1 不在者財産管理人の選任制度の全体像
2 不在者財産管理人の選任の規定
3 不在者財産管理人の選任の要件
4 不在者の意味と解釈
5 不在者財産管理人の審判における不在の証明
6 不在者財産管理人と成年後見との関係
7 不在者財産管理人の選任の具体例(概要)

1 不在者財産管理人の選任制度の全体像

不在者の財産を管理する者を裁判所が選任する手続があります。
行方不明や生死不明の者について,相続の扱いができるようになる失踪宣告とは違う制度です。
詳しくはこちら|失踪宣告の手続|申立権者・管轄・調査方法・所要期間
本記事では,不在者財産管理人の選任に関する基本的なことを説明します。

2 不在者財産管理人の選任の規定

まず,不在者財産管理人の選任に関する規定をまとめます。
ポイントは,対象となる者が従来の住所・居所を去ったという要件です。
審査・判断は家庭裁判所が審判として行います。

<不在者財産管理人の選任の規定>

あ 条文規定

従来の住所or居所を去った者がその財産の管理人を置かなかったときは
家庭裁判所は,利害関係人or検察官の請求により
その財産の管理について必要な処分を命ずることができる
本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも,同様とする
※民法25条1項

い 家庭裁判所の審判

家庭裁判所が不在者財産管理人を選任する手続について
別表第1事件に分類される
詳しくはこちら|家事調停・審判の種類の分類(別表第1/2事件・一般/特殊調停)

3 不在者財産管理人の選任の要件

不在者財産管理人が選任が認められるための主な要件は不在者財産が放置されていることというものです。

<不在者財産管理人の選任の要件>

あ 不在者への該当(概要)

対象となる者が不在者に該当する
=従来の住所or居所を去ったという要件(後記※1)

い 財産の無管理状態の必要性(肯定)

不在者の財産が放置された状態にあることについて
財産管理人の選任の要件とすべきである
※谷口知平ほか編『新版 注釈民法(1)総則(1)改訂版』有斐閣2002年p442

4 不在者の意味と解釈

不在者財産管理人が選任されるためには,不在者に該当する必要があります。
つまり従来の住所・居所を去ったという要件です(前記)。
失踪申告の審理における行方不明や生死不明よりも大幅に緩く認められます。

<不在者の意味と解釈(※1)>

あ 不在者の意味

不在者とは,従来の住所or居所を去って容易に帰来する見込みがない者をいう

い 従来の住所・居所の必要性(肯定)

従来の住所・居所自体が不明である場合
→不在者財産管理人の選任はできない
※長崎家裁佐世保支部昭和43年3月16日

う 新たな住所・居所の必要性(否定)

不在者が他に住所or居所を定めたか否かは問わない

え 行方不明・生死不明との関係(否定)

『行方不明』『生死不明』は不在者財産管理人選任の要件ではない

お 戸籍の記録の必要性(否定)

戸籍の記録がない者について
例=元樺太在住者
→不在者財産管理人の選任はできる
※昭和28年5月19日最高裁家庭局長回答

か 一時的滞在地を去った者(肯定)

単なる滞在地を去った者について
例=ホテルの滞在者
住所・居所が知れない場合は『不在者』に含める見解もある
※谷口知平ほか編『新版 注釈民法(1)総則(1)改訂版』有斐閣2002年p441,442

5 不在者財産管理人の審判における不在の証明

家庭裁判所の審理では,不在(従来の住所・居所を去ったこと)について判定します。
通常,自治体や親族への照会が行われます。

<不在者財産管理人の審判における不在の証明>

あ 不在の証明の方法

家庭裁判所が審判において不在を認定する方法について
→『い〜え』のような方法がある

い 本籍地への照会

家庭裁判所から不在者本人の本籍地へ問い合わせる

う 住民票上の住所地への照会

戸籍の付票で住民登録上の住所を確認する
住民登録における本人の現住所の市区町村に問い合わせる

え 推定相続人への照会

推定相続人に問い合わせて不在であることを確認する
※谷口知平ほか編『新版 注釈民法(1)総則(1)改訂版』有斐閣2002年p446

6 不在者財産管理人と成年後見との関係

本人(所有者)が財産を管理できない状況としては,不在者以外にも成年被後見人などもあります。
詳しくはこちら|成年後見人の制度の基本(活用の目的や具体例と家裁の選任手続)
実際には,不在者財産管理人の選任も成年後見人,保佐人,補助人の選任もできるという状況がよくあります。
この2種類の制度については,優劣関係はありません。
どちらか一方だけの選任を申し立てることも,両方申し立てることもできます。

<不在者財産管理人と成年後見との関係>

あ 優劣関係

財産管理人制度と成年後見制度の関係について
利用上の優劣関係はない

い どちらでも利用できる状況

判断能力が不十分な者について
例=被補助人(被後見人)の要件を満たす者
→不在者財産管理人の選任は可能である

う 両方とも利用する具体例

施設入所の手続をすぐに行いたい
→先行して不在者財産管理人を選任する
その後,財産全体の管理のために後見人を選任する
このようなケースは多い
※谷口知平ほか編『新版 注釈民法(1)総則(1)改訂版』有斐閣2002年p443,444

7 不在者財産管理人の選任の具体例(概要)

実際に不在者として財産管理人が選任される状況にはいろいろなものがあります。
具体的な典型事案については,別の記事で紹介しています。
詳しくはこちら|家庭裁判所は不在者の財産管理人を選任できる(選任の要件)
また,大規模な震災の時には不在者財産管理人の選任について特別な扱いがなされることもあります。
詳しくはこちら|生死不明→不在者財産管理人→失踪宣告→相続,生命保険金支払となる;普通失踪,危難失踪