1 行方不明の相続人により遺産分割ができないトラブル
2 相続人の1名の失踪宣告→数次相続or代襲相続となる
3 Cが死亡みなし時期(先)→父Xの死亡時期(後)というケース
4 父Xの死亡時期(先)→Cが死亡みなし時期(後)というケース
5 行方不明者の代理人を選任する手続がある(不在者財産管理人)
6 不在者財産管理人は家裁の許可を得て遺産分割に参加する
7 意思能力を欠く相続人は成年後見人が遺産分割に参加する(概要)

1 行方不明の相続人により遺産分割ができないトラブル

<行方不明の相続人により遺産分割ができないトラブル>

父Xが亡くなった
相続人は兄弟3人(ABC)である
困ったことに,Cが以前から行方不明である
ちなみに,Cには,妻Dと子供Eがいる
どうしたら良いのか

遺産分割協議は,相続人全員で行う必要があります。
ですから,相続人の中に行方不明の者がいると,そのままでは遺産分割ができなくなります。
この点,仮に相続人の1人であるべきCが7年以上行方不明,という状況であれば,家庭裁判所に失踪宣告を求めることができます。
失踪宣告がなされれば,行方不明者Cは死亡したものとみなされることになります。
詳しくはこちら|家裁の失踪宣告の審判手続(申立権者・管轄・調査方法・所要期間)
その時期の関係によって,Cの妻Dや子供Eが遺産分割協議に参加すれば全員が集合した状態となり,遺産分割が可能となります。

2 相続人の1名の失踪宣告→数次相続or代襲相続となる

失踪宣告(普通失踪)については,生死不明の7年間の満了時死亡時期とみなされます(民法31条)。
簡単に言えば,最後に生存が確認できた時点からちょうど7年後の時点です。
同居していた時期や,その後連絡を取れた時期のうち最後の時点,から7年後,ということになります。
そこで,Cの最後の生存情報から7年が経過した時点,と,父Xの死亡時点,の前後関係で遺産分割の参加者は違ってきます。
以下,分けて説明します。

3 Cが死亡みなし時期(先)→父Xの死亡時期(後)というケース

※『Cが死亡したとみなされた時期』=『Cが最後に生存が確認できた時点から7年後』
父Xの相続開始時点においては,既にCは死亡していた,ということになります。
そうすると,お父様の相続に関してCは相続人ではないということになります。
ただし,『Cの子供E』は,父Xの直系卑属として代襲相続人になります(民法887条2項)。
別項目;子が亡くなっている場合,その子(孫)が相続人となる;代襲相続
結局,父Xの相続について,遺産分割協議を行う者(相続人)は,A・B・E,ということになります。

4 父Xの死亡時期(先)→Cが死亡みなし時期(後)というケース

父Xの相続開始時点においては,『Cが相続人であった』,ということになります。
その後,Cが死亡した(こととみなされた)ことにより,Cの財産が,Cの相続人に承継されます。
具体的には,Cの財産である『父Xの相続分』が,Cの相続人に承継されるのです。
Cの相続人については,遺言で特別に定めていない場合は,法定相続によって,妻Dと子供E,ということになります。
この場合,結局,『Cが有していた父Xの相続分』を承継したのは『D・E』ということになります。
父Xの相続について,遺産分割協議を行う者(相続人)は,『A・B・D・E』ということになります。
このように2代以上がリレーのように相続することを数次相続と言います。

5 行方不明者の代理人を選任する手続がある(不在者財産管理人)

Cが行方不明になってから7年が経過していない場合は,普通失踪に該当しません。
この場合は,家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらう方法が良いでしょう。
裁判所が,不在者財産管理人を選任します。
詳しくはこちら|家庭裁判所は不在者の財産管理人を選任できる(選任の要件)
そして不在者財産管理人が,遺産分割(協議)に加わることになります。
ようやく,遺産分割を実現することができるようになります。
なお,行方不明の方についても,不在者財産管理人の選任はできます。
つまり,状況によっては失踪宣告と不在者財産管理人の両方とも利用できるということがあるのです。
詳しくはこちら|不在者財産管理人が選任される状況(行方不明・認知症・知的障害・家出)

6 不在者財産管理人は家裁の許可を得て遺産分割に参加する

本来,不在者財産管理人は,保存行為だけを行うことになっています(民法28条,103条)。
遺産分割協議(への参加)保存行為を超えます。
そこで,イレギュラー事項として,家庭裁判所の許可をもらう必要があるのです(民法28条)。
家庭裁判所の許可を得た上であれば遺産分割に参加できます。

7 意思能力を欠く相続人は成年後見人が遺産分割に参加する(概要)

以上の説明は,相続人の1人がいないために遺産分割に参加できないというものでした。
一方,相続人はいるけれど,判断能力が低下しているというケースはよくあります。
高齢者や認知症や精神的な疾患などが典型例です。
そのような場合は家庭裁判所に成年後見人を選任してもらえば,後見人が本人に代わって遺産分割に参加できるようになります。
詳しくはこちら|成年後見人の制度の基本(活用の目的や具体例と家裁の選任手続)