1 親密であっても『婚姻・養子縁組』をしていない→相続権はない
2 特別縁故者|基本・判断要素|相続人『以外』が遺産を承継できる制度
3 特別縁故者|判断基準|法人・社団も認められる
4 相続財産の『一部だけ』を承継させることもある
5 複数の者が『特別縁故者』として認められることもある
6 特別縁故者として否定×『金銭の支払がなされる』扱い
7 『特別縁故者の財産分与』は相続税の対象となる
8 特別縁故者ではないが金銭を受領する→贈与税課税等のリスク

1 親密であっても『婚姻・養子縁組』をしていない→相続権はない

(1)内縁については婚姻の制度の適用が認められている

例えば,内縁の妻のように,現実的に,被相続人と同居しており,夫婦同然というケースもあります。
法律上,結婚に準じて,夫婦に関する多くの規定が適用されます。
別項目;内縁関係;適用される規定;基本

(2)内縁でも相続権については適用されない

しかし相続に関しては戸籍上結婚していない以上は否定されます。
『離婚の財産分与』の類推適用を主張するケースもありますが,原則的に否定されています。
別項目;内縁関係;死別;財産分与の類推適用
そこで,財産を承継することはできないのが原則です。
一定の例外もありますので,次に説明します。

2 特別縁故者|基本・判断要素|相続人『以外』が遺産を承継できる制度

仮に『相続人が一切存在しない』という場合,原則的に国庫帰属なります。
(別記事『相続人不存在』;リンクは末尾に表示)
内縁者などの『法律上の相続人ではない者』は原則的に遺産を承継できません(前述)。
これについて例外的な制度があります。

<特別縁故者|基本・趣旨>

あ 基本的要件

ア 被相続人に相続人が存在しない
イ 被相続人と『特別な縁故』が認められる
『特別縁故者』と呼ぶ
要件・判断基準は後述する

い 効果|例外的な遺産承継

特別縁故者は遺産を承継できる
承継する範囲は家裁が判断する
※民法958条の3

特別縁故者として認めるかどうかは家庭裁判所が審判で定めます。
判断する要素は縁故関係だけではなく財産内容も含まれます。
次にまとめます。

3 特別縁故者|判断基準|法人・社団も認められる

特別縁故者の判断基準は,条文上はとても簡素なものです(前述)。
そこで,実務上,裁判所の判断には『ブレ』が生じがちです。
多くの審判例があります。
十分に把握した上で有利な事情を効率的に主張・立証する必要があります。
判断基準については別記事にまとめてあります。
(別記事『判断基準・基本』;リンクは末尾に表示)
また,実務上,介護施設が『特別縁故者』に認められることも多いです。
これについても別記事にまとめてあります。
(別記事『法人・社団』;リンクは末尾に表示)

4 相続財産の『一部だけ』を承継させることもある

特別縁故者の審判手続においては,縁故の濃淡を裁判所が判断します。
そこで,一部の相続(承継)を認める,ということも可能となっています。

<特別縁故者|遺産の一部のみの承継|概要>

『100%を渡す』ほどには,関係が濃くなかった
一方『一切相続させない』というほどに関係が薄かったわけではない

実際に財産の一部の相続(承継)を認める審判がなされることも多いです。
具体的事例を示します。

<特別縁故者|遺産の一部のみの承継|事例>

あ 財産の種類で分けた事例

相続財産のうち,有価証券・現金・動産のみを分与した
※高松高裁昭和48年12月18日

い 金額の一部を分与した事例

相続財産(預金)が約212万円であった
→40万円に限って分与した
※大阪家裁昭和38年12月23日

5 複数の者が『特別縁故者』として認められることもある

特別縁故者の審判においては,裁判所の裁量が大きいです。
認定する人数それぞれが承継する財産,なども含めて裁判所に広く裁量があるのです。
特別縁故者として複数人が認定されることもあります。
申立があった者それぞれについて,家庭裁判所が特別縁故者か否かを検討,判断します。
複数認める場合の各自の分与額は,その実質的な縁故の度合いによって変わります。
裁判例においては,約7対約3という分与の割合が定められたケースもあります。
※広島高裁平成15年3月28日

6 特別縁故者として否定×『金銭の支払がなされる』扱い

特別縁故者の制度自体が,本来相続権がない人に対し特例として財産承継を認めるという,非常に特殊なものです。
相続などを規定する相続法における,大胆な例外,と言えます。
特殊であるため,イレギュラーな対応がなされることもあります。
特別縁故者としては認めないけれど,『相続財産の処分の一環として』,被相続人と親密であった方に対し,金銭が支払われる場合もあるのです。
典型例は次のようなものです。

<相続財産の処分としての金銭支給の例>

あ 被相続人の生前,被相続人に生活費を渡していた

立て替えた生活費の返還

い 被相続人が亡くなった後,葬儀費用を払った

立て替えた葬儀費用の返還

実際の現場では,明確に何の費用とは決めず,また,書面も作成しない,ということが多いです。
謝礼謝金とか呼ぶこともあります。
しかし,趣旨は以上のようなものです。
なお『葬儀費用の負担者』についてはいくつかの解釈論があります。
詳しくはこちら|葬儀費用の負担者や香典の帰属の見解(全体)と税務上の扱い
ただし『特別縁故者』の扱いでは,この解釈論はそのまま適用されません。
特殊な人間関係の考慮の方が優先されるのです。

7 『特別縁故者の財産分与』は相続税の対象となる

特別縁故者として家庭裁判所に認められた場合,財産分与を受けることになります(民法958条の3)。
めでたく,家庭裁判所に認めてもらった後,別の問題があります。
税金の問題です。
民法の条文上は,『財産分与』という表現です。
しかし,突き詰めて考えると相続ではありません。
この点,税法上は,みなし相続財産として扱われます(相続税法4条;遺贈とみなされる)。
結論として,相続税が課税されます。

8 特別縁故者ではないが金銭を受領する→贈与税課税等のリスク

特別縁故者として認定されないけれども受領した金銭,にはその性質のバリエーションがあります。
この性質によって課税関係が決まります。

例えば『貸付金・葬儀費用の返還』という名目が明確化されていれば課税されません。
実際に,特別縁故者としては否定されたけれど,一定の金銭を受け取る,ということは実務上多いです。

この場合,後で,税金上の問題になることもあります。
名目が曖昧だと,贈与とか相続という解釈をされるリスクがあります。
そこで,家庭裁判所や相続財産管理人に対して,その名目を書面上記載するように要請するとベストです。
合意書などで,『貸付金』とか『葬儀費用の返還』と記載してもらうのです。
そうしておくと,後日,税務署から贈与相続と主張されるリスクはほとんどなくなります。
家庭裁判所の運用上,税金のことまできちんと考えていない,ということはよくあるのです。