1 共有者から第三者への妨害排除請求(返還請求・抹消登記請求・第三者異議訴訟)
2 所有権・共有持分権に基づく妨害排除請求の基本
3 不動産の所有権に基づく妨害排除請求の典型例(前提)
4 共有物の返還請求と法律構成
5 共有不動産の抹消登記請求と法律構成
6 共有物の違法な差押に対する第三者異議訴訟

1 共有者から第三者への妨害排除請求(返還請求・抹消登記請求・第三者異議訴訟)

共有者は第三者による共有物の妨害(侵害)に対して,妨害排除を請求する権利を持ちます。
具体的な請求の内容にはいくつかのバリエーションがあります。
本記事では,共有者から第三者への妨害排除請求権について説明します。

2 所有権・共有持分権に基づく妨害排除請求の基本

最初に,妨害排除請求権の基本的な理論を説明します。
共有所有の1つの形態です。そこで,共有者が持つ共有持分権は,所有権と同質のものです。
そのため,共有者は所有権に基づく妨害排除請求と同じ内容の請求をすることができます。

<所有権・共有持分権に基づく妨害排除請求の基本>

あ 所有権に基づく妨害排除請求権

第三者が所有権を侵害している場合
→妨害排除・妨害予防請求ができる

い 共有持分権に基づく妨害排除請求権

第三者が共有物を侵害している場合
→妨害排除・妨害予防請求ができる

3 不動産の所有権に基づく妨害排除請求の典型例(前提)

所有権(共有持分権)に基づく妨害排除請求権は,いろいろな請求権の総称といえます。妨害排除請求権の内容としては,明渡や引渡の請求や不当な登記の抹消請求があります。

<不動産の所有権に基づく妨害排除請求の典型例(前提)>

あ 明渡・引渡請求

無権利者が不動産を占有している
→所有者は明渡・引渡を請求できる

い 抹消登記請求

無権利者の登記が存在している
→所有者は抹消登記手続を請求できる

う 第三者異議訴訟の提起(参考)

共有物について不当な差押がなされた場合
差押を解消するための手続として第三者異議訴訟がある

4 共有物の返還請求と法律構成

共有物を第三者が占有している場合,各共有者は単独で返還を請求できます。法律構成としては大きく2種類があります。

<共有物の返還請求と法律構成>

あ 前提事情

共有物を第三者が不法に占有している

い 返還請求の範囲

各共有者は第三者に対して共有物全部について明渡・引渡を請求できる
各共有者が単独で請求できる

う 共有者の返還請求の法律構成
判例 法律構成
大判大正7年4月19日 理論明示なし
大判大正10年3月18日 不可分債権類似説
大判大正10年6月13日 保存行為説
大阪高裁平成6年3月4日 保存行為・不可分債権類似説の両方

5 共有不動産の抹消登記請求と法律構成

共有の不動産に不正な登記がある場合,各共有者は単独で抹消登記手続を請求できます。抹消登記請求の法律構成について,保存行為と指摘する判例もあります。一方,共有持分権の効果(である妨害排除請求権)そのものであると示す(ように読める)判例もあります。
判例が採用した法律構成を整理します。

<共有不動産の抹消登記請求と法律構成>

あ 不正な登記の抹消請求

共有の不動産について不正な登記がある場合
各共有者は単独で抹消登記手続を請求できる

い 抹消登記請求の法律構成

保存行為と指摘する判例と指摘しない判例がある
各共有者が共有持分権の効果として共有不動産全体について妨害の排除を請求できると読める判例もある
詳しくはこちら|第三者(共有者以外)の不正な登記の抹消請求の判例の集約

6 共有物の違法な差押に対する第三者異議訴訟

第三者が違法な差押の申立をすることにより,共有物が差し押さえられてしまうケースもあります。
違法な差押を受けた共有物が動産である場合には,執行官が共有物そのものを占有するので,共有者の全員が侵害された状態になります。
そこで,各共有者は単独で第三者異議訴訟を提起することができます。

<共有物の違法な差押に対する第三者異議訴訟>

あ 事案

共有物の共有者はA・Bであった
(共有物は動産であった)
Cが共有者の1人Aに対する債務名義を有していた
Cが共有物全体の差押を行った

い 第三者異議訴訟提起

第三者異議は執行の排除を求めるものである
保存行為に該当する
→Bは第三者異議の訴えを提起することができる
※東京高裁昭和63年11月7日

う 特殊性

『い』の第三者異議の対象は動産執行であった
動産執行の執行方法について
→目的動産の占有を執行官が取得するものである
共有持分だけを対象にすることができない

え 不動産を目的とする執行(参考)

執行の目的物が不動産である場合
→執行方法は登記や競売である
共有持分だけを対象にすることができる
→『い』と同じ判断が適用されない可能性も十分にある

本記事では,共有物が妨害(侵害)された場合に,共有者が持つ妨害排除請求権について説明しました。
実際には,細かい事情や主張・立証のやり方次第で結論が違ってくることがあります。
実際に共有物(共有不動産)に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。