1 内縁関係には民法の『婚姻』の規定がほとんど適用される
2 内縁vs法律婚|婚姻費用分担金・現実的な違い
3 内縁関係に適用される公的な制度
4 内縁関係に適用されない規定|民事的・公的に不利なことがある
5 『内縁』でも『遺産承継』ができる制度|特別縁故者の財産分与
6 墓所・遺骨承継・葬儀を行う→内縁者が優先的であることが多い|祭祀主宰者
7 『法律婚』の優遇→『他の家族形態』の差別→国家の不当な介入(違憲)
8 『重婚的内縁』は『婚姻の規定』の『一部』の適用にとどめる
9 『内縁』ではない,一般的な『交際』の解消の問題

本記事では『内縁に適用されるルール』について説明します。
『内縁』として認められるための事情については別に説明しています。
詳しくはこちら|内縁|基本|婚姻に準じた扱い・内縁認定基準|パートナーシップ関係

1 内縁関係には民法の『婚姻』の規定がほとんど適用される

内縁関係として認められた場合『婚姻関係に準ずる関係』として扱われます。
※最高裁昭和33年4月11日
結果的に,婚姻に関する規定が基本的に適用(準用)されることになります。
ただし,『婚姻届』,『戸籍』と直接関連する規定は適用されません。

<内縁に適用される民法上の規定>

あ 同居義務
い 貞操義務

違反については慰謝料請求権

う 相互扶助義務

婚姻費用分担義務など
『解消時』に法律婚との違いが具体化する(※2)

え 日常家事債務の連帯責任
お 内縁解消に伴う財産分与

詳しくはこちら|内縁解消時の清算;まとめ

2 内縁vs法律婚|婚姻費用分担金・現実的な違い

内縁と法律婚で『婚姻費用分担金』の扱いの違いを整理します。

<内縁vs法律婚|婚姻費用分担金|現実的な違い(上記※2)>

あ 内縁vs法律婚|婚姻費用分担金|理論

内縁関係・法律婚とで違いはない

い 法律婚×婚姻費用分担金|現実

婚姻解消までに長期間を要することが多い
→婚姻費用分担金の支払が長期間継続する
いわゆる『婚費地獄』と呼ばれる状態である
離婚時の清算金額が跳ね上がることにつながる
詳しくはこちら|結婚制度の不合理性|婚費地獄・結婚債権・苗字|裁判所は婚外子促進方針

う 内縁関係×婚姻費用分担金|現実

当事者が別居すれば内縁解消となる
→婚姻費用分担金の支払は容易に断ち切られる
いわゆる『婚費地獄』は発現しない

3 内縁関係に適用される公的な制度

公的な制度についても,一定の範囲で,内縁関係を配偶者と同様に扱う規定があります。
例えば,労働基準法に基づく遺族補償については,内縁でも認められることがあります。
いわば公的機関も内縁関係を公認する傾向にあります。

<内縁関係を保護する公的制度の規定>

ア 厚生年金保険法3条2項
イ 国家公務員等共済組合法2条
ウ 国民年金法5条7項
エ 労働基準法79条
オ 船員法93条
カ 健康保険法1条

厚生年金・国民年金の制度の中に『遺族年金』の制度があります。
遺族年金の受給における内縁者の扱いについては判例の見解に揺れがあります。
これについては別に説明しています。
(別記事『遺族年金・内縁者の受給』;リンクは末尾に表示)

4 内縁関係に適用されない規定|民事的・公的に不利なことがある

法律婚には適用されるが内縁関係には適用されない規定,も多くあります。
これは,法的に大きな問題を孕みます。
先に制度をまとめます

<内縁に適用されない規定・制度>

あ 民事上の規定

ア 相続権(※1)
イ 氏(苗字)の変更
詳しくはこちら|夫婦同姓と離婚に伴う復氏・俗称届の基本
ウ 親族関係の発生
エ 子の嫡出性
詳しくはこちら|非嫡出子の相続分を半分とする規定→法律婚優遇・子供差別は不合理→違憲・無効
オ 成年擬制
カ 夫婦間の契約取消権
この規定自体が死文化している
→実質的には内縁・法律婚で違いはない
詳しくはこちら|夫婦間の契約取消権|破綻・財産分与・内縁との関係|解除条件付による解消

い 刑事上の規定

・脅迫罪の保護する範囲;『親族』に対する害悪の告知まで含む
《例》
『お前の妻を殺す』→(夫への)脅迫罪が成立する
『お前の内縁の妻を殺す』→(夫への)脅迫罪は成立しない
※刑法222条2項;罪刑法定主義からの厳格な解釈による

う 公的制度

・所得税における扶養控除
所得税法基本通達2−46

5 『内縁』でも『遺産承継』ができる制度|特別縁故者の財産分与

『内縁』には『相続権』は適用されません。
しかし,一定の範囲で限定的ですが認められることもあります(前記※1)。
特別縁故者への相続財産分与という制度です。
※民法958条の3
詳しくはこちら|故人と内縁など親密であった者は遺産を承継できることがある;特別縁故者

6 墓所・遺骨承継・葬儀を行う→内縁者が優先的であることが多い|祭祀主宰者

内縁の一方が亡くなった時に『相続=財産承継』以外でトラブルが生じることがあります。
墓所や遺骨の引き取りや葬儀の方法・宗派の対立といったものです。
このような問題は『祭祀主宰者の指定』で解決します。
実際には『内縁の妻』が優先的に扱われることが多いです。
詳しくはこちら|祭祀供養物の承継・祭祀主宰者の指定|葬儀の方法・遺骨・墓所引取トラブル

7 『法律婚』の優遇→『他の家族形態』の差別→国家の不当な介入(違憲)

(1)法律婚と内縁の不合理な差別問題

以上の内縁関係に適用されない規定不当な差別とも考えられます。
要するに『法律婚の優遇』の別の側面ということです。

<『法律婚の優遇』の罪悪>

あ 結婚しない者を不利に扱う
い これらの制度の適用を受けるために『結婚をせざるを得ない』

要するに『結婚を強要された』ということになります。
これは,『結婚する/しないの判断』を『両性の合意』だけに委ねた憲法に反すると言えます。
※日本国憲法24条
『夫婦別姓』を認めないことを理由に国家賠償請求訴訟がなされた事例もあります。
詳しくはこちら|夫婦同姓の制度の合憲性(平成27年最高裁判例)

(2)認知のタイミング選択への国家の介入

『父子関係』は間違いないけれど,敢えて認知しないというケースはあります。
詳しくはこちら|死後の認知|全体|認知を回避or遅らせる背景事情
もちろん無責任などではなく,が納得の上であり,ごく自然に生活費を渡すという想定です。

しかし,この場合『親子関係がない→扶養義務がない』として,贈与税の対象とされるリスクがあります。
詳しくはこちら|扶養料・養育費への贈与税課税|基本|一括払い・認知未了

このような制度,運用により認知が事実上強制されると言えます。
民法上,遺言認知,死後認知を制度として用意されているのに,片手落ちです。
国民が個人として選択,設計する家族のあり方に国家が不当に介入するものだと思われます。

8 『重婚的内縁』は『婚姻の規定』の『一部』の適用にとどめる

<事例>

AとBは結婚していますが,長年別居して連絡も取らないような状態です。
AとCが事実上夫婦のように暮らしています。
AとCは内縁と言えるような状態です。

一般的に,内縁関係として認められた場合,婚姻関係に準ずる関係として扱われます(前述)。
一方,重婚的である場合は,ちょっと解釈が異なります。
法秩序に反するので保護しないという方向性になります。
一方で,まったく保護しない,という解釈も不合理です。
そこで,裁判例においては次のように解釈されています。

<重婚的内縁関係における適用関係>

あ 関係維持方向

適用されない
《例》
・同居義務
・離婚原因
つまり,一方の意思のみにより解消が認められる,という意味です。

い 関係解消方向

類推適用される
《例》
・財産分与
※高松高裁松江支部昭和40年11月15日

9 『内縁』ではない,一般的な『交際』の解消の問題

交際解消に関する一般的な法律問題は別に説明しています。
詳しくはこちら|交際破棄と法的責任;妊娠,出産,慰謝料,過去の生活費の分担

関連コンテンツ|結婚制度の不合理性|婚費地獄・結婚債権・苗字・結婚宗教|裁判所は婚外子促進方針