1 共有物分割禁止特約の基本
2 分割禁止特約の内容(基本)
3 分割禁止特約の期間制限
4 分割禁止特約の対抗要件(基本)
5 共有持分移転の原因と登記の要否の関係
6 実質的な分割禁止特約の扱い
7 想定外の分割請求を予防するための分割禁止特約の活用例
8 破産手続における分割禁止特約の適用除外(概要)

1 共有物分割禁止特約の基本

共有物を分割する(単独所有にする)ことは保護されています。しかし,状況によっては共有の状態を維持したいというニーズもあります。
詳しくはこちら|共有状態を維持するニーズ・ハードル
そこで,共有者全員で,一定期間は分割をしないという合意をすることが認められています。
本記事ではこのような分割禁止特約の基本的事項を説明します。

2 分割禁止特約の内容(基本)

共有状態を維持するために分割を禁止する合意が認められています。これは分割請求権の保障(分割の自由)と逆方向のもので,特殊な合意といえるでしょう。

<分割禁止特約の内容(基本)>

あ 共有物分割請求の保障(前提)

共有者は共有物の分割請求をする(共有を解消する)ことは強く保護されている
詳しくはこちら|共有の本質論(トラブル発生傾向・暫定性・分割請求権の保障)

い 分割禁止特約の基本的な内容

共有者全員が分割しないことを合意することができる
※民法256条1項ただし書

い ネーミングの例

『分割禁止特約』以外のネーミングもある
不分割特約
分割禁止合意
分割禁止契約

3 分割禁止特約の期間制限

分割禁止特約は,前記のように,強く保障される分割請求権を制限するものです。そこで,5年の期間制限があります。

<分割禁止特約の期間制限>

あ 最長期間

分割禁止の最長期間=5年間

い 更新

分割禁止特約は更新できる
更新後も最長期間制限は同様である
※民法256条2項

4 分割禁止特約の対抗要件(基本)

分割禁止特約は分割請求権への制限,つまり共有持分権が負担する大きな制約です。そこで,公示して,持分を取得する者がすぐに知れるようなシステムとなっています。つまり,登記がないと持分の譲受人は承継しないことになるのです。

<分割禁止特約の対抗要件(基本)>

あ 対抗要件

分割禁止特約について
→登記が対抗要件となる
※不動産登記法59条6号

い 対抗関係(登記の必要性)

分割禁止特約の当事者(合意した共有者)以外の者(共有持分の譲受人)に主張するには登記(対抗要件)が必要である
分割禁止特約の当事者に対しては登記がなくても主張できる

う 一般的な共有者間の合意の承継(比較)

共有と相分離できない共有者間の権利関係,共有者間の共有物に関する使用収益,管理又は費用の分担についての定めについて
→(対抗要件とは関係なく)当然に持分の譲受人に承継される
詳しくはこちら|共有持分の譲渡に伴う合意・債務の承継と組合契約による譲渡の制限

5 共有持分移転の原因と登記の要否の関係

分割禁止特約の登記は対抗要件となります(前記)。登記がないと分割禁止特約を主張できないという状況とは,具体的には共有持分の譲渡(売買や贈与)があった場合です。

<共有持分移転の原因と登記の要否の関係>

あ 分割禁止特約vs持分の取得者

共有者全員で分割禁止特約を合意した
共有持分をAが取得した
Aが共有物分割請求をした
他の共有者は分割禁止特約を主張した

い 対抗要件

Aの持分取得原因と登記の有無で優劣が決まる
=分割禁止特約が適用されるか否か

う 分割禁止特約適用の有無
Aの持分取得原因 特約登記あり 特約登記なし
相続 特約適用あり 特約適用あり
売買・贈与など 特約適用あり 特約適用なし

6 実質的な分割禁止特約の扱い

以上の説明は,分割禁止(不分割)特約そのものを前提としていました。ところで,実際には,分割禁止や不分割という用語を使わないけれど,実質的に分割をしない内容の合意をするケースもあります。このように,実質的な分割禁止の合意も,(分割禁止特約そのものと)同じ扱いとなります。

<実質的な分割禁止特約の扱い>

分割禁止の契約同様の効果を生ずる共有物についての債権的合意は,不動産登記法所定の登記をして初めて,共有者の特定承継人に対抗でき,しかも,登記をしても,その不分割の契約の期間は5年を超えることができない
※東京地裁平成3年10月25日

7 想定外の分割請求を予防するための分割禁止特約の活用例

共有状態を維持するには分割禁止特約が利用できます(前記)。
この特約がなくても大丈夫と思っても,想定外が起きます。
想定外の分割請求があった後に後悔するケースを紹介します。
分割禁止特約を活用するべき状況であった,とも言えます。

<想定外の分割請求を予防するための分割禁止特約の活用例>

あ 想定外の分割請求

共有者同士で分割請求をするような状況ではなかった
平穏な共有状態が続いた
共有者の1人が死亡した
相続人の1人が『共有物分割請求』を行った
→『共有解消』が強制される

い 回避方法

相続前に分割禁止特約を合意していた場合
→相続人もこれに拘束される
→分割請求を阻止できた

8 破産手続における分割禁止特約の適用除外(概要)

ところで,分割禁止の合意をして,登記もしておいたとしても,共有者の1人が破産すると,破産管財人は共有物分割請求をすることができてしまいます。特殊な例外的扱いです。
これについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|分割禁止特約の限界・例外|共有者の破産

本記事では,分割禁止特約の基本的事項を説明しました。
実際には,個別的な事情によって最適な対策・対応は違ってきます。
実際に共有物(共有不動産)に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。