1 真実ではない認知|撤回できる×不合理
2 真実ではない認知|撤回できない×不合理
3 真実ではない認知→撤回できる|最高裁判例
4 嫡出否認×出訴期間制限|最高裁判例|比較

1 真実ではない認知|撤回できる×不合理

『真実ではない認知』がなされているケースもあります。
そして『無効確認』=実質的な『認知の撤回』が求められることがあります。
本記事では『認知の撤回』について説明します。
以前は見解が分かれていました。
そして,平成26年の最高裁判例で判断が示されました(後述)。
まずは両方の見解を紹介します。
最初に『認知の撤回を認めない』見解の理由をまとめます。

<真実ではない認知|撤回できる×不合理>

あ 見解|概要

『撤回できる』と仮定すると次のような不合理がある
→撤回を認めない見解につながる

い 不正行為者への救済を認める

不正な届出をした者に『解消・救済』を認めるべきではない

う 嫡出否認の期間制限とのアンバランス

ア 嫡出否認=比較 嫡出否認の手続には申立期間制限がある
→『血縁関係がないことを後から知った』場合でも救済されない(後記)
イ 認知の撤回 認知無効確認の手続には申立期間制限がない
→『血縁関係がないことを知っていて認知した』場合にも救済される
ウ アンバランス 『ア・イ』の2つはバランスとして不合理である

2 真実ではない認知|撤回できない×不合理

認知の撤回を認める見解の理由をまとめます。

<真実ではない認知|撤回できない×不合理>

あ 見解|概要

『撤回できない』と仮定すると次のような不合理がある
→撤回を認める見解につながる

い 子供に不正を押し付ける

『虚偽の父子関係』が撤回できないことになる
→『子供』も『不正を受け入れざるを得ない』状態となってしまう

う 父を知る権利の侵害

『父母を知りその父母によって養育される権利』が侵害されることになる
※児童の権利に関する条約7条1文
※『月報司法書士14年7月号』日本司法書士会連合会p63〜

3 真実ではない認知→撤回できる|最高裁判例

平成26年の最高裁で『認知の撤回』に関する判断が示されました。
判断内容をまとめます。

<真実ではない認知→撤回できる|最高裁判例>

ア 血縁上の父子関係がないにも関わらずされた認知は無効イ 無効主張について,権利濫用などにより主張が制限されることはあり得るウ 民法785条によって,一律に制限される,ということではないエ 認知者が血縁上の父子関係がないことを知りながら認知した場合でも同様オ 認知者は民法786条の『利害関係人』として無効主張ができる ※平成26年1月14日最高裁
※平成26年3月28日最高裁

結論としては『認知の撤回は可能』ということです。
内容が虚偽なのですから,撤回できて当然,と思えます。
しかし,似ているけど違う結論となるものもあります。
次に説明します。

4 嫡出否認×出訴期間制限|最高裁判例|比較

『嫡出否認』についても家裁の手続があります。
親子関係を否定・解消するという意味では認知の撤回と同様です。
しかし『期間制限』の有無という点で違いがあります。
これに関する最高裁の判例を紹介します。

<嫡出否認×出訴期間制限|最高裁判例>

あ 出訴期間制限

嫡出否認には1年の出訴制限期間がある
※民法777条

い 虚偽の『嫡出子』×出訴期間制限

『嫡出子』ではないことが明らかであっても
→出訴期間制限は適用される
※最高裁平成26年7月17日
詳しくはこちら|嫡出否認・申立期間制限|DNA鑑定との関係・見解の対立・最高裁判例

認知の撤回については条文上『期間制限』がありません。
似ているけど大きな違いがあるのです。