1 再築許可の実質的要件の判断と鑑定委員会(総論)
2 再築許可の条文上の実質的要件
3 再築許可の実質的要件の抽象的な判断基準
4 実質的要件の判断の具体例(許可方向)
5 実質的要件の判断の具体例(不許可方向)
6 条文規定における考慮事情
7 再築許可において考慮する事情の内容(概要)
8 鑑定委員会の意見(概要)

1 再築許可の実質的要件の判断と鑑定委員会(総論)

借地借家法では,初回の更新後(第2ラウンド)における建物の再築について,裁判所が許可する手続があります。
詳しくはこちら|借地上の建物の再築許可の裁判制度の基本(趣旨・新旧法の違い)
裁判所が再築を許可するかしないか,という実質的な判断の基準や考慮する事情が条文上決められています。
また,判断する際には鑑定委員会の関与が必要です。
本記事では,再築許可の実質的要件や鑑定委員会の関与について説明します。

2 再築許可の条文上の実質的要件

再築許可の実質的要件は条文上規定されています。
規定の内容は『やむを得ない事情』というとても抽象的なものです。

<再築許可の条文上の実質的要件>

あ 条文規定

『やむを得ない事情がある』
※借地借家法18条1項

い 他の種類の非訟手続との比較

借地条件変更・増改築許可の実質的要件について
→いずれも『相当とする』である
※借地借家法17条1項,2項
『やむを得ない事情』(あ)は厳しいものである
※澤野順彦『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p235

う 増改築と再築の比較

建物の増改築は許可される傾向が強い
しかし再築は許可されない傾向が強い

3 再築許可の実質的要件の抽象的な判断基準

再築許可の実質的要件は『やむを得ない』ということしか規定されていません。
この要件の解釈,つまり判断基準をまとめます。
ただし,基準も抽象的です。

<再築許可の実質的要件の抽象的な判断基準>

あ 相対的判定

『い』が『う』を超える場合
→『やむを得ない事情』ありといえる

い 借地人の理由

借地人が建物を再築せざるを得ない理由

う 地主の事情

地主が再築を承諾しない事情
※稲本洋之助ほか『コンメンタール借地借家法 第3版』日本評論社2010年p131

4 実質的要件の判断の具体例(許可方向)

実質的要件やその基準はとても抽象的です(前記)。
具体例を使って,許可の判断の傾向をまとめます。
最初に,許可される傾向のある典型的な事情を紹介します。

<実質的要件の判断の具体例(許可方向)>

あ 認められる具体例

『い・う』のいずれかによって建物が損壊・滅失した場合
→再築が許可される傾向がある

い 火災

借地人の放火を除く

う 天災

例;地震など

5 実質的要件の判断の具体例(不許可方向)

次に,許可されない傾向となるような具体的事情をまとめます。

<実質的要件の判断の具体例(不許可方向)>

あ 認められない具体例

『い・う』のいずれかの状況である場合
→再築が許可されない傾向がある

い 単なる老朽化

単に建物が老朽化した

う 朽廃

建物が朽廃した(※1)
※澤野順彦『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p235

え 朽廃に関する注意

朽廃とは著しい老朽化のことである
なお,旧法時代の借地で法定期間が適用される場合には
建物の『朽廃』により借地権が消滅する
→再築は一切できない状態になる
詳しくはこちら|旧借地法における建物の朽廃による借地の終了(借地権消滅)

6 条文規定における考慮事情

前記の実質的要件とは別に,判断において考慮する事情も条文に規定されています。
とても広い範囲の事情を元にして総合的に評価して判断することとされているのです。

<条文規定における考慮事情>

あ 考慮事情の内容(条文規定)

ア 建物の状況
イ 建物が滅失に至った事情
建物の滅失があった場合に限る
ウ 借地に関する従前の経過
エ 当事者双方が土地の使用を必要とする事情
更新(拒絶)の正当事由と同じものである
オ その他一切の事情

い 考慮の必要性

『あ』の事情について『考慮しなければならない』
→本裁判・付随的裁判ともに必ず考慮する
※借地借家法18条2項
※稲本洋之助ほか『コンメンタール借地借家法 第2版』日本評論社2003年p131,133

7 再築許可において考慮する事情の内容(概要)

再築許可において考慮する事情として条文の規定されているものはある程度抽象的なものです(前記)。
個々の内容の意味や解釈については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|再築許可の実質的要件として考慮する個々の事情の内容

8 鑑定委員会の意見(概要)

再築許可の判断において,裁判所は鑑定委員会の意見を聴くことが必要とされています。
実務では,鑑定委員会の判断として当方に有利な意見が作られることが有利な結果に直結します。
そこで,有利な鑑定委員会の意見の獲得に向けた主張・立証(資料提出)が非常に重要です。

<鑑定委員会の意見(概要)>

あ 条文規定

本裁判・付随的裁判をする場合
特に必要がないと認める場合を除いては
鑑定委員会の意見を聴かなくてはならない
※借地借家法18条3項,17条6項

い 鑑定委員会の意見の要否

付随的裁判の判断においては鑑定委員会の意見が必要である
本裁判については必ずしも必要ではない

う 鑑定委員会の意見の法的扱い

ア 理論
鑑定委員会の意見について
できるだけ尊重すべきである
裁判所は鑑定委員会の意見に拘束されない
イ 実務の傾向
実務上は鑑定委員会の意見の全部or大部分が採用されることが多い
詳しくはこちら|借地非訟の裁判における鑑定委員会とその意見
※稲本洋之助ほか『コンメンタール借地借家法 第2版』日本評論社2003年p133