【債権の消滅時効の期間(原則(民法)と商事債権・商人性の判断)】

1 債権の消滅時効の期間
2 消滅時効の種類と時効期間(全体)
3 貸金の返還請求権の消滅時効(5年or10年)
4 商人該当性の判断
5 金融機関の商人該当性
6 信用保証協会の求償権の消滅時効期間
7 民法改正による新たな消滅時効期間

1 債権の消滅時効の期間

債権は一定の期間が経過すると消滅時効によって消滅することになります。
詳しくはこちら|債権の消滅時効の基本(援用・起算点・中断)
消滅時効が完成する期間は,債権の内容(種類)によって異なります。
本記事では,消滅時効期間について説明します。

2 消滅時効の種類と時効期間(全体)

消滅時効の期間にはいくつかの種類があります。基本的なものは,民法上の一般的な債権は10年,商事債権は5年というものです。これ以外に,特定の種類の債権は,もっと短い時効期間が適用されます。

<消滅時効の種類と時効期間(全体)>

あ 民法上の一般的債権
種類 消滅時効期間 条文 趣旨
一般的民事債権 10年間 民法167条
確定判決等により確定した債権 10年間 民法174条の2 元々10年未満(短期消滅時効)でも延長される
い 商事債権

5年間(商法522条)

う 短期消滅時効

個別的に『あ・い』より短い時効期間が適用される債権もある
詳しくはこちら|債権の短期消滅時効の種類・時効期間と民法改正による廃止

3 貸金の返還請求権の消滅時効(5年or10年)

貸金の返還請求権については,時効期間として,民法による10年と商事債権としての5年のいずれが適用されるのかが分かりにくいことがあります。
まずは,基本的な分類をまとめます。

<貸金の返還請求権の消滅時効(5年or10年)>

借主,貸主のいずれかが商人に該当する 商事時効 5年
借主,貸主のいずれも商人に該当しない 民法上の時効 10年

4 商人該当性の判断

消滅時効期間が10年か5年かという判断では,当事者が商人に該当するかどうかで決まります(前記)。
商人かどうかは事業主であるかどうかで決まります。この点,株式会社営利目的の法人です。そこで商人であることになります。

<商人該当性の判断>

あ 非事業主

商人に該当しない

い 事業主

商人に該当する
一般的に株式会社は営利目的とされているので商人に該当する

5 金融機関の商人該当性

金融機関が商人といえるかどうかの判断は少し複雑です。金融機関の種類によって法律上の位置づけが違うのです。
結果だけいうと,銀行だけが商人であり,それ以外の種類の金融機関は商人ではないということになります。

<金融機関の商人該当性>

あ 銀行

商人に該当する

い 信用金庫

商人に該当しない
※最高裁昭和63年10月18日

う 住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)

商人に該当しない

え (信用)保証協会

商人に該当しない
※最高裁昭和60年2月12日
ただし求償権まで民法上の時効が適用されるとは限らない(後記※1

6 信用保証協会の求償権の消滅時効期間

信用保証協会は商人ではありません。ところで信用保証協会は一般の顧客に自ら融資する(貸主になる)わけではありません。融資を受ける方(主債務者)のために,金融機関との間で保証契約を締結するのです。
ここで,求償権は信用保証協会と主債務者の間に発生します。そこで,商事債権となるかどうかは信用保証協会と主債務者の属性により判断することになります。
結論として,主債務者が事業者である場合のみ商事債権として5年の消滅時効期間が適用され,そうでない場合は原則どおりに10年が適用されるのです。

<信用保証協会の求償権の消滅時効期間(※1)

あ 原則

消滅時効期間は10年である

い 例外

主債務者(保証委託者)が事業者である場合
→消滅時効期間は5年となる
※最高裁昭和42年10月6日

7 民法改正による新たな消滅時効期間

以上の消滅時効期間は平成29年の民法改正で大きく変わります。
新たな消滅時効期間は2種類の起算点に分けられ,それぞれ5年か10年の期間が適用されます。改正前よりも大幅に単純なルールとなります。
ただし,施行は平成32年です。それ以前に生じた債権については現行(前記)の消滅時効期間が適用されます。

<民法改正による新たな消滅時効期間(※2)

あ 基本的部分

『い・う』のいずれか早い方の時点で債権が時効によって消滅する

い 主観的起算点による期間

債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間

う 客観的起算点による期間

権利を行使することができる時から10年間
※民法166条1項

え 短期消滅時効の廃止(概要)

短期消滅時効は全面的に廃止される
詳しくはこちら|債権の短期消滅時効の種類・時効期間と民法改正による廃止

お 施行時期

平成32年に施行される予定である

本記事では消滅時効期間について説明しました。
実際には個別的な特殊事情によって消滅時効期間の判断が違ってくることもあります。
実際に消滅時効に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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【債権の短期消滅時効の種類・時効期間と民法改正による廃止】

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