1 増改築許可の承諾料の相場(総論)
2 増改築許可の財産上の給付の金額
3 一部の改築における財産上の給付の算定
4 増改築許可の財産上の給付と更新料
5 増改築許可の財産上の給付と過去の承諾料
6 更地価格(評価)の算定(概要)
7 増改築許可の承諾料相場(裁判例集約;概要)
8 建物の再築の承諾料の相場(概要)

1 増改築許可の承諾料の相場(総論)

増改築禁止特約がある借地について,裁判所が増改築を許可するという手続があります。
詳しくはこちら|借地条件変更・増改築許可の裁判手続(基本・新旧法振り分け)
裁判所が増改築を許可する裁判をするときには,通常借地人が金銭を支払うことがセットとなります。
法律上は財産上の給付と呼びます。
いわゆる承諾料に相当するものです。
本記事では増改築許可に伴う承諾料(財産上の給付)の金額について説明します。

2 増改築許可の財産上の給付の金額

増改築許可の承諾料は,原則的に更地の3%相当額です。

<増改築許可の財産上の給付の金額>

あ 基本的な相場

財産上の給付(承諾料)の金額について
全面改築の場合
→原則として更地価格の3%である
※市川太志『借地非訟事件の処理について』/『判例タイムズ967号』p51
※水本浩ほか『基本法コンメンタール 借地借家法 第2版増補版』日本評論社2009年p60

い 特殊事情の反映

『ア・イ』のような事情がある場合
→3%(あ)より高くなる傾向がある
ア 改築による床面積の増加の程度
イ 借地人の収益の増加
例;賃貸物件の建築

う 相場の分布

おおむね3〜5%の範囲内に分布する

え 特殊事情による判断の具体例

自己使用から賃貸用物件への変更を伴う場合
→更地価格の3%を超える
※市川太志『借地非訟事件の処理について』/『判例タイムズ967号』1998年p51

3 一部の改築における財産上の給付の算定

改築の工事内容が,建物の一部を対象とするケースでは,承諾料の相場は下がります。

<一部の改築における財産上の給付の算定>

あ 割合の傾向

全面改築に至らない場合
増改築の程度に応じて更地基準の割合が決まる
更地価格の1%前後を中心にして分布する
3%が上限である
※市川太志『借地非訟事件の処理について』/『判例タイムズ967号』1998年p51

い 単純化した算定式

次の算定方法を採る裁判例も多い
3% × 増改築部分の床面積/全体の床面積
※市川太志『借地非訟事件の処理について』/『判例タイムズ967号』1998年p51,52

4 増改築許可の財産上の給付と更新料

増改築許可の承諾料の算定では,更新料の支払実績は,一般的に考慮しません。
借地条件変更の裁判の承諾料と同じ考え方です。

<増改築許可の財産上の給付と更新料>

あ 基本的事項

更新料は考慮すべきではない
※東京地裁平成9年7月3日
※東京地裁平成9年8月12日
※市川太志『借地非訟事件の処理について』/『判例タイムズ967号』1998年p52

い 借地条件変更の承諾料と更新料の関係(参考)

借地条件変更の裁判に伴う財産上の給付(承諾料)について
更新料は考慮しない
詳しくはこちら|借地条件変更の承諾料(財産上の給付の裁判例集約)
『あ』もこれと同じ考え方である

5 増改築許可の財産上の給付と過去の承諾料

借地上の建物の増改築は,複数回行われることもよくあります。
この場合,過去に承諾料が支払われたことの扱いが問題となります。
この点,増改築の許可は,個々の増改築の工事が対象となるものです。
そこで,過去の増改築の際の承諾料については考慮されません。

<増改築許可の財産上の給付と過去の承諾料>

あ 増改築の承諾料の対応関係

複数回の増改築における承諾料について
各時期の増改築の内容に応じて金額が判断される

い 過去の承諾料の考慮

増改築許可に伴う財産的給付について
→過去の承諾料の支払は考慮しない
※東京地裁昭和56年2月2日
※市川太志『借地非訟事件の処理について』/『判例タイムズ967号』1998年p52

6 更地価格(評価)の算定(概要)

増改築許可の承諾料(財産上の給付)の算定では,更地の評価額がベースとなります(前記)。
実務では,算定方法については意見が一致しているけれど,更地の評価額について見解が熾烈に対立することも多いです。
更地の評価の方法については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|土地の評価額の基本|実勢価格・時価・不動産鑑定評価|他の金額算定で使われる

7 増改築許可の承諾料相場(裁判例集約;概要)

増改築許可の裁判では,多くのケースで更地の3%相当額が承諾料として算定されています。
特殊事情によって,これより高い,または低い算定がなされた事例も多くあります。
例外的な事情は,多くの裁判例の事案の中にあります。
裁判例の内容については,別の記事で紹介しています。
詳しくはこちら|建物全面の増改築の承諾料(財産上の給付の裁判例集約)
また,改築の対象が建物の一部だけというケースでは承諾料も低くなります(前記)。
具体的な事例について判断したいくつかの裁判例については,別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|建物の一部の改築の承諾料(財産上の給付の裁判例集約)

8 建物の再築の承諾料の相場(概要)

建物の増改築と似ているものとして再築があります。
概念としては再築増改築に包含されます。
ただし,再築は規模が大きいので,承諾料の相場は,一般的な増改築よりも高くなります。
平均的な相場は更地の評価額の10%相当額です。

<建物の再築の承諾料の相場(概要)>

あ 裁判所による再築の承諾料算定が生じる状況

ア 再築許可の裁判
平成34年8月までは再築許可の実例が生じない
詳しくはこちら|借地上の建物の再築許可の裁判制度の基本(趣旨・新旧法の違い)
イ 『増改築許可』の手続の流用
『増改築許可』の裁判において
『再築』が許可されることは現在でもある
詳しくはこちら|再築禁止特約と増改築許可の利用(新旧法共通)

い 再築の承諾料の相場

建物の再築の承諾料に関する
裁判所や当事者の合意の相場について
→原則として更地評価額の10%相当額である
詳しくはこちら|借地上の建物の再築許可の付随的裁判と承諾料の相場