離縁を求められた養子はどうすればよいか|総合ガイド

1 離縁を求められた養子はどうすればよいか|総合ガイド

養親から離縁を求められた養子の側では、応じるかどうかを決める前に確かめることがいくつもあります。離縁は届出だけで終わることもあれば、訴訟で争われることもあり、どちらに転ぶかで手元に残るものが違ってくるためです。
このガイドは、離縁を求められた側が判断していく順序に沿って、論点ごとの記事へ案内するものです。それぞれの結論とその根拠は案内先の記事が持っていますので、ここでは要点と行き先だけを示します。
そもそも養子縁組がどのように成立し、どのような効果を持つのかは、別の記事で説明しています。

養子縁組の基本(形式的要件・効果・典型的活用例)

2 判断の順序=応じる義務・対価・失うもの・訴訟の帰結

以下では、離縁を求められた側が立てる4つの問いの順に並べます。

第一の問いは、相手の請求に応じる義務があるかです。協議による離縁は養親と養子が合意して離縁届を出すことで成立しますので、一方が拒否すれば成立しません。相手が離縁を求め続けるのであれば裁判によることになり、そこでは民法814条1項の離縁原因があるかどうかが問われます。裁判所が離縁を認める事情については、別の記事で説明しています。

裁判による離縁が認められる事情(縁組を継続し難い重大な事由)

第二の問いは、請求権としての対価があるかです。離縁には、離婚のときの財産分与にあたる制度がありません。離縁のときに財産をもらえるのかは、別の記事で説明しています。

離縁のときに財産をもらえるのか|離縁に財産分与の制度はない

第三の問いは、応じると何を失うかです。離縁によって縁組で生じた親族関係が終了しますので、養親の相続について法定相続分と遺留分を失います。離縁すると何を失うのかは、別の記事で説明しています。

離縁すると何を失うのか|相続分・遺留分・遺贈の撤回擬制

第四の問いは、拒んだら訴訟でどうなるかです。訴訟では、双方に離縁の意思があるか、養親に対して権利を主張したことをどう見るか、離縁を求める側に破綻の原因があるかといった点が分かれ目になります。破綻の原因が自分の側にある当事者からの離縁請求がどう扱われるかは、別の記事で説明しています。

有責当事者からの離縁請求は認められるか|破綻主義の例外

3 協議離縁=双方の届出・拒否→不成立・裁判離縁=民法814条1項の離縁原因

養子縁組を解消する方法のうち最も単純なものが協議離縁で、養親と養子が離縁することに合意し、役所に離縁届を出すことで成立します。一方が拒否すれば、協議離縁は成立しません。
相手が離縁を求め続けるのであれば、家庭裁判所の手続に進みます。まず家事調停を申し立て、これが不成立となった場合に離縁の訴えを提起するのが通常の流れです。訴訟では、民法814条1項が定める離縁原因があるかどうかが判断されます。
離縁にどのような種類があるのかは、別の記事で説明しています。

離縁の種類|死後離縁|相続には影響なし・原則的に家裁の許可が得られる

(1)民法814条1項の離縁原因=悪意の遺棄・3年以上の生死不明・重大な事由

民法814条1項は、離縁の訴えを提起できる場合を3つに限っています。悪意の遺棄(1号)、3年以上の生死不明(2号)、その他縁組を継続し難い重大な事由(3号)です。実際に問題になるのはほとんどが3号で、その解釈と、実際に離縁が認められた事情の類型は、別の記事で説明しています。

裁判による離縁が認められる事情(縁組を継続し難い重大な事由)

(2)民法814条1項3号の「重大な事由」=客観的破壊(最判昭和40年5月21日)

3号の「縁組を継続し難い重大な事由」は抽象的な文言で、これに当てはめれば結論が出るような具体的な基準があるわけではありません。最高裁判所は昭和40年5月21日の判決で、経済的な扶養扶助、親子としての交際、精神的なつながりのすべてが失われた状態を養親子関係の客観的破壊と呼び、特段の事情がない限り3号の重大な事由があるとしました。この判決が何をどう判断したのかは、別の記事で説明しています。

最判昭和40年5月21日|養親子関係の客観的破壊と離縁

4 離縁に財産分与の制度なし・慰謝料=離縁に至ったことによる全損害

離婚のときの財産分与にあたる制度は、離縁にはありません。民法817条が離縁について準用しているのは祭具等の承継に関する769条だけで、財産分与の768条は本則のどこからも準用されていません。人事訴訟法や家事事件手続法の側にも、離縁の附帯処分として財産分与を求める根拠がありません。解釈で認めるべきだという学説はありますが、準用を認めた裁判例は見当たりません。離縁のときに財産をもらえるのかは、別の記事で説明しています。

離縁のときに財産をもらえるのか|離縁に財産分与の制度はない

金銭の請求として立つのは、慰謝料です。賠償の対象になるのは個々の虐待や侮辱から生ずる損害ではなく、離縁の止むなきに至ったことそのことによる全損害であるとされています。ただし賠償を要求できるのは、非が専らまたはより多く相手方に存する場合に限られます。離縁に伴う慰謝料を請求できるのかは、別の記事で説明しています。

離縁に伴う慰謝料は請求できるか|請求権としての対価

5 離縁→法定相続分・遺留分の喪失・遺贈→民法1023条2項の撤回擬制

離縁をすると、縁組によって生じた親族関係が終了します。養子は養親の子ではなくなりますので、養親が亡くなったときの法定相続分を失い、遺留分も失います。
養親が養子に遺贈する遺言を残していたときも、その遺贈が残るとは限りません。終生扶養を受けることを前提に遺贈がされていた場合、その後に協議離縁をしたことが遺言と抵触するものとして、民法1023条2項により遺贈が撤回されたものとみなされることがあります。
離縁すると何を失うのかは、別の記事で説明しています。

離縁すると何を失うのか|相続分・遺留分・遺贈の撤回擬制

6 離縁請求の訴訟|双方の離縁意思・権利行使・有責当事者からの請求

協議離縁を拒めば、相手は調停を経て離縁の訴えを提起することになります。訴訟でどう判断されるかは、養親子関係がどこまで壊れているかだけでなく、離縁を拒む側がそれまでに何をしてきたか、離縁を求める側に破綻の原因があるかによっても変わります。
本訴で養親が離縁を求め、反訴で養子が離縁と慰謝料を求めて、双方の請求がともに認められた事件もあります。この事件で裁判所が何をどう判断したのかは、別の記事で説明しています。

福島地判昭和32年1月18日|離縁の本訴・反訴の双方認容と慰謝料

(1)双方に離縁意思あり→民法814条1項3号の「重大な事由」の認定

離縁を求められた側も、実はもう縁組を続ける意思を持っていないことがあります。当事者双方が縁組を続ける意思を失っていること自体が、養親子関係の客観的な破綻の認定を支えるものとして働きます。対価を確保するために協議離縁の届出だけを拒んでいるという場合も同じで、その拒絶は離縁を止めません。双方が離縁を望むときに離縁が認められるかは、別の記事で説明しています。

双方が離縁を望むとき離縁は認められるか|民法814条1項3号の「重大な事由」

(2)養親への慰謝料請求・仮差押え→個々には「重大な事由」否定・総合考慮に算入

離縁を拒みながら、養親に対して慰謝料を請求したり、財産を仮に差し押さえたりすることがあります。こうした権利行使は、個々の行為として取り出せば重大な事由にはあたらないとされていますが、破綻したかどうかの総合考慮には入ります。養親子関係は、親子という打算によらない人間関係になぞらえて形成されたものだとされるため、夫婦の場合よりも破綻のあらわれとして受け取られやすい面があります。養親に権利を主張すると離縁事由になるのかは、別の記事で説明しています。

養親に権利を主張すると離縁事由になるのか|請求・保全と縁組の破綻

(3)有責当事者からの離縁請求→原則否定・被告に離縁意思あり→認容

養親子関係が壊れた原因が、離縁を求める側にあることもあります。民法814条1項3号は客観的な破綻を基準としていますが、破綻の原因が自分の側にある当事者からの離縁請求は、原則として認められないとされています。もっとも、この否認は限定的で、離縁を求められた側にも離縁の意思や意向があるときは、原因が相手方にあっても請求は認められます。有責当事者からの離縁請求が認められるかは、別の記事で説明しています。

有責当事者からの離縁請求は認められるか|破綻主義の例外

7 養子縁組の目的・縁組意思→有効性の判断・養親の死亡後→死後離縁

離縁の手前で、そもそも縁組が有効に成立していたのかが問題になることがあります。養子縁組は届出をすれば当然に成立するというものではなく、当事者に縁組をする意思があったかどうかが問われます。どのような目的で縁組がされ、それが縁組意思として認められたのかの実例は、別の記事で説明しています。

養子縁組の目的の実例と縁組意思(有効性)の判断(集約)

また、養親と養子の一方が亡くなった後に離縁をする死後離縁という手続もあります。家庭裁判所の許可を得て行うもので、すでに発生している相続には影響しません。離縁の種類と、死後離縁が許可される基準は、別の記事で説明しています。

離縁の種類|死後離縁|相続には影響なし・原則的に家裁の許可が得られる

8 おわりに

離縁を求められたときに確かめることを、応じる義務があるか、対価を請求できるか、応じると何を失うか、拒んだら訴訟でどうなるか、の順に並べました。それぞれの結論とその根拠は、案内した各記事にあります。
実際の事案では、縁組の目的や経緯、その後の生活の実情によって判断は変わります。裁判所が離縁を認める事情については、別の記事で説明しています。

裁判による離縁が認められる事情(縁組を継続し難い重大な事由)

本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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