1 認知による扶養義務・請求権の発生
2 認知による扶養義務・請求権の発生(基本)
3 認知された子の扶養の請求の具体的方法(種類)
4 認知の遡及効と扶養に関する制限
5 認知後の養育費請求における遡及の判断(裁判例)
6 扶養請求権の消滅時効と相続の制限
7 扶養料の金額を決定する手続や算定方法
8 扶養請求の家裁の手続の種類(調停・審判)

1 認知による扶養義務・請求権の発生

婚外子を認知をすると,父と子の間に法的な親子関係が発生します。逆に,認知するまでは血縁上の親子関係があっても法的には親子ではない状態なのです。
詳しくはこちら|認知の効果|全体・相続|認知がない状態の扱い
認知によって法律上の親子関係が発生するので,扶養義務・請求権も発生します。
本記事では認知によって生じる扶養義務・請求権について説明します。

2 認知による扶養義務・請求権の発生(基本)

認知によって初めて父は扶養義務を負います。逆に認知するまでは法律上は扶養義務はないのです。
誕生から認知の時点までが扶養義務がない空白期間となってしまいます。そこで,扶養義務は誕生の時にさかのぼることになっています。結局,空白期間は埋められるということです。

<認知による扶養義務・請求権の発生(基本)>

あ 認知による扶養義務の発生

父が認知した場合
→父は(親権者でなくても)扶養義務を負う
生活保持義務としての養育費分担義務である
子には扶養請求権が生じることになる
いわゆる『子供の生活費』である
※民法877条1項
※仙台高裁昭和37年6月15日
※広島高裁昭和37年12月12日

い 扶養義務の内容

生活保持義務(高いレベルの扶養)とされる
詳しくはこちら|一般的な扶養義務(全体・具体的義務内容の判断基準)

3 認知された子の扶養の請求の具体的方法(種類)

扶養請求の具体的な状況やネーミングについてまとめます。

<認知された子の扶養の請求の具体的方法(種類)>

あ 子自身による請求

認知された子自身が父に対して扶養の請求をする方法
(母が子の法定代理人として請求することも含む)
扶養料請求と呼ぶ

い 母による請求

が子供の生活費をいったん負担する
この立て替え分母が父に請求する
養育費分担(義務・請求)と呼ぶ

4 認知の遡及効と扶養に関する制限

認知がなされた時点で初めて扶養(養育費)の請求ができることになります(前記)。そうすると,生まれた時から認知が完了した時の間は養育費をもらえない空白期間となってしまいます。これは不合理なので,認知は出生までさかのぼることになっています。つまり,生まれた時以降の養育費をまとめて請求できるのです。
なお,(認知とは関係ない)一般的な養育費の請求では,請求した時点までしかさかのぼらないことになる傾向が強いです。
認知の場合は,もともと認知された後に請求できるようになるという構造なので,一般的なルール(請求時までさかのぼる)ではなく,出生までさかのぼるというルールが適用されるのです。
ただし,出生から認知されるまでに長期間が経過しているケースでは,出生までさかのぼると非常に大きな金額となってしまいます。そのような場合は裁判所がさかのぼる期間を制限する(短く決める)こともあり得ます。

<認知の遡及効と扶養に関する制限>

あ 認知の遡及効

認知の効果は出生の時点までさかのぼる
※民法784条

い 認知した子供の養育費(扶養)の始期

子供が生まれた時にさかのぼって扶養の請求をすることができる

う 遡及効の制限

出生後,ある程度長い期間が経過した時に養育費を請求する調停・審判の申立がなされた場合
出生時にさかのぼると相当に大きい金額となることがある
→必ずしも出生時にさかのぼるとはいえない
※松本哲泓著『婚姻費用・養育費の算定』新日本法規出版2018年p14

え 養育費の始期の一般論(参考)

一般的な養育費の支払の始期は請求時とされる傾向がある
詳しくはこちら|養育費・婚姻費用分担金請求の支払の始期(いつまでさかのぼるか)

5 認知後の養育費請求における遡及の判断(裁判例)

認知の後に養育費を請求したケースで,裁判所がさかのぼる範囲を判断した実例を紹介します。
養育費の調停の申立は出生から1年後でした。これだけ見ると長いようにも思えます。しかし,認知審判の確定(認知の完了)を待っていて,その直後に養育費の調停を申し立てたのです。
このような事情から,裁判所は原則どおりに出生までさかのぼって養育費の請求を認めました。

<認知後の養育費請求における遡及の判断(裁判例)>

あ 認知と養育費の請求のタイミング

認知審判が確定した
その直後に養育費分担調停の申立がなされた
養育費分担調停の申立がなされた時点は,出生の約1年後であった

い 養育費の遡及の判断

認知の効力発生前には養育費分担の請求はできない
養育費分担の請求(調停申立)が出生から1年後でもやむを得ない
→認知の遡及効(民法784条)の規定に従い,出生時に遡って分担額を定める
※大阪高裁平成16年5月19日

6 扶養請求権の消滅時効と相続の制限

認知した子供の養育費(扶養)を長期間分をまとめて請求することがよくあります(前記)。この場合には,消滅時効にも気をつける必要があります。
また,仮にその子供が亡くなってしまった場合には,扶養請求権(未払分など)が相続人に承継されないこともあります。

<扶養請求権の消滅時効と相続の制限>

あ 扶養請求の消滅時効

消滅時効にかかるリスクがある
詳しくはこちら|過去の養育費の請求対象期間;消滅時効,支払の始期

い 扶養請求権の相続の制限

相続により承継されないことがある
詳しくはこちら|相続財産の範囲|一身専属権・慰謝料請求権・損害賠償×損益相殺・継続的保証

7 扶養料の金額を決定する手続や算定方法

扶養料の金額を決める,というプロセスについてまとめます。

<扶養料の金額を決定する手続や算定方法>

あ 金額決定方法|原則

父・母で協議して扶養料の金額を定める
※民法878条,879条

い 家裁の手続

協議で定められない場合
→家庭裁判所の手続で定める
※民法878条,879条

う 算定方法

養育費と同様の算定方法を用いる
詳しくはこちら|養育費・婚姻費用分担金の請求の基本(家裁の手続・簡易算定表)

8 扶養請求の家裁の手続の種類(調停・審判)

扶養請求に関する家裁の手続についてまとめます。

<扶養請求の家裁の手続の種類(調停・審判)>

あ 手続の種類

扶養請求or養育費分担請求の手続
→家事調停・審判

い 手続の分類

審判事項のうち別表第2事件に分類されている
詳しくはこちら|家事事件(案件)の種類の分類(別表第1/2事件・一般/特殊調停)
調停or審判を申し立てることができる
詳しくはこちら|家事事件の種類と利用できる手続の種類の対応と審理の所要期間の目安

本記事では,婚外子の認知によって生じる扶養義務(請求権)について説明しました。
実際には,個別的な事情によって最適な手続の種類やタイミングは異なります。
実際に生まれた子供の認知や親子関係に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。