1 表示の登記の職権/申請の分類(分筆・合筆登記の例外扱い)
2 職権による表示登記(基本)
3 創設的登記の特別扱い
4 申請による分筆・合筆登記の原則
5 共有土地の分筆登記の申請人(原則・処分行為)
6 共有土地の分筆登記の申請人(遺産分割)
7 共有物分割・遺産分割による分筆登記の代位申請
8 例外的な職権による分筆・合筆登記

1 表示の登記の職権/申請の分類(分筆・合筆登記の例外扱い)

不動産の表示の登記は,権利の登記とは,手続的な扱いが大きく異なります。所有者などの当事者が申請しなくても法務局が職権で登記をする,という扱いがあるのです。ただし,分筆,合筆については表示の登記の中でも特殊な扱いがあります。
本記事では,表示の登記がどのように行われるか,ということについて説明します。

2 職権による表示登記(基本)

表示登記は,権利の登記とは違って,物理的な状況を記録するものです。所有者などの権利者の利害と直結するわけではないので,原則的に職権による登記が可能おtなっています。

職権による表示登記(基本)

一般的な表示登記について
現況主義である
→登記官が職権で行うことができる
※不動産登記法28条
※田中康久/林良平ほか『不動産登記法 補訂版 注解不動産法第6巻』青林書院p181

3 創設的登記の特別扱い

表示登記の種類の中には創設的なものもあります。創設的な登記は,所有権への影響が大きいので,権利者(所有者)が関与なく行ってしまうのはよくありません。そこで,創設的な登記は例外的に,職権による登記ができず,申請が必要です。代表的なものは,土地については分筆,合筆の登記です。建物については,分割,合併,また,区分所有にする登記です。
なお,建物を区分所有とすることについては,(登記ではなく)実体上も所有者の意思が必要とされています。
詳しくはこちら|区分所有権の主観的要件(区分所有の意思)

創設的登記の特別扱い

あ 創設的な登記の扱い

表示登記のうち創設的なものについて
→財産権の自由処分権は当事者にある
→職権による登記はできない

い 創設的な登記の具体例

ア 土地の分筆・合筆の登記イ 建物の分割・区分・合併の登記ウ 共用部分たる旨・共用部分の廃止の登記 ※田中康久/林良平ほか『不動産登記法 補訂版 注解不動産法第6巻』青林書院p181

4 申請による分筆・合筆登記の原則

土地の分筆・合筆の登記は,創設的登記なので,職権による登記ができません。
申請する当事者は,表題部所有者と所有権登記を得ている者です。これらの者が申請しない限り,分筆・合筆の登記がなされることはありません。

申請による分筆・合筆登記の原則

あ 申請の原則

分筆・合筆登記について
→職権ではできない
『い』の者による申請だけに限られる

い 分筆・合筆登記の申請人

ア 表題部所有者イ 所有権の登記名義人

う 例外的な職権登記

例外的に職権登記が必要または可能というケースもある(後記※1
※不動産登記法39条2項,3項

5 共有土地の分筆登記の申請人(原則・処分行為)

土地が共有である場合に,分筆登記をすることは,共有物の処分にあたります。そこで,共有者全員が申請人となることが必要です。共有者の1人が協力してくれない場合は,そのままでは分筆登記ができないことになります。

共有土地の分筆登記の申請人(原則・処分行為)

あ 処分行為該当性

分筆の登記は,これにより法律上の土地の個数を変更するものであるところから,処分行為と解されている。
※昭和37年3月13日民事三発第214号法務省民事局第三課長電報回答(共有物の処分または変更に該当する)
※表示登記研究会編『分筆登記の実務』きんざいp22(共有物の処分行為に該当する)

い 共有者の一部による申請の扱い

ア 可否 共有名義の土地について,共有者の一部の者から,保存行為として,分筆の登記を申請することは認められないこととされている
イ 申請の扱い これに違背する登記申請の却下条項については,若干の疑義があるが,分筆の登記申請書に記載された申請人の表示が登記簿上のそれと符合しない場合(前掲の1(一八頁)参照)と同様,申請書に適法な申請人の表示の記載がないものとして,法49条4号の規定により,却下するのが相当と解する。
※表示登記研究会編『分筆登記の実務』きんざい1994年p22

6 共有土地の分筆登記の申請人(遺産分割)

ところで,土地が共有となる原因としては,相続が非常に多いです。相続によっていったん共有となっても,通常,遺産分割で単独所有にする結果とすることが多いです。たとえば,土地を分筆した上で,1筆ごとに各相続人の単独所有にする方法(現物分割)です。
この場合,登記上は(形式的には)被相続人が所有者となっていることがありますが,その場合に,被相続人が申請者となることはできないので,相続人が申請者となります。相続人が複数人いる場合は,相続人の全員が共有しているということになりますので,相続人全員が分筆登記の申請人となる必要があるはずです。
この点,遺産分割協議書(または審判書)があり,別紙として地積測量図が添付されている場合は,共有者の1人だけが分筆登記の申請人になることで足ります。

共有土地の分筆登記の申請人(遺産分割)

あ 相続人による申請

遺産分割協議の結果,1筆の土地を分割して,分割後のそれぞれの各土地について相続人が各自単独所有する場合には,相続による所有権の移転の登記の前提として,分筆の登記を申請する必要がある。
・・・法42条の規定を準用して,相続人から,相続を証する書面を添付して分筆の登記を申請することができる
※『質疑応答6063・6064』/『登記研究419号』p64

い 相続人1人による申請

ア 見解 甲の相続に関する遺産分割協議の結果,1筆の土地を2筆に分割し,分割後の各土地の一方を相続人甲1が,他方を相続人甲2がそれぞれ単独所有することとなった場合・・・遺産分割協議書にその地積測量図が添付されているときは,・・・当該遺産分割協議書によって,具体的な分割の方法が明らかであって,誰から申請しても当該遺産分割協議書に添付されている地積測量図のとおりにしか分筆できないところから,(当該分筆の登記の申請を,甲1または甲2から,単独で申請することができるか,ということについて)積極的に解すべきであろう。
イ まとめ 相続人からする分筆登記の申請は,共同相続人全員からはもちろん,遺産分割等の結果,当該土地を相続することとなった相続人のみからでもよい
※表示登記研究会編『分筆登記の実務』きんざい1994年p24,25

遺産分割(現物分割)による分筆登記は,この理論とは別に,次に説明する代位の方式で申請することもできます。

7 共有物分割・遺産分割による分筆登記の代位申請

ところで,現物分割は,遺産分割として行うほかに,共有物分割として行うこともあります。
共有物分割(としての現物分割)の場合には,前述の相続人による登記の方式は使えません。相続人による登記は,登記上の所有者である被相続人は存在しないことによる例外だからです。
だからといって,共有物分割が判決によりなされたケースでは,共有者全員の協力を得ることはできないことも多いです。判決を得ても登記できないということでは困ります。
この点,現物分割の分筆登記は,対象部分を得る者が代位して申請することができます。代位による分筆登記申請は,共有物分割だけでなく遺産分割の場合でも可能です。

共有物分割・遺産分割による分筆登記の代位申請

現物分割がなされた場合
→対象土地の取得者が分筆登記の代位申請をすることができる
※平成6年1月5日民三第265号民事局第三課長回答(共有物分割について)
※平成2年4月24日民三第1528号民事局第三課長回答(遺産分割について)

8 例外的な職権による分筆・合筆登記

分筆・合筆登記は原則的に職権では行なえません。
しかし,例外的に職権で行えることや,行わなくてはならないこともあります。

例外的な職権による分筆・合筆登記(※1)

あ 必要的な職権登記

『ア・イ』のいずれかの場合
→登記官は職権で分筆登記をする義務がある
ア 一筆の土地の一部が別の地目となったイ 地番区域を異にするに至った ※不動産登記法39条2項

い 任意的な職権登記

『ア・イ』のいずれにも該当する場合
→登記官は職権で分筆or合筆登記をすることができる
ア 14条地図を作成するために必要があるイ 所有者の異議がない ※不動産登記法39条3項

本記事では,表示の登記がどのように行われるか,ということについて説明しました。
実際には,個別的な事情によって,法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に不動産の登記に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。