【借地条件変更の承諾料の相場(財産上の給付の金額)】

1 借地条件変更の承諾料の相場(総論)

借地条件(制限)について、裁判所が変更(緩和)するという手続があります。
詳しくはこちら|借地条件変更・増改築許可の裁判手続(基本・新旧法振り分け)
裁判所が借地条件を変更する裁判をするときには、通常借地人が金銭を支払うことがセットとなります。
法律上は財産上の給付と呼びます。
いわゆる承諾料に相当するものです。
本記事では借地条件変更に伴う承諾料(財産上の給付)の金額について説明します。

2 借地条件変更の財産上の給付の金額(基本)

ごく平均的・一般的な借地条件変更の承諾料の相場は、更地の10%相当額です。
裁判所の判断が元になっていますが、交渉における基準としても機能しています。

借地条件変更の財産上の給付の金額(基本)

あ 原則的な相場

非堅固建物から堅固建物所有目的への変更について
財産上の給付(承諾料)の金額の相場
→原則として更地価格の10%である
※東京地裁の運用
※市川太志『借地非訟事件の処理について』/『判例タイムズ967号』p32
※水本浩ほか『基本法コンメンタール 借地借家法 第2版増補版』日本評論社2009年p59

い 鑑定委員会の意見の傾向

鑑定委員会の意見について
→原則どおりの10%とする意見が大半である
裁判所の決定としてもこれを維持することが多い

う 裁判外の実務へのフィードバック

実務慣行として不動産取引界にも根付いている
※市川太志『借地非訟事件の処理について』/『判例タイムズ967号』1998年p32
※澤野順彦『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p221

3 借地条件変更の承諾料10%の経済的根拠

借地条件変更の承諾料の相場である10%は、経済的な価値の変動が元になっています。

借地条件変更の承諾料10%の経済的根拠

あ 借地権割合の変化

非堅固建物所有目的と堅固建物所有目的による差
→更地価格の10%である

い 承諾料との関係

借地条件の変更によって
経済的に『あ』に相当する価値が地主から借地人に移転した
→逆方向に金銭を移転させると公平になる
承諾料にはこのような要因があるといえる
※市川太志『借地非訟事件の処理について』/『判例タイムズ967号』1998年p32

4 借地条件変更の財産上の給付の金額(例外)

借地条件変更の承諾料の基本的な相場は更地の10%相当額です(前記)。
しかし、個別的な事情によってはこのパーセンテージからずれることもあります。

借地条件変更の財産上の給付の金額(例外)

あ 特殊事情の反映

個別事案に固有の事情を考慮して増減することがある

い 建物の工事の特殊事情の例

築造予定建物の延床面積の増減の程度
借地人に大幅な収益増が見込まれる

う 増減の幅

多くの裁判例は次の幅に分布している
更地価格の7%〜15%
※市川太志『借地非訟事件の処理について』/『判例タイムズ967号』1998年p32

え 用途変更の承諾料の相場

借地条件変更の内容が用途変更にとどまる場合
→財産上の給付の金額は大幅に低くなる
※澤野順彦『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p221

5 借地条件変更における更新料支払がないことの考慮

過去に、借地人が更新料を払っていないケースでは、承諾料の算定で上乗せするという発想があります。
しかし、一般的には加算(考慮)することは否定されています。
事情によっては例外的に加算されることもありえます。

借地条件変更における更新料支払がないことの考慮

あ 前提事情

過去に更新料の支払がなされていなかった

い 原則

更新料支払が地域の慣行であるというだけの理由で
実質的に更新料を加算することはしない
※東京地裁平成9年8月11日

う 例外

『ア・イ』のいずれかに該当する場合
→更新料の支払がないことを考慮する
ア 当事者間の契約によって更新料を支払う特約があるイ 黙示的な合意がある 例;支払い実績があるなど
※市川太志『借地非訟事件の処理について』/『判例タイムズ967号』1998年p33

6 借地条件変更における更新料支払実績の考慮

過去に借地人が更新料を支払ってきているケースもよくあります。
この場合、承諾料の算定で、未償却分を減額するという発想があります。
しかし一般的には過去の更新料支払の実績は考慮しません。

借地条件変更における更新料支払実績の考慮

あ 前提事情

過去に更新料の支払がなされた

い 発想

残存期間に対応する未償却分について
財産上の給付(承諾料)から控除する
鑑定委員会の意見として出されることもある

う 判断の傾向

更新料と条件変更に伴う財産上の給付について
→性質が異なる(え)
→一般的には考慮(未償却分の控除)をしない
※東京地裁平成9年1月14日

え 更新料・財産上の給付の性質

ア 更新料の性質 賃料の前払など
イ 財産上の給付の性質 借地条件変更・増改築に伴う地主・借地人の利害の調整
※市川太志『借地非訟事件の処理について』/『判例タイムズ967号』1998年p33

7 更地価格(評価)の算定(概要)

借地条件変更の承諾料(財産上の給付)の算定では、更地の評価額がベースとなります(前記)。
実務では、算定方法については意見が一致しているけれど、更地の評価額について見解が熾烈に対立することも多いです。
更地の評価の方法については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|不動産(土地)の評価額の基本(実勢価格・時価・不動産鑑定評価・売出価格・成約価格)

8 借地条件変更の承諾料相場(裁判例集約;概要)

借地条件変更の裁判では、多くのケースで更地の10%相当額が承諾料として算定されています。
特殊事情によって、これより高い、または低い算定がなされた事例も多くあります。
例外的な事情は、多くの裁判例の事案の中にあります。
裁判例の内容については、別の記事で紹介しています。
詳しくはこちら|借地条件変更の承諾料(財産上の給付の裁判例集約)

9 建物の再築の承諾料の相場(参考)

借地に関する承諾料は、借地条件変更以外でも生じます。
その1つが建物の再築の承諾料です。
再築許可の裁判の規定はありますが実例はまだありません。
しかし、任意の交渉や増改築許可の裁判における再築の許可の実例は多くあります。
このような状況での承諾料(財産上の給付)では、借地条件変更の相場が流用されています。

建物の再築の承諾料の相場(参考)

あ 裁判所による再築の承諾料算定が生じる状況

ア 再築許可の裁判 平成34年(令和4年)8月までは再築許可の実例が生じない
詳しくはこちら|借地上の建物の再築許可の裁判制度の基本(趣旨・新旧法の違い)
イ 『増改築許可』の手続の流用 『増改築許可』の裁判において
『再築』が許可されることは現在でもある
詳しくはこちら|再築禁止特約と増改築許可の利用(新旧法共通)

い 再築の承諾料の相場

建物の再築の承諾料に関する
裁判所や当事者の合意の相場について
→原則として更地評価額の10%相当額である
詳しくはこちら|借地借家法(新法)における更新後の建物再築の承諾料相場(再築許可の財産上の給付)

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