1 国際結婚は『男女それぞれの国の法律のルール』が適用される|実質的要件
2 『重婚』(一夫多妻)は,『男女両方の国』でOKであることが必要
3 『日本では妻に拘束されるけど海外では結婚できる』俗説は誤り
4 違法な『重婚』をしてしまった場合→無効or取消+重婚罪
5 内縁は『重婚の禁止』の対象外だが,慰謝料は別

1 国際結婚は『男女それぞれの国の法律のルール』が適用される|実質的要件

(1)国際結婚では『実質的要件』が2種類登場する

結婚(婚姻)については,いくつかの要件・ルールがあります。
日本人同士の結婚については,民法の規定が適用されます。
特に問題は生じません。
しかし,日本人と外国人との結婚(国際結婚)の場合は,この点が複雑になります。
2つの国によって,『要件』が異なる,ということが生じるのです。
ここでは形式的・手続的なルールは除外して,実質的な要件だけについて説明します。

<婚姻の実質的要件の規定の例>

あ 婚姻年齢
い 再婚禁止期間

詳しくはこちら|女性は6か月の『再婚禁止期間』がある

う 近親婚の禁止
え 重婚の禁止(民法732条)

国によっては,一夫多妻が認められていることもあります。

(2)国際結婚の実質的要件は『分配的適用』が原則

国際結婚での『実質的要件』については,男女それぞれの国の法律をクリアする必要があります(法の適用に関する通則法24条1項)。
なお,アメリカ(USA)のような合衆国の場合は『衆』の法律,ということになります(法の適用に関する通則法38条3項)。
なお,例外的に『双方的要件』については,累積適用がされることになります(後記『2』)。

<国際結婚での実質的要件の扱い>

あ 原則

分配的適用

い 例外

『双方的要件』の場合は『累積適用』となる

2 『重婚』(一夫多妻)は,『男女両方の国』でOKであることが必要

『重婚の禁止』は,『婚姻の実質的要件』の1つです。
国際結婚の場合は,どのようなルールの扱いになるのか,について説明します。

<事例設定|国際結婚と一夫多妻>

男性Bの国籍=A国
A国は一夫多妻が認められている(例;アラブ首長国連邦)
男性Bは既に妻(第1夫人)がいる
女性Cの国籍=日本

(1)分配的適用だすれば『適法』となる

男性B,女性Cそれぞれについて,適法性を考えます。
・男性にとっては,『第2夫人との婚姻』→A国では適法
・女性にとっては,『唯一の夫となる男性との婚姻』→日本では適法
このように,それぞれにとって『適法』ということになります。

(2)『重婚の禁止』(一夫多妻)は『双方的要件』→男女両方の国で適法である必要がある

実は『重婚の禁止』という婚姻の要件は,特殊な性格があると位置付けられています。
男女それぞれの国の法律で考えると,整合せず不合理である,ということです。
そこで,『分配的適用』ではなく『累積適用』をする扱いとなります。
要するに,男女それぞれの国で『重婚の禁止に抵触しない』ことが必要,ということです。

3 『日本では妻に拘束されるけど海外では結婚できる』俗説は誤り

結局,『重婚が禁止される国の国籍』である者は,国内・国外のいずれでも『重婚』はできない,ということです。
この点,次のような俗説を聞くことも有りますので,注意が必要です。

<NG(重婚成立)の例>

ア 日本人男性が,日本人妻がいるのに,別の『A国籍の女性』と婚姻する
イ 日本人男性が,A国籍の妻がいるのに,別の『B国籍の女性』と結婚する

4 違法な『重婚』をしてしまった場合→無効or取消+重婚罪

(1)違法な『重婚』は無効or取消で効力がなくなる

手続上,『海外での婚姻』についてのチェックシステムは万全ではありません。
そこで,『本来禁止される重婚の婚姻届』→役所のチェックで止められない→戸籍に記載されてしまう,ということが生じる可能性があります。
しかし,理論的に違法であれば,この『婚姻』が肯定されるわけはありません。
家庭裁判所における『婚姻の取消』または『婚姻無効』という手続によって,戸籍上の『婚姻』も削除(訂正)されることになります(民法744条,新潟地裁昭和62年9月2日)。

(2)違法な『重婚』は『重婚罪』という犯罪になる

日本の刑法には,『重婚罪』という罪があります(刑法184条)。
一種の『セクシャル』なカテゴリとして,強姦罪と同じ『章』に規定されています。

<重婚罪の規定>

あ 構成要件

配偶者のある者が重ねて婚姻をした
その重婚の『相手方』も含まれる

い 法定刑

懲役2年以下

通常は,『重婚』しようとしても,婚姻届の処理の段階でチェックされ,止められます。
そのため,あまり登場(適用)されることはありません。
しかし,前述のとおり,国際結婚の場合は,『重婚』の届出が受理・処理されてしまう可能性があるのです。

5 内縁は『重婚の禁止』の対象外だが,慰謝料は別

近年では,『婚姻制度』の不合理性・時代との齟齬が表面化してきています。
そこで,『子供・家族を持つ手段』として,結婚が唯一のものではない,という考え方が普及しています。
詳しくはこちら|婚外子として子供を持つ家族(事実婚・内縁など)の普及と社会の変化
『婚姻届を出さないけれど,現実には夫婦同然』という状態,つまり『内縁関係』というものです。
内縁については,基本的に法律的な結婚(法律婚)と同様の扱いがなされています。
詳しくはこちら|内縁関係に適用される制度と適用されない制度(法律婚の優遇)
しかし,『重婚罪』については,『内縁』は除外されています。
刑法,つまり犯罪の規定については,特に強い人権制約なので,拡大解釈をしない,など,厳格な解釈がとられるのです。

一方で,『内縁』のどちらかが,他の異性と性的関係を持つことで『不貞』同様の慰謝料が生じます。
内縁の夫婦間,内縁の一方と第三者(内縁外の侵害者)のそれぞれについて,慰謝料の相場があります。
犯罪は成立しなくても,法的責任が生じない,というわけではないのです。
別項目|離婚の慰謝料相場は200〜500万円,事情によってはもっと高額化
詳しくはこちら|不貞相手の慰謝料|理論|責任制限説|破綻後・既婚と知らない→責任なし
詳しくはこちら|不貞相手の慰謝料|相場=200〜300万円|減額要素

<参考情報>

大塚仁 刑法概説 各論 改訂増補版 創文社p508
団藤重光 刑法綱要 各論 第3版 創文社p282