1 入会権・入会財産に関する訴訟の共同訴訟形態(原告適格)
2 入会権確認訴訟の共同訴訟形態
3 入会権確認訴訟で入会権者の一部を被告とする方法
4 入会権確認訴訟における訴訟承継
5 総有権(入会権)確認訴訟における入会団体の原告適格
6 入会財産の登記請求訴訟における原告適格
7 構成員の使用収益権の確認・妨害排除請求の共同訴訟形態
8 用益物権の登記抹消請求の共同訴訟形態

1 入会権・入会財産に関する訴訟の共同訴訟形態(原告適格)

入会権についてはいろいろな法的問題があります。
詳しくはこちら|入会権・入会団体|全体・基本|所有形態
入会権に関する法的問題のひとつとして、共同訴訟形態があります。つまり、入会権や入会財産に関する訴訟の原告は誰なのか、入会権者の全員が原告になるのことが必要なのか(原告適格)という問題です。
本記事では入会権・入会団体に関する共同訴訟形態について説明します。

2 入会権確認訴訟の共同訴訟形態

最初に、入会権を確認する訴訟は固有必要的共同訴訟であると、昭和41年判例は判断しました。入会権者(構成員)の全員が原告になる必要がある、ということです。一部の構成員が協力しない場合には提訴自体ができなくなります。
この結論は、通常の共有の場合の共有権確認訴訟と同じです。

入会権確認訴訟の共同訴訟形態

あ 入会権確認訴訟の共同訴訟形態

入会権者が第三者を被告として、ある土地上に入会権が成立することの確認を求める訴訟は、固有必要的共同訴訟である
構成員全員が共同してのみ訴訟を申し立てることができる

い 入会権の性質の影響

入会権の性質によって結論は変わらない
例=共有の性質の有無
※最判昭和41年11月25日
※大判明治39年2月5日

う 「共有権」確認訴訟の共同訴訟形態(参考)

(通常の共有の)共有権(所有権)確認訴訟は固有必要的共同訴訟である
※最判昭和46年10月7日
詳しくはこちら|共有物に関する確認訴訟の当事者適格・共同訴訟形態

3 入会権確認訴訟で入会権者の一部を被告とする方法

固有必要的共同訴訟について一般論としていえることですが、一部の者(構成員)が提訴に協力しない場合に、提訴自体ができないという大きな支障があります。
この問題については、救済的な解釈が登場しています。それは、原告になってくれない構成員を、被告にするという方法です。つまり、構成員全員が、原告か被告かのどちらかになることで足りる、という解釈です。
ところで、筆界確定訴訟固有必要的共同訴訟であり、一部の共有者が原告になってくれないという問題がありました。これについて平成11年判例が、一部の共有者を被告とすること認めました。そして平成20年判例が、この扱いを入会権確認訴訟にも認めたという流れがあったのです。

入会権確認訴訟で入会権者の一部を被告とする方法

あ 事案

入会集団の構成員はA・Bである
土地甲が、入会地か第三者Cの所有地のいずれかということについて争いがある

い 確認訴訟提起の経緯

AはCに対して入会地であることの確認を求めたい
しかし、Bは提訴に賛同しない

う 確認訴訟提起の方法

AはB・Cを被告として提訴することができる
※最判平成20年7月17日

え 境界確定訴訟における同様の扱い(参考)

境界(筆界)確定訴訟において、共有者の一部が共有者である場合、それ以外の共有者を被告とすることができる
※最判平成11年11月9日
詳しくはこちら|共有物と共同訴訟形態(損害賠償・境界確定・地役権設定登記請求・賃料増減額)

4 入会権確認訴訟における訴訟承継

前述のように、入会権確認訴訟は構成員全員が当事者(原告または被告)になります。多くの人数が当事者となるのです。そうすると、訴訟中に、構成員(当事者)の1人が亡くなるということも起きやすいです。
この場合、新たに入会権を承継(取得)した者が訴訟の当事者になります。訴訟承継という手続です。
では、誰が入会権を承継したのか、ということが問題となりますが、入会団体では会則などの明文ルールがないことが多く、その場合、内部ルールは慣行(慣習)によって決める(解釈で慣行を読み取る)ことになります。
単位で入会団体の構成員となっていると読み取れる団体では、新たな世帯主が入会権を承継した、ということになります。

入会権確認訴訟における訴訟承継

あ 判例

原審の認定事実によれば、右被上告人らは、本件入会慣行に従つて、それぞれ死亡者に代わり世帯主となつて入会権を取得した者であるというのであるから、右被上告人らを民訴法二〇八条一項の「其ノ他法令ニ依リ訴訟ヲ続行スヘキ者」に準じて、それぞれの訴訟承継人と解した原判決は相当であり・・・
※最判昭和48年3月13日

い 入会権の承継者(参考)

入会権を承継する者は、入会慣行に従って定まる
入会団体では、世帯主が構成員となる会則や慣行がよくある
詳しくはこちら|入会団体の運用ルール(慣習・会則)と有効性(公序良俗違反)

5 総有権(入会権)確認訴訟における入会団体の原告適格

前述のように、入会権確認訴訟は構成員全員を当事者にしなければならないので、提訴の場面だけでなく、訴訟の遂行の場面でも、手間やリスク(当事者の漏れ)が大きいです。
この点、入会団体自体を原告にできるとこのような手間・リスクが大幅に軽減できます。この方法は、平成6年判例で最高裁が認めました。
結果的に、入会団体自体が原告となり、訴訟の遂行はその代表者が行う、という非常にシンプルな方法が可能となったのです。そのためには、団体として、代表者に対して訴訟遂行を授権することが必要です。具体的には総会を開催して、(代表者を決めて)代表者に対して訴訟の申立や遂行の権限を与える決議をする、ということです。もちろん実際には、代表者自身が訴訟行為を行うわけではなく、代表者が弁護士に依頼するということが多いです。

総有権(入会権)確認訴訟における入会団体の原告適格

あ 入会団体の原告適格(法定訴訟担当)

入会団体の総有権(入会権)確認請求訴訟について
入会団体が権利能力なき社団に該当する場合
入会団体は原告適格を有する

い 構成員からの授権

総有権確認請求訴訟を入会団体が追行する場合
代表者が構成員から授権を受けることが必要である

う 授権の内容

対象物の処分に必要な手続が必要である
例=規約による総会の議決
※最判平成6年5月31日

え 合有権確認訴訟への流用(参考)

団体に原告適格を認める方法は、民法上の組合の財産の所有関係(合有権)を確認する訴訟についても適用される可能性がある
詳しくはこちら|民法上の組合に関する訴訟の当事者適格・共同訴訟形態

6 入会財産の登記請求訴訟における原告適格

前述の平成6年判例では、登記請求の訴訟についても判断が示しました。団体として、登記名義を得る者として決定した者(構成員の1人)が原告適格を有するという判断です。登記請求訴訟について、入会団体(自体)が原告適格を有する、という判断がされたわけではありません。

入会財産の登記請求訴訟における原告適格

あ 規約による手続

入会団体の規約に定められた手続によって、Aが入会財産である不動産の登記名義人となると決められた
Aは入会団体の代表者ではない

い 原告適格

Aは登記手続請求訴訟の原告適格を有する
※最判平成6年5月31日

7 構成員の使用収益権の確認・妨害排除請求の共同訴訟形態

以上の説明は、入会財産全体の権利(入会権・総有権)を確認する、あるいは行使するという訴訟でした。
この点、入会団体の各構成員が持つ使用収益権の確認や行使(妨害排除請求権)は、団体全体が持つ権利(の行使)ではありません。あくまでも構成員個人の権利の行使です。そこで、各構成員が単独で権利を行使できることになります。訴訟としては、構成員1人だけで原告となることができます。
入会団体の構成員が、山林の芝刈りと石の採取をすることができるというケースでは、これらを行うことが(できることが)使用収益権の内容ということになります。このような使用収益権の確認を求める訴訟は、各構成員が単独で提起することができます。固有必要的共同訴訟ではないのです。

構成員の使用収益権の確認・妨害排除請求の共同訴訟形態

あ 使用収益権の確認・妨害排除請求の当事者適格

入会部落の構成員が入会権の対象である山林原野において入会権の内容である使用収益を行う権能は、入会部落の構成員たる資格に基づいて個別的に認められる権能であつて、入会権そのものについての管理処分の権能とは異なり、部落内で定められた規律に従わなければならないという拘束を受けるものであるとはいえ、本来、各自が単独で行使することができるものであるから、右使用収益権を争い又はその行使を妨害するものがある場合には、その者が入会部落の構成員であるかどうかを問わず、各自が単独で、その者を相手方として自己の使用収益権の確認又は妨害の排除を請求することができるものと解するのが相当である。

い 事案へのあてはめ(使用収益権の認定)

これを本件についてみると・・・当事者参加人らは、本件山林について入会権を有する山中部落の構成員の一部であつて、各自が本件山林において入会権に基づきその内容である立木の小柴刈り、下草刈り及び転石の採取を行う使用収益権を有しているというのであり、右使用収益権の行使について特別の制限のあることは原審のなんら認定しないところであるから、当事者参加人らの上告人及び被上告人神社に対する右使用収益権の確認請求については、当事者参加人らは当然各自が当事者適格を有するものというべく・・・
※最判昭和57年7月1日・山中浅間神社土地訴訟

8 用益物権の登記抹消請求の共同訴訟形態

前記の判例では、(入会権の確認とは別に)用益権登記を抹消する請求についても判断されています。用益権設定登記は各構成員の使用収益権を妨害してはいないので、構成員が単独で請求する(提訴する)ことはできないという判断です。
この判例ではここまでしか判断されていませんが、ここまでの判断を前提とすると、この登記抹消請求は固有必要的共同訴訟として構成員全員が当事者となるか、代表者が訴訟の当事者(法定訴訟担当)となる必要がある、ということになります。
なお、一般的な共有の場合、共有物が侵害されている場合、各共有者が単独で妨害排除請求権を行使できます(原告になれます)。入会権も「共有」の一種ですが、共有持分が存在しないという特殊性がある(総有である)ことで、このような違いが生じるのです。

用益権登記の抹消登記請求の共同訴訟形態

あ 使用収益権への侵害(否定)

・・・地上権設定仮登記の抹消登記手続請求の当否について検討するに、当事者参加人らが有する使用収益権を根拠にしては右抹消登記手続を請求することはできないものと解するのが相当である。
けだし、・・・当事者参加人らが入会部落の構成員として入会権の内容である使用収益を行う権能は、本件山林に立ち入つて採枝、採草等の収益行為を行うことのできる権能にとどまることが明らかであるところ、かかる権能の行使自体は、特段の事情のない限り、単に本件山林につき地上権設定に関する登記が存在することのみによつては格別の妨害を受けることはないと考えられるからである。

い 入会権の管理処分権の侵害(肯定)

もつとも、かかる地上権設定に関する登記の存在は、入会権自体に対しては侵害的性質をもつといえるから、入会権自体に基づいて右登記の抹消請求をすることは可能であるが、かかる妨害排除請求権の訴訟上の主張、行使は、入会権そのものの管理処分に関する事項であつて、入会部落の個々の構成員は、右の管理処分については入会部落の一員として参与しうる資格を有するだけで、共有におけるような持分権又はこれに類する権限を有するものではないから、構成員各自においてかかる入会権自体に対する妨害排除としての抹消登記を請求することはできないのである。
※最判昭和57年7月1日・山中浅間神社土地訴訟

う 共有物の返還請求の原告適格(参考)

(一般的な「共有」について)
共有物を第三者が不法に占有している(第三者名義の不実の登記がある)ケースで、返還(抹消登記請求)を請求する場合、各共有者が単独で原告となることができる
保存行為や不可分債権とみる解釈もあるが、現在では共有持分権の侵害という解釈が主流である
詳しくはこちら|共有者から第三者への妨害排除請求(返還請求・抹消登記請求・第三者異議訴訟)

本記事では、入会権や入会財産に関する訴訟の共同訴訟形態(原告適格)について説明しました。
実際には、個別的な事情によって、法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に入会権(共有の財産)に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。