【借地借家法の借地上建物の滅失・再築による解約の規定と基本的解釈】

1 滅失・再築による解約の規定と基本的解釈(総論)

新法(借地借家法)時代の借地では、更新後(第2ステージ)の建物の滅失や再築により解約ができるという制度があります。
詳しくはこちら|借地借家法の借地上の建物の滅失や再築による解約(全体・趣旨)
本記事では、建物の滅失や再築による解約についての規定の内容や基本的な解釈を説明します。

2 借地借家法8条の条文

更新後に借地人が建物を再築した場合に、地主が借地契約を解除できるというルールを規定する条文を最初に確認しておきます。
条文上は、建物が滅失した後に、借地人が承諾なく残存期間を超えて存続する建物を築造した場合に、地主が解約できる、と書いてあります。普通の建物であれば、借地の残存期間を超えて存続することになります。要するに無断で再築した場合に地主が解約できる、と整理できます。

借地借家法8条の条文

(借地契約の更新後の建物の滅失による解約等)
第八条 契約の更新の後建物の滅失があった場合においては、借地権者は、地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる。
2 前項に規定する場合において、借地権者が借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、借地権設定者は、地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる。
3 前二項の場合においては、借地権は、地上権の放棄若しくは消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れがあった日から三月を経過することによって消滅する。
4 第一項に規定する地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れをする権利は、第二項に規定する地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをする権利を制限する場合に限り、制限することができる。
5 転借地権が設定されている場合においては、転借地権者がする建物の築造を借地権者がする建物の築造とみなして、借地権者と借地権設定者との間について第二項の規定を適用する。
※借地借家法8条

3 更新後の建物再築による地主の解約ルールの要点

建物の再築による地主からの解約に関する規定をまとめます。

更新後の建物再築による地主の解約ルールの要点

あ 前提事情(再築)

更新後の期間内において(第2ステージ)
建物が滅失(後記※1)した
借地人が地主の承諾を得ないで残存期間を超えて存続する建物築造した

い 地主による解約

地主は借地契約の解約申入をすることができる
※借地借家法8条2項

う 解約申入の効果

解約申入の意思表示(い)から3か月が経過した時点において、借地権は消滅する
※借地借家法8条3項

4 建物の「滅失」の意味・解釈(概要)

前記の2つの解約に関する要件の中に建物の滅失というものがあります(前記)。
ここでの滅失の意味に関するいろいろな解釈があります。実際には滅失に該当するかどうかで解約できるかどうかが決まります。実務では滅失の解約や判断について、熾烈な見解の対立が生じることになるはずです。

建物の『滅失』の意味・解釈(概要)(※1)

あ 『滅失』の意味(概要)

第三者or自然力による、建物の寿命前の消滅である
物理的な建物の効用の喪失である
詳しくはこちら|建物の『滅失』の意味と判断基準(新旧法共通)

い 『滅失』の解釈(概要)

借地人による取壊し(再築)も含む
大規模な増改築も含む
詳しくはこちら|建物の『滅失』と再築(築造)の解釈とバリエーション(新旧法共通)

5 「更新」・耐用年数の意味・解釈(概要)

建物の再築による解約の規定にはほかにも要件が定められています。
「更新」、「残存期間を超えて存続する建物」のことです。
これらについての解釈は、別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|建物再築による解約と再築許可に共通する要件(更新・耐用年数)

6 解約権発生のタイミング→「建物」に至った時点

実際には、借地人が地主に無断で建物を再築しようとした場合、地主が止めようとすることが多いです。では、再築工事がどこまで進んだら解約できるのでしょうか。これについて、建物建築の工事に着手しただけでは足りず、「建物」といえる程度まで工事が進んだ場合に初めて解約できる、という見解があります。

解約権発生のタイミング→「建物」に至った時点

「築造したとき」とは、本項の解約権の行使によって借地権が確定的に消滅することに鑑み、建物として完成したことを要するものと考えられる。
すなわち、不動産登記規則111条にいう建物(屋根および周壁またはこれに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供しうる状態にあるもの)の程度に至ることを要するものと解すべきである。
※稲本洋之助ほか編『コンメンタール 借地借家法 第4版』日本評論社2019年p58

本記事では、借地借家法(新法)における更新後の建物再築による解約について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に借地上の建物の工事(再築、増改築、大規模修繕など)に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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【借地借家法(新法)における更新後の建物再築の承諾料相場(再築許可の財産上の給付)】
【建物再築による解約と再築許可に共通する要件(更新・耐用年数)】

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