1 一般的扶養義務の規定
2 親族の範囲(前提)
3 相対的扶養義務の判断基準
4 扶養義務の内容の具体化の方法・手続
5 扶養義務の発生要件と扶養の程度・方法の統合
6 扶養義務の程度・割合・順序の判断要素
7 複数の扶養義務者間の求償(概要)

1 一般的扶養義務の規定

民法には,扶養に関するいくつかの規定があります。
詳しくはこちら|扶養に関する民法の規定の種類と内容(程度)のまとめ
本記事では,扶養の中で最も一般的な規定についてい説明します。
まずは一般的な扶養義務の規定をまとめます。

<一般的扶養義務の規定>

あ 絶対的扶養義務

直系血族・兄弟姉妹について
→相互に扶養をする義務がある
※民法877条1項

い 相対的扶養義務

『あ』以外の3親等内の親族(後記※1)について
特別の事情がある場合
→家裁が扶養義務を負わせることができる(後記※2)
※民法877条2項

2 親族の範囲(前提)

『親族』の定義についてまとめておきます。

<親族の範囲(前提;※1)>

次の者を『親族』とする
ア 6親等内の血族
イ 配偶者
ウ 3親等内の姻族
※民法725条

3 相対的扶養義務の判断基準

3親等内の親族はストレートに扶養義務が存在するわけではありません。家庭裁判所が個別的に義務の有無を判断します(前記)。この判断基準をまとめます。

<相対的扶養義務の判断基準(※2)>

家庭裁判所が認めるのは,主に次の事情がある場合に限定される
ア 扶養義務負担が相当とされる程度の経済的対価を得ている
イ 高度の道義的恩恵を得ている
ウ 同居者である
※於保不二雄ほか『新版注釈民法(25)』有斐閣p771

4 扶養義務の内容の具体化の方法・手続

民法上は扶養義務の具体的な内容までを定めているわけではありません。現実には協議で決めるか,家裁が決める手続を利用することになります。

<扶養義務の内容の具体化の方法・手続>

あ 協議

扶養の『程度』や『方法』について
→当事者間の協議で定める
※民法879条

い 家裁の手続

扶養料請求は(審判事項のうち)別表第2事件に分類される
詳しくはこちら|家事事件(案件)の種類の分類(別表第1/2事件・一般/特殊調停)
『あ』の協議が成立しない場合
→家庭裁判所の調停or審判により定める

う 調停前置の適用

調停前置の適用はない
しかし実務上は先に調停を行うことが推奨される
詳しくはこちら|一般的付調停|事実上の調停前置・必要的付調停との違い

5 扶養義務の発生要件と扶養の程度・方法の統合

家裁が決める内容は,扶養の程度・方法(金額など)だけではなく,扶養義務があるかどうかも含みます。現在では当たり前のように思えますが,旧民法では扶養義務発生の要件だけが独立して規定されていました
要するに現在では,扶養を請求する側と請求される側の両方の事情を広く含めて家裁の大きな裁量で判断することになっているのです。

<扶養義務の発生要件と扶養の程度・方法の統合>

民法879条は(旧民法と異なり)
扶養義務の発生要件,扶養の程度,その方法を統合した
この3つを相関的に家庭裁判所が定める趣旨である
扶養権利者が親子であるか兄弟であるか,社会的地位が高いかどうか,資産がどうかなどによって相対的に判断する
※於保不二雄ほか『新版注釈民法(25)』有斐閣p532

6 扶養義務の程度・割合・順序の判断要素

家裁が扶養義務の具体的内容を決める時の判断要素をまとめます。

<扶養義務の程度・割合・順序の判断要素>

ア 扶養権利者の需要(困窮度)
イ 扶養義務者の資力
ウ 扶養権利者の落ち度
エ 扶養に関する合意
(当事者の意思)
オ 両者の関係の強弱,濃淡
カ 当該地域の扶養慣行
キ 社会保障制度の利用状況や利用可能性
※於保不二雄ほか『新版注釈民法(25)』有斐閣p796

7 複数の扶養義務者間の求償(概要)

扶養義務者が複数存在することは多いです。この場合に,最初から負担の割合を決めてあることが理想です。
しかし,いったん1人が全部を負担して,後から他の扶養義務者に立て替えた中の一部を請求(求償)することもよくあります。この場合の扱いについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|複数の扶養義務者間の立替扶養料の求償

本記事では,一般的な扶養義務の基本的内容を説明しました。
実際には,個別的事情や主張・立証のやり方次第で結論が違ってきます。
実際に扶養(扶養料請求)に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。