状により31年でも相当期間を否定した裁判例>

あ 契約開始からの期間

居住用の建物所有の目的で土地の使用貸借が行われた
期間は定めていなかった
契約開始から31年が経過していた
建物の新築から29年が経過していた

い 使用借権の承継(前提)

元の借主Aが亡くなり,相続人が使用借権(借主の地位)を承継した
詳しくはこちら|借主の死亡による使用貸借の終了と土地の使用貸借の特別扱い

う 居住者

Aの妻・子供(3女)B
Bの夫と子供(Aの孫)2人

え 生活状況

Aの妻が病気であり,家族が面倒をみる必要があった

お 相当期間の判断(否定)

使用貸借の土地上の建物の使用収益の必要がある状態である
相当期間は経過していない
=使用貸借は終了していない
→明渡請求を認めなかった
※東京地裁昭和56年3月12日

本記事では,建物所有目的の土地の使用貸借における相当期間の経過の判断をした裁判例を紹介しました。
実際には,個別的な事情や主張・立証のやり方次第で結論は違ってきます。
実際に使用貸借の終了(明渡)の問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。