1 夫婦(法律婚・内縁)での医療費・出産費用の分担義務
2 夫婦での分担義務のある医療費
3 夫婦での分担義務がある出産費用の内容の例
4 夫婦での分担義務の有無が分かれる医療費
5 医療費の分担義務の内縁関係への準用
6 内縁解消後の出産と婚姻費用分担義務

1 夫婦(法律婚・内縁)での医療費・出産費用の分担義務

夫婦間では,日々の生活費を分担する義務があります。
詳しくはこちら|別居中は夫(妻)に対して生活費の送金を請求できる(婚姻費用分担金)
これは,内縁関係(事実婚・事実上の夫婦)にも適用されます。
詳しくはこちら|内縁関係に適用される制度と適用されない制度(法律婚の優遇)
この婚姻費用分担義務は,日常的な生活費だけではなく,病気や怪我による医療費などの臨時の出費も対象に含みます。
本記事では,医療費や出産に関する費用についての夫婦での分担義務について説明します。

2 夫婦での分担義務のある医療費

まず,医療費のうち,病気や怪我による治療については,婚姻費用に含まれます。つまり,夫婦で分担すべきものであるといえます。
次に,妊娠や出産に関するものも,夫婦の営みによるものなので,同様に夫婦での分担義務があります。

<夫婦での分担義務のある医療費>

あ 病気・怪我に基づく費用

ア 治療費
イ 入院手術費
ウ 通院交通費
エ 必要な介護費
オ 療養費

い 妊娠・出産に関する費用

出産そのものや出産後に要する費用が含まれる(後記※1)
※曽田多賀ほか編著『内縁・事実婚をめぐる法律実務』新日本法規出版2013年p66

3 夫婦での分担義務がある出産費用の内容の例

妊娠や出産の費用は夫婦で分担する義務があります(前記)。
具体的な出費の内容としては,出産後の乳児や母親の健康維持(管理)に関するものまでが含まれます。

<夫婦での分担義務がある出産費用の内容の例(※1)>

あ 助産料
い 子供の沐浴料
う 分娩費

診察費などを含む

え 乳児の医療費
お 乳児の衣類の費用
か 栄養薬代

例=乳児の牛乳・母の薬の費用
※大阪地裁昭和29年8月9日;内縁について

4 夫婦での分担義務の有無が分かれる医療費

婚姻費用として夫婦で分担する義務があるかどうかが一律に判断できない医療費もあります。
美容整形や歯科矯正などの健康の維持に必須ではないような施術です。
このような費用は,夫婦間で承諾があった場合にだけ分担義務の対象となります。

<夫婦での分担義務の有無が分かれる医療費>

あ 婚姻費用に該当するとは限らない医療費

施術を受けなくても生命身体に影響がないものについて
医療機関への支払い(費用)は婚姻費用に該当するとは限らない

い 施術の具体例

ア 美容整形
イ 歯科矯正(審美歯科)

う 婚姻費用該当性の判断基準

施術を受けることについて
事前に夫婦間で合意や承諾があったかどうかで判断する

事前の承諾・同意の有無 婚姻費用の扱い
夫婦間の承諾あり 婚姻費用分担義務あり
承諾なし(独断) 婚姻費用分担義務なし

※曽田多賀ほか編著『内縁・事実婚をめぐる法律実務』新日本法規出版2013年p67

5 医療費の分担義務の内縁関係への準用

婚姻費用分担義務は一般的に,内縁関係にも準用(適用)されます。
しかし,内縁関係では内縁解消までしか適用されません。

<医療費の分担義務の内縁関係への準用>

あ 内縁への婚姻費用分担義務の準用(前提)

民法760条の規定(婚姻費用分担義務)は,内縁にも準用される
内縁関係が破棄(解消)されるまでの出費が対象となる
『別居まで』ではなく『内縁解消』までである
※最高裁昭和33年4月11日

い 医療費についての婚姻費用分担義務について

内縁解消前(別居中)に生じた医療費について
婚姻から生じる費用に準じる
→内縁の相手方は負担すべきである
※最高裁昭和33年4月11日
※太田武男著『内縁の研究』有斐閣1965年p124
※曽田多賀ほか編著『内縁・事実婚をめぐる法律実務』新日本法規出版2013年p66

う 出産費用の特別扱い

妊娠・出産に関する費用について
内縁解消後の出費も分担義務の対象となる(後記※2)

6 内縁解消後の出産と婚姻費用分担義務

法律婚における離婚と違って,内縁の解消は,一方的に実現(解消)することが認められます。
これに関連して,どの時点までの費用を分担するのかということで意見が対立するトラブルがよくあります。
当然ではありますが,内縁の2人の間の子供を妊娠したケースでは,内縁解消後の出産であっても,出産に関連する出費の全体について分担義務が認められます。

<内縁解消後の出産と婚姻費用分担義務(※2)>

あ 事案

内縁関係が継続(同居)している時期において
内縁の妻が妊娠(懐胎)した
内縁関係は解消された(別居するに至った)
内縁の妻が子を出産した
内縁の妻は出産の前後にいろいろな出費をした(前記※1)

い 婚姻費用分担義務の有無

出産に関する費用は婚姻費用に準じる
→(事実上の)夫婦の各能力に応じて分担する義務がある

う 内縁と出産の関係性

出産が内縁関係解消後であっても
内縁の妻の負担は,出産自体or出産と相当関係を有する費用である
かつ,内縁関係の結果として発生した費用である
→婚姻費用に準じて(事実上の)夫婦で分担する義務がある
※大阪地裁昭和29年8月9日
※二宮周平著『事実婚 業書民法総合判例研究』一粒社2002年p72

本記事では,医療費や出産費用についての夫婦間(法律婚・内縁)での分担義務について説明しました。
実際には,細かい出費の内容や経緯によっては特殊な扱いとなることもあります。
実際に医療費や妊娠・出産に関する費用を夫婦(内縁含む)で分担する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。