【嫡出推定を『受けない』×出生届|救済措置・デキ婚普及・最高裁コメント】

1 推定を受けない嫡出子×出生届|原則論
2 推定を受けない嫡出子×出生届|救済措置
3 推定を受けない嫡出子|非嫡出子→認知
4 推定を受けない嫡出子=デキ婚普及|最高裁コメント

1 推定を受けない嫡出子×出生届|原則論

『嫡出推定』の要件の1つは『婚姻から200日以降の出生』です。
これは『婚姻後に性交渉を持つ』ことを前提とした基準です。
現実には,婚姻から200日以内に子供が誕生することもあります。
俗に言う『できちゃった結婚=デキ婚』が典型例です。
この場合,法的扱いで不都合が生じます。

<推定を受けない嫡出子×出生届|原則論>

あ 事情

婚姻後200日以内に子が誕生した
血縁上の『父』は『夫』である
=現実に『夫・妻』の子である

い 嫡出推定|形式的

『嫡出推定』に該当しない
『推定を受けない嫡出子』と呼ばれる
※民法772条
→出生届の『父の欄』に『夫』を記入できない
=『真実の父』は『認知』をする必要があるはず

この不都合については,回避・救済の解釈論があります。
次に説明します。

2 推定を受けない嫡出子×出生届|救済措置

推定を受けない嫡出子についての救済措置をまとめます。

<推定を受けない嫡出子×出生届|救済措置>

あ 救済措置|法的扱い

『嫡出子』として認める
※大連判昭和15年1月23日

い 救済措置|嫡出子出生届

『夫婦の嫡出子』として出生届を提出できる
役所は『内縁関係先行』などの審査は行わない
※戸籍先例|昭和15年4月8日民甲432号
※戸籍先例|昭和30年7月15日民甲1487号

う 救済措置|非嫡出子出生届(※1)

母が『非嫡出子』として出生届を提出することもできる
=『父』は空欄としておく

昭和15年から『デキ婚』の救済措置が設定されていたのです。

3 推定を受けない嫡出子|非嫡出子→認知

推定を受けない嫡出子について『非嫡出子』の出生届も認められています(前述)。
この場合『父』は空欄となります。
後から『父』の氏名を戸籍に追加する方法もあります。

<推定を受けない嫡出子|非嫡出子→認知>

あ 認知届提出

『非嫡出子』として出生届を提出した場合(上記※1)
→その後『父』(『夫』)が認知届を提出できる

い 役所の扱い

『認知届』としては受理しない
『嫡出子の記載に訂正する申出』とみなす
→職権により『嫡出子』の記載に訂正する
※昭和34年8月28日民事甲1827号民事局長通達
※加藤令造ほか『新版戸籍法逐条解説 全訂版』日本加除出版p156

4 推定を受けない嫡出子=デキ婚普及|最高裁コメント

最高裁は『デキ婚が普及している』ことをコメントしています。

<推定を受けない嫡出子=デキ婚普及|最高裁コメント>

あ 社会の現象としての『デキ婚』普及

『婚姻届を提出するかどうかの判断が第1子の妊娠と深く結び付いているとみられる』

い 『デキ婚』普及の理由

『全体として嫡出でない子とすることを避けようとする傾向がある』
『法律婚を尊重する意識は幅広く浸透しているとみられる』
※最高裁平成25年9月4日

現在は,社会の家族観の変化が大きく進んでいます。
その一環と言えます。

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