1 内縁解消時の清算は離婚と同様
2 内縁解消時の財産分与は類推適用され,家事調停の利用もできる
3 内縁解消時の『慰謝料』は『家事』扱いはされず『地裁』で扱う
4 内縁が死別となった場合,財産分与の類推適用はされない
4 内縁解消後に一方の死亡→財産分与義務の承継の有無が問題となる
5 内縁関係解消の慰謝料相場は100〜300万円
6 子供が『認知』されていれば,内縁解消後『養育費』が生じる
1 内縁解消時の清算は離婚と同様
離婚と同じような清算内容となります。
<内縁解消時の清算内容>
あ 財産分与
実質的な内縁関係の2人の財産があれば,2人で分ける必要があります。
い 慰謝料
内縁解消について,いずれか一方に責任がある場合,精神的苦痛に対する損害賠償として慰謝料が発生します。
う 養育費
2人の間に子供が誕生していれば,引き取った方は,相手方に子供の扶養費用として養育費を請求できます。
2 内縁解消時の財産分与は類推適用され,家事調停の利用もできる
内縁解消の際の2人の財産の清算については,「財産分与」が類推適用されます。
内縁関係の両者の協力により築いた財産があれば,どちらの名義でも2人で分ける必要があります。
(1)内縁解消時には財産分与の規定が適用される
一般的に,内縁関係については,婚姻の規定が類推適用されます。
特に,純粋に内縁関係者の内部の問題にとどまる財産分与については,裁判例上,類推適用が認められています。
※東京家裁昭和31年7月25日
※広島高裁昭和38年6月19日
※広島高裁松江支部昭和40年11月15日
なお,重婚関係にあったケースにおいてですら,法的保護を躊躇しつつも,財産分与の類推適用が認められています。
※広島高裁松江支部昭和40年11月15日
(2)内縁解消時の財産分与について家事調停が利用できる
内縁についても法律婚と同様に扱う対象は手続も含まれます。
離婚時の財産分与の調停,審判について,内縁解消の際にも利用できます。
※東京高裁昭和54年4月24日
詳しくはこちら|家事事件(案件)の種類の分類(別表第1/2事件・一般/特殊調停)
3 内縁解消時の『慰謝料』は『家事』扱いはされず『地裁』で扱う
内縁解消の経緯によっては,慰謝料請求を行うことも多いです。
離婚に伴う慰謝料請求については,家事事件として家庭裁判所で扱います。
この点,内縁解消に伴う慰謝料請求については通常の民事訴訟として扱われるのが通常です。
この場合,地方裁判所(または簡易裁判所)の管轄となります。
4 内縁が死別となった場合,財産分与の類推適用はされない
<事例>
AとBが内縁関係にありました。
Aが死亡しました。
いわば死別です。
この事例において,Bが財産分与を受ける,Aの相続人に財産が承継される,という2つの発想があります。
法解釈の結論としては,Aの相続人に承継されます。
内縁関係については,原則的に婚姻と同じように扱う方向性があります。
いわゆる死別について考えると,まず,婚姻の場合は,配偶者は最大の相続権者です(民法896条〜)。
内縁の場合は,さすがに相続については適用,類推適用などはできないとされています。
詳しくはこちら|内縁関係に適用される制度と適用されない制度(法律婚の優遇)
では,死別の場合に財産分与を類推適用できないか,ということについて最高裁の判断があります。
※最高裁平成12年3月10日
結論としては,財産分与の類推適用は否定するということになっています。
理由としては死亡という明確な出来事については相続が適用される,ということに強い結びつきがある,という考えです。
財産分与は異質であると指摘しています。
結果的に,内縁者は,原則的に財産を承継しない,ということです。
4 内縁解消後に一方の死亡→財産分与義務の承継の有無が問題となる
<事例>
AとBが内縁関係にありました。
AとBは内縁を解消しました。
Aが死亡しました。
この事例において「財産分与」をどうするか,について問題になります。
複数の解釈が考えられます。
別に説明しています。
ご参照ください。
別項目;財産分与義務;相続による承継の有無
5 内縁関係解消の慰謝料相場は100〜300万円
内縁関係にあった男女が別れる時の慰謝料の問題について説明します。
(1)慰謝料の法的構成
内縁解消の経緯・理由によっては慰謝料が発生します。
厳密な理論としては,次の2つがあります。
<内縁破棄の法的構成>
あ 婚姻の約束を破棄(婚約破棄)として(同様に)考える
債務不履行の一種となります。
い 離婚と同様に考える
不法行為の一種となります。
いずれにしても,合理的な理由のない,一方的なものであれば,損害賠償請求権が発生します。
債務不履行または不法行為として捉えることになります。
※民法415条,709条
損害の内容としては,精神的苦痛に伴う慰謝料請求が主なものとなりましょう。
※民法710条
他にも個別的な損害が生じていれば,これも損害賠償請求の内容となります。
このような考え方は,離婚の場合と同じです。
(2)慰謝料の相場
平均的な慰謝料額は100万~300万円です。
個別的事情で大きく異なることもあります。
慰謝料が1000万円と認められた裁判例もあります。
※東京地裁平成3年7月18日
しかしこれは特殊な場合です。一般的なものとは言えません。
平均的には,離婚の場合より若干低め,という程度です。
不貞行為が原因で別れるなど,他にも関与していた人への慰謝料請求もあり得ます。
典型例は,内縁関係を知った上で不貞行為に及んだ不貞相手への慰謝料請求です。
6 子供が『認知』されていれば,内縁解消後『養育費』が生じる
内縁の関係を終わらせ,母が子を引き取った場合における養育費について説明します。
最初から父親が認知していれば特に問題はありません。
離婚の時と同じように養育費の請求が可能です。
仮に認知されていない場合は,法的には父と子の間の親子関係は,ないものとして扱われます。
さらに,父親が認知に応じない場合は,最終的には,訴訟において強制的に認知を行うということも可能です。
※強制認知;民法787条
詳しくはこちら|強制認知|家裁の調停・訴訟|協力しない『父』への認知請求
いずれにしても,父と子の間に親子関係が認められれば,子供を引き取った母親から父親に養育費の請求ができます。
金額の相場については,一般の夫婦の場合と同様です。
詳しくはこちら|養育費・婚姻費用分担金の金額算定の基本(簡易算定表と具体例)
本記事では,内縁の解消の際の清算の内容について説明しました。
実際には,個別的事情や主張・立証のやり方次第で結論が違ってきます。
実際に内縁の解消に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。