1 複数の受益者間の対立の典型例と受益権取得請求権
2 複数の受益者による意思決定の方法(概要)
3 受益者の権利行使が困難となる具体例
4 受益権取得請求権
5 受益者代理人の活用(概要)

1 複数の受益者間の対立の典型例と受益権取得請求権

信託において,受益者が複数に存在するケースはよくあります。
その場合,受益者同士で対立が生じることもあります。そうすると,多数決を行う際に少数派が不利益を受けることになりがちです。
本記事では,受益者同士の対立が生じる具体例と,少数の受益者の対抗策である受益権取得請求権について説明します。

2 複数の受益者による意思決定の方法(概要)

複数の受益者が意思決定をする場合,原則として受益者全員の意見が一致することが必要になります。
これだと1人でも反対すると決定できないので,多数決で決めるという規定を設定しておくことも多いです。
多数決であれば,一部の受益者が反対していても意思決定を強行(可決)することができます。

3 受益者の権利行使が困難となる具体例

実際には,複数の受益者の間で対立が生じて,意思決定や権利行使が難しくなってしまう状況もよくあります。
特に,受益者の数が多いとか,受益者が頻繁に変動したような状況では,意見が統一せず,複数の意見に分かれる傾向が強いです。
具体例としては,ファンドとして,複数人で資産の運用するために信託を活用するようなケースで受益者が多く,また,受益者の変更の頻度も高い状態となります。

<受益者の権利行使が困難となる具体例>

あ 権利行使トラブル|基本

『い』の事情がある場合
→受益者の意向の統一が難しくなる
→権利行使が困難となることがある

い 典型的要因

ア 受益者の変動
イ 受益者が多数存在する

う 典型的背景事情

『ア〜ウ』の事情がある場合
→『い』に該当する傾向がある
ア 多数の受益者が存在するファンド
イ 資産流動化のための信託
ウ 共有不動産の信託受益権化
詳しくはこちら|実質的共有状態の維持|信託受益権化・資産管理会社の活用

4 受益権取得請求権

多数決では少数者の意向が反映されないことがあります。少数派の意向に反する内容の決定がなされることもあるのです。
そこで,少数派の受益者の保護として,受託者が受益権を買い取ることを請求することが認められています。

<受益権取得請求権>

あ 多数決による少数受益者の損害

複数の受益者が多数決によって意思決定をする
少数派の受益者が損害を被るおそれがある

い 受益権取得請求権

『あ』の少数受益者は,受託者に対して受益権取得請求ができる
公正な価格で受託者が受益権を取得する
※信託法103条1項,2項

5 受益者代理人の活用(概要)

受益者の権利行使をスムーズにするための制度の1つとして,受益者代理人があります。
受益者代理人については別に説明しています。
詳しくはこちら|受益者代理人|基本|活用目的・典型例・リスク・予防策

本記事では,複数の受益者の間の対立の具体例や,少数派の受益者の対抗手段としての受益権取得請求権について説明しました。
実際に複数の受益者が存在する信託の利用をお考えの方や,受益者の間の対立・トラブルに直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。