【不在者財産管理人が選任される状況(行方不明・認知症・知的障害・家出)】

1 不在者財産管理人が選任される具体的状況
2 高齢者・認知症患者の不在者財産管理人
3 知的障害者の不在者財産管理人(親亡き後)
4 長期の家出人の不在者財産管理人

1 不在者財産管理人が選任される具体的状況

住所や居所を去った者についての財産管理人を選任する制度があります。
詳しくはこちら|家庭裁判所は不在者の財産管理人を選任できる(選任の要件)
行方不明や生死不明となった方については,不在者として財産管理人が認められます。
しかし,失踪宣告とは違うので,もっと緩い基準で,不在者財産管理人は選任されます。
本記事では,実際に不在者として財産管理人の選任が認められる具体的事案を紹介します。

2 高齢者・認知症患者の不在者財産管理人

まず,高齢者や認知症の方が施設に入居したケースがあります。
行方不明や生死不明ではありませんが,不在者に該当します。

<高齢者・認知症患者の不在者財産管理人>

あ 管理者を希望する認知症患者の事案

Aは老人施設などに入所中である
Aは相当に高齢である
→容易に帰来する見込みはない
当初は十分な判断能力があったが認知症が始まった
Aも利害関係者もAの財産管理人の選任を望んでいる

い 不動産の管理ができない認知症患者の事案

Aは高齢者であり子供がいない
認知症のため自立生活が困難となった
A所有の土地・建物を放置した状態で高齢者ホームに入居している
土地・建物は荒れ放題となりそうである

う 不在者財産管理人の選任

『あ・い』のケースにおいて
施設に本人Aの居所はある
一方『従来の住所』を去っている
→『不在者』であることの障害にはならない
→不在者財産管理人の選任は可能である
※谷口知平ほか編『新版 注釈民法(1)総則(1)改訂版』有斐閣2002年p443〜445

3 知的障害者の不在者財産管理人(親亡き後)

知的障害がある方について,不在者財産管理人が選任されることもあります。
いわゆる親なき後問題というような状況が典型です。

<知的障害者の不在者財産管理人(親亡き後)>

あ 施設入居中の重度知的障害者の事案

Aは重度の知的障害を持つ成年者である
東京に居住している
面倒をみてくれていた親が死亡した
福祉事務所に施設入所を希望した
東北地方にある東京都の関連施設に入所することになった
東京には親が残してくれた相当な財産を有している
従来住んでいた土地・建物の管理が必要となった

い 不在者財産管理人の選任

Aは従来の住所を去っている
→不在者財産管理人の選任は可能である
※谷口知平ほか編『新版 注釈民法(1)総則(1)改訂版』有斐閣2002年p444〜446

4 長期の家出人の不在者財産管理人

家出した方について不在者財産管理人が選任されることもあります。

<長期の家出人の不在者財産管理人>

あ 長期の家出の事案

夫Aが借金のために家出した
妻Bに『借金取りが来たら適当に対応してくれ』と言い残した
Aは借地人である
地主はAに対して地代不払いを理由とする解除を通知した
地主は建物収去土地明渡の訴えを提起した
請求を認容する判決が言い渡された
妻Bは,弁護士に上訴を委任した

い 委任の効果(否定)

AがBに与えた任意代理権について
→日常家事の範囲を超える事項については及ばない
Bは訴訟の委任をすることはできない

う 不在者財産管理人の選任の指摘

不在者財産管理人の選任などの法的救済方法をとるべきである
=家出をした者は不在者に該当することがある
※東京高裁昭和46年1月28日

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