【借地借家法(新法)における更新後の建物再築の承諾料相場(再築許可の財産上の給付)】

1 借地借家法(新法)における更新後の建物再築の承諾料相場(再築許可の財産上の給付)

借地借家法(新法)が適用される借地では、最初の更新後(第2ラウンド)に建物の再築をする場合、地主の承諾がないと解約できることになっています。そこで、地主の承諾の代わりに裁判所が許可する制度があります。
詳しくはこちら|借地借家法(新法)の更新後の建物再築許可手続の基本
裁判所が許可する場合は、承諾料(財産上の給付)を決めることになります。この金額は、交渉で承諾料を決める場合の基準にもなります。
本記事では、借地借家法における更新後の建物再築の承諾料の相場を説明します。

2 借地借家法(新法)の建物再築に関する基本方針(概要・前提)

建物再築の承諾料は、その背景にある、借地借家法の基本方針と関係しています。
借地借家法(新法)は旧借地法とは違って、更新後は期間を長引かせないという基本方針をとっています。
詳しくはこちら|借地借家法の借地上の建物の滅失や再築による解約(全体・趣旨)
具体的ルールの代表は、更新後に借地人が地主の承諾をとらずに建物を再築した場合、地主が借地契約を解約できるというものです。
詳しくはこちら|借地借家法の借地上建物の滅失・再築による解約の規定と基本的解釈
これで長引かせないという基本方針が実現しますが、状況によっては借地人を救済する必要があります。そこで、特殊事情がある場合には裁判所が例外的に許可を出す制度を用意したのです。

3 再築の承諾料(財産上の給付)の相場→更地価格の10%が目安

(1)学説→借地条件変更を参照

実際に、借地借家法が施行された後に借地契約が始まり、最初の(最低限の)30年の期間が満了し、その後に建物の再築がなされた実例がまだ少ないので、その中で裁判所が判断したもの(裁判例)がほとんどありません。
そこで、承諾料に関する学説が有用です。仮に裁判所が判断する場合、学説の見解を採用する可能性が高いのです。
学説は、既存の類似する手続(借地非訟手続)を参照しています。「再築工事」は、既存の手続のうち「増改築(許可)」があてはまります。ただ、旧借地法の「増改築許可」は半永久的に借地が続くという基本方針を前提としたものです。地主への実質的なダメージが小さいです。
一方、借地借家法の再築許可では、借地契約が終了するのが基本方針なので、再築を認めて借地期間を長引かせることによる地主へのダメージはとても大きいです。そこで、旧借地法の「借地条件変更」が、地主へのダメージとしては互角に近いと思えます。寿命が長い建物建築を許容する借地条件変更の承諾料の相場は土地価格の10%です。そこで、借地借家法の再築許可の承諾料もこの程度が目安と考えられます。

学説→借地条件変更を参照

あ コンメンタール借地借家法

承諾料の額は、一切の事情を考慮して定めることになるが、期間が延長(更新)されること、借地権設定者にとって解約権(8条2項)の放棄となる点を考慮すると、従来の借地条件変更における承諾料に近いものになるものと思われる。
※澤野順彦稿/稻本洋之助ほか編『コンメンタール借地借家法 第4版』日本評論社2019年p139

い 新基本法コンメンタール

具体的な金額については、更地価格の5%以上10%未満(借地非訟実務研究会編・前掲405頁)とも、更地価格の3%を超え10%以下(東京地裁借地非訟研究会編・前掲249頁)ともいわれる。
※七戸克彦稿/『新基本法コンメンタール 借地借家法 第2版』日本評論社2019年p112

う 実務解説借地借家法

財産給付については、条件変更の裁判や増改築の裁判との均衡をも考慮すると、更地価格の3%程度(増改築許可の場合の基準)を超え、更地価格の10%程度(非堅固建物借地権から堅固建物借地権への条件変更の場合の基準)までの範囲で定められるものと予想される。
※澤野順彦編『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p236

(2)借地条件変更・増改築許可の承諾料相場(参考)

以上の説明で登場した、従来の許可手続の承諾料について別の記事で説明しています。
従来木造建物(非堅固)だけであった契約を、RC(堅固)も可能とする借地条件変更のケースでは、更地価格の10%が相場となっています。

詳しくはこちら|借地条件変更の承諾料の相場(財産上の給付の金額)

増改築禁止特約がある場合に、全面改築を許可するケースでは、更地価格の3〜5%が相場となっています。
詳しくはこちら|借地上の建物の増改築許可の承諾料の相場(財産上の給付の金額)

4 実質的要件と考慮する事情(概要)

前述のように借地借家法では更新後には期間を長引かせない方針がとられているので、承諾料以前に許可しないのが原則です。特殊事情があって初めて例外的に許可する、という仕組みになっています。許可する要件(実質的要件)については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|借地借家法(新法)の更新後の建物再築許可の実質的要件(判断基準)
実質的要件を判断するには、当然ですが、多くの事情が考慮されます。条文に考慮する事情が記述されていますがそれは一例で、広い範囲の事情が判断材料になります。
詳しくはこちら|借地借家法における更新後の建物再築許可で考慮する事情

本記事では、借地借家法(新法)が適用されるケースにおける更新後の建物再築の承諾料の相場について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に借地上の建物の工事(再築、増改築、修繕など)に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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