有責当事者からの離縁請求は認められるか|破綻主義の例外
1 有責当事者からの離縁請求は認められるか|破綻主義の例外
養子縁組を解消することを離縁といいます。養親と養子が合意して届け出れば離縁は成立しますが、相手が応じないときは家庭裁判所に離縁の訴えを起こすことになり、法律が定める事情があると認められなければ離縁は認められません。ここで問題になるのが、養親子関係がうまくいかなくなった原因が自分の側にあると自覚している当事者から、離縁を求めることができるのかという点です。
この記事では、養親子関係が壊れた原因が全面的にまたは主として自分の側にある当事者、つまり有責の当事者からの離縁請求が認められるのかを説明します。結論を先に述べると、最高裁は、有責の当事者が無責の相手方を被告として、その意思に反して離縁を求めることは許されないという態度をとっています。裁判で離縁が認められるかどうかは客観的な破綻の有無で判断されるのが原則ですが、その原則には有責の当事者を締め出す限りが置かれているということです。
もっとも、この限りは狭く運用すべきものとされており、相手方にも離縁の意思があるときには当てはまりません。以下では、学説の対立、この法理が民法のどの規定の解釈として位置づけられているのか、そして否認が限定される場面を順に見ていきます。
裁判で離縁が認められる事情の全体と、その判断の枠組みについては、別の記事で説明しています。
裁判による離縁が認められる事情(縁組を継続し難い重大な事由)
2 民法814条1項3号|有責当事者の離縁請求→原則否定・被告に離縁意思あり→認容
この記事の答えを先にまとめます。表の中の「新版注釈民法」は、この記事が出典として引く中川善之助・山畠正男編『新版注釈民法(24)親族(4) 親子(2)養子』(有斐閣)のことです。この表は当事務所の整理で、各行の根拠はこの記事の本文にあります。
民法814条1項3号|有責当事者の離縁請求→原則否定・被告に離縁意思あり→認容
あ 有責当事者の離縁請求(自分の側に原因があるとき求められるか)
新版注釈民法は、成年養子の離縁では有責当事者の離縁請求は原則として否定されるべきだとする
い 3号との関係(客観的破綻の規定ではないのか)
民法814条1項3号は客観的な破綻を原因とする規定で、当事者の双方が無責であっても離縁を請求できる。新版注釈民法は、有責当事者の請求を否認する法理も、権利の濫用ではなく3号の「縁組を継続し難い重大な事由があるとき」の解釈の中に含まれていると構成する
う 否認の範囲(どこまで否認されるか)
新版注釈民法は、破綻主義が原則である以上、否認はきわめて限定的でなければならず、有責性ないし相対的有責性の認定は厳格でなければならないとする
え 相手方に離縁の意思があるとき(それでも否認されるか)
被告にも離縁の意思や意向があり、報復のためや財産的請求のために協議離縁に応じないだけの場合には、有責の原告からの離縁請求も認容されるとされている
お 未成年養子(成年養子と同じか)
新版注釈民法は、未成年養子では養子の福祉的養育が絶対的な判断基準であり、成年養子についての請求拒否の解釈論は本質的に妥当しないとする
3 民法814条1項3号|有責主義から破綻主義への移行と残された問い
裁判で離縁が認められるのは、民法814条1項が挙げる場合に限られます。1号と2号は悪意の遺棄と3年以上の生死不明という具体的な事情で、有責の当事者からの離縁請求が問題になるのは、その他の場合を受け止める3号です。
3号の文言は「その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき」というだけで、誰に原因があるかには触れていません。新版注釈民法は、この規定によって有責主義から破綻主義へ移ったといわれることを確認したうえで、では当事者の有責・無責をまったく問わないのか、という問いを立てています。
民法814条1項
縁組の当事者の一方は、次に掲げる場合に限り、離縁の訴えを提起することができる。
※民法814条1項
三 その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき。
※民法814条1項3号
3号による破綻主義への移行と、残された問い
3号の「重大な事由」によって有責主義から破綻主義に移行したといわれるが、その破綻主義とは養親子関係が文字通り客観的に破綻していると認定される限り、縁組当事者の有責・無責を全く問わずに離縁を認めるものであろうか。
※中川 善之助・山畠 正男編『新版 注釈民法(24)』有斐閣2010年 11月p529
4 破綻主義の出発点=双方が無責でも離縁請求は可能(最判昭和36年4月7日)
出発点は、当事者の双方が破綻の原因について無責であっても離縁を請求できる、という点です。新版注釈民法は、3号の「重大な事由」について最初に判断した最高裁昭和36年4月7日判決と、これを引き継いだ最高裁昭和37年8月3日判決を挙げ、その意味を次のように整理しています。
新版注釈民法は、これらの判決はそれ以上に出るものではなかったとしており、有責の当事者からの離縁請求をどう扱うかは、ここから先の問題として論じられることになります。
双方が無責でも「重大な事由」を主張して離縁を請求できる
これらの判決は、客観的事由による縁組破綻の故に、原告も被告も破綻事由につき無責であっても、原告は「重大な事由」に該当することを主張して離縁を請求することができるという態度を明らかにしたものである。
※中川 善之助・山畠 正男編『新版 注釈民法(24)』有斐閣2010年 11月p530
5 判例の経過=有責当事者の離縁請求は許されないとの態度が確定
有責の当事者からの離縁請求をどう扱うかは、裁判離縁の判例の中心的なテーマになりました。最高裁は、有責者が無責者の意思に反して離縁を求めることは許されないという態度をとり、この態度は判例として確定しています。その経過と、下級審に認容の例があることは、別の記事で説明しています。
6 学説=消極的破綻主義・客観的破綻主義・目的的破綻主義の三説
学説は、多数が判例の立場を支持しているとされますが、離縁の場面での破綻主義の理解をめぐって3つに分かれていると整理されています。
学説は3つに分かれている
多数説は判例の立場を支持しているが、離縁においては、離婚に関する破綻主義原理とパラレルに構成する二つの見解に加えて、縁組の目的から考察しようとする見解もあって、三つに分かれている。
※中川 善之助・山畠 正男編『新版 注釈民法(24)』有斐閣2010年 11月p533
(1)消極的破綻主義(否定説)=離縁権の濫用として許されない
1つ目は、判例を支持する見解です。高度の破綻主義を建前としては認めながら、自ら招いた縁組関係の破綻を理由とする有責当事者からの離縁請求は、離縁権の濫用として許されないと説くものだと紹介されています。
消極的破綻主義(否定説)
これは判例を支持する見解で、建前として高度の破綻主義を認めたうえで、ただ「自ら招ける縁組関係の破綻を理由とする有責当事者からの離縁請求は」、「吾人の社会的倫理観(縁組関係の倫理性)ないし公序良俗に反するものとして許容さるべきではないこと離婚の場合と何等異らない」のであって(太田・前掲〔判批〕民商45巻5号86)、かかる離縁請求は離縁権の濫用として許されないと説く(太田・総判民(15)312、同じく中川473・474)。
※中川 善之助・山畠 正男編『新版 注釈民法(24)』有斐閣2010年 11月p533
(2)客観的破綻主義(肯定説)=完全な客観的破綻があれば有責当事者も可
2つ目は、破綻主義を徹底する見解です。養親子関係が完全にかつ客観的に破綻している場合に限り、無責の当事者だけでなく有責の当事者からも離縁を請求できると解するものだとされています。
客観的破綻主義(肯定説)
この見解は離縁原因における有責主義の後退・破綻主義への進展は歴史的過程であって、破綻主義を徹底すべきであるから、完全にして客観的に養親子関係が破綻している場合に限り、無責当事者のみでなく有責当事者からも離縁の請求が許されると解する(中川淳〔判批〕・立命法学47号〔昭38〕115、同・前掲書227、山本・前掲〔判批〕117-118)。
※中川 善之助・山畠 正男編『新版 注釈民法(24)』有斐閣2010年 11月p534
(3)目的的破綻主義=未成年養子と成年養子の区別・有責主義法理は不要
3つ目は、離婚の破綻主義をそのまま離縁に持ち込むことに反対し、縁組が一定の目的をもつ行為であることから離縁固有の法理を立てようとする見解です。未成年養子では子の福祉、成年養子では縁組が意図した目的の達成を基準にすればよく、有責主義の法理を持ち出す必要はないという主張だと整理されています。
目的的破綻主義
要するに未成年養子と成年養子を区別して取り扱い、さらに有責主義法理を持ち出す必要性はないと主張する。
※中川 善之助・山畠 正男編『新版 注釈民法(24)』有斐閣2010年 11月p534
7 新版注釈民法の私見=成年養子では有責当事者の離縁請求は原則として否定
新版注釈民法は、これらの見解のうち、未成年養子の離縁と成年養子の離縁を区別して扱う構想は支持されるべきだとしたうえで、成年養子の離縁について次のように述べています。
この否定は破綻主義を捨てるものではありません。破綻主義が離縁原因法の基本原理であることを前提に、それを補正する法理として位置づけられています。
成年養子の離縁における有責当事者の離縁請求は原則として否定
そこでまず、成年養子の離縁における有責当事者の離縁請求から考察してみよう。
結論を先に掲げれば、有責当事者の離縁請求は原則として否定されるべきである。
※中川 善之助・山畠 正男編『新版 注釈民法(24)』有斐閣2010年 11月p534〜535
破綻主義を補正する法理として承認されるべき
こうして、破綻主義が離縁原因法の基本原理であることはもちろんであるが、破綻主義を補正して、離縁原因の具体的妥当性を満たす法理として、有責当事者の離縁請求権否認の法理が承認されるべきである。
※中川 善之助・山畠 正男編『新版 注釈民法(24)』有斐閣2010年 11月p535〜536
(1)否認の根底的理由=縁組維持義務の相互拘束性にもとづく衡平の原理
否定の根拠として挙げられているのは、成年の養子と養親は家族法的に対等の関係に立ち、縁組を維持すべき私法上の義務を相互に負っている、という理解です。その拘束が相互的であることから、破綻という結果だけでは判断できないものがあるとされます。
新版注釈民法は、この相互拘束性を基本にすると、否認のより根底的な理由は衡平の原理であるとし、最高裁昭和40年5月21日判決の「身分法を貫く正義の原則」もこれを指すものだとしています。
否認のより根底的な理由は衡平の原理
ことに上に述べたように、私法上の義務としての相互拘束的な縁組維持義務を基本にして考察するとき、有責当事者の離縁請求否認のより根底的理由は、衡平の原理であると考えられる。
※中川 善之助・山畠 正男編『新版 注釈民法(24)』有斐閣2010年 11月p535
「身分法を貫く正義の原則」=衡平の原理
前掲最高裁昭和40年5月21日判決が「身分法を貫く正義の原則」と表現したところのものは、この衡平の原理である。
※中川 善之助・山畠 正男編『新版 注釈民法(24)』有斐閣2010年 11月p535
(2)権利濫用ではなく民法814条1項3号の解釈内容としての位置づけ
この法理を現行法のどこに収めるかについて、新版注釈民法は、3号を客観的破綻主義と固定して権利濫用の法理などの一般条項に救済を委ねる道をとりません。権利濫用禁止の原則は新しい解釈法理が確立するまでの架橋的な存在だとして、3号の解釈内容として位置づけるべきだとしています。
権利濫用は架橋的存在=3号の解釈内容として位置づける
しかし権利濫用禁止の原則は、新しい解釈法理の確立されるまでの架橋的存在であるから、3号の解釈内容として、有責当事者の離縁請求否認の法理を位置づけ展開すべきである。
※中川 善之助・山畠 正男編『新版 注釈民法(24)』有斐閣2010年 11月p536
法理は3号の「縁組を継続し難い重大な事由があるとき」に含まれる
つまり、この法理は、3号の「縁組を継続し難い重大な事由があるとき」の中に、含まれているとの解釈論を立てるべきである。
※中川 善之助・山畠 正男編『新版 注釈民法(24)』有斐閣2010年 11月p536
(3)民法814条1項3号の「縁組を継続し難い」=原告にとって耐えがたい状態
3号の解釈として組み立てる道筋は、条文の文言の読み方から始まります。新版注釈民法は、814条1項の法文構成から、「縁組を継続し難い」とは原告にとって縁組を継続することが耐えがたいということであり、それが法的に是認される状態になっていることを意味すると読みます。
「縁組を継続し難い」の意味
まず3号にいう「縁組を継続し難い」とは本条1項の法文構成からして、原告にとって継続しがたいということ、つまり原告にとって、縁組を継続することが耐えがたいということが、法的に是認される状態になっているということを意味すると解釈される。
※中川 善之助・山畠 正男編『新版 注釈民法(24)』有斐閣2010年 11月p536
(4)有責原告の請求→民法814条1項3号の原因を欠く請求として拒否
そうすると、自分が破綻の原因を作りながらそれを耐えがたいと主張することは、衡平の理念に立つ法の是認しないところとなります。有責の当事者からの離縁請求は、権利の濫用として退けられるのではなく、そもそも3号の原因を欠く請求として退けられることになる、というのが新版注釈民法の構成です。
有責当事者の離縁請求は3号の原因を欠く請求として拒否される
したがって、原告だけが、または原告が主として破綻事由を生じさせていながら、それを耐えがたいと主張することは、衡平の理念に立つ法の是認しないところであるから、有責当事者の離縁請求は3号の原因を欠く請求として拒否されることになるのである。
※中川 善之助・山畠 正男編『新版 注釈民法(24)』有斐閣2010年 11月p536
8 否認は限定的・有責性の認定は厳格=考慮すべき点は3つ
もっとも、この法理が広く働くわけではありません。新版注釈民法は、破綻主義を原則とする現行の離縁原因法のもとでは否認はきわめて限定的でなければならず、有責性ないし相対的有責性の認定も厳格でなければならないとしています。
衡平の理念は養親子関係を支配する信義則の法理にもとづくもので、まったく例外を認めないものではないとされ、有責の当事者からの離縁請求を認めた新潟地方裁判所高田支部の平成4年5月21日の判決のように、否認の法理に柔軟性を加える動きが出てくることもあると述べられています。
否認は限定的・有責性の認定は厳格
しかも破綻主義を原則とする現行離縁原因法にあっては、有責当事者の離縁請求の否認はきわめて限定的でなければならないし、有責性ないし相対的有責性の認定は厳格になされなければならない。
※中川 善之助・山畠 正男編『新版 注釈民法(24)』有斐閣2010年 11月p537
否認の法理に柔軟性を加える動き
ただ、ここにいう衡平の理念は、基本的には、養親子関係を支配する信義則の法理にもとづくものであり、この法理は全く例外を認めないものではないのであるから、前述の新潟地裁高田支部判決のように、有責当事者の離縁請求を認めないとの法理に柔軟性を加える動きが出てくることもあると考えるべきであろう。
※中川 善之助・山畠 正男編『新版 注釈民法(24)』有斐閣2010年 11月p537
(1)被告にも離縁の意思・意向あり→報復・財産的請求のための拒絶では有責原告も認容
1つ目は、相手方の意思です。有責の当事者からの離縁請求が拒否されるのは、それが被告の意思に反する場合だからであって、被告にも離縁の意思や意向があるときは事情が変わります。報復のためや財産的な請求のために協議離縁に応じないというだけの場合には、有責の原告からの離縁請求も認容されるとされています。
双方が離縁を望んでいる場合の扱いは、別の記事で説明しています。
双方が離縁を望むとき離縁は認められるか|民法814条1項3号の「重大な事由」
被告にも離縁の意思・意向があるときは有責原告の請求も認容
a有責当事者の離縁請求が拒否されるのは、被告の意思に反する場合であるから、被告にも離縁の意思ないし意向があるときには、単に報復のためとか財産的請求のため離縁に応じないというような場合には、有責原告の離縁請求も認容される(前掲最判昭39・8・4参照)。
※中川 善之助・山畠 正男編『新版 注釈民法(24)』有斐閣2010年 11月p537
(2)有責行為と縁組破綻の間の因果関係が必要
2つ目は、因果関係です。有責とされるためには、破綻が原告の故意または過失のある行為にもとづいて生じたという関係がなければならないとされています。
有責行為と縁組破綻との間の因果関係
b破綻が原告の故意もしくは過失ある行為にもとづいて生じたという、有責行為と縁組破綻との間に因果関係がなければならない。
※中川 善之助・山畠 正男編『新版 注釈民法(24)』有斐閣2010年 11月p537
(3)相対的有責性の認定は困難=拒否は責任の差がきわめて大きい場合に限定
3つ目は、双方に責任があるときの比較です。原告の有責の度合いが被告より大きいという認定はきわめて困難であることから、責任の差がきわめて大きい場合に限って離縁請求を拒否するという、厳格で限定的な運用が求められるとされています。
責任の差がきわめて大きい場合に限って拒否する
c原告・被告双方共に有責であるが、原告の有責の度合が被告より大きいということの認定は、きわめて困難であるから、責任の差がきわめて大きい場合に限って、その離縁請求を拒否するというように、有責当事者の請求否認の法理の厳格限定的運用を心がけなければならない。
※中川 善之助・山畠 正男編『新版 注釈民法(24)』有斐閣2010年 11月p537〜538
9 未成年養子=養子の福祉が絶対的基準・有責当事者の法理は本質的に妥当しない
ここまでは、成年の養子との離縁の話です。未成年の養子との離縁では、縁組が破綻しているかどうかの基準が養子の福祉に置かれるため、有責当事者の問題の扱いも変わります。
新版注釈民法は、養子の福祉的な養育が離縁を認めるべきかどうかの絶対的な判断基準であって、有責当事者の請求であること自体は決定的な基準ではないとしています。有責な養親からの離縁請求であっても、縁組が全く破綻していて、それを継続することが未成年者にますます不利益となるときは認容すべきだとされます。成年養子についての請求拒否の解釈論は、対等な当事者の相互的な縁組維持義務を前提にした議論なので、未成年養子の離縁には本質的に妥当しないという整理です。
養子の福祉的養育が絶対的判断基準=有責当事者の請求か否かは決定的でない
つまり、養子の福祉的養育が離縁を認めるべきかどうかの絶対的判断基準なのであって、有責当事者の請求であるということそれ自体は、決定的な基準ではない。
※中川 善之助・山畠 正男編『新版 注釈民法(24)』有斐閣2010年 11月p538
成年養子についての解釈論は未成年養子には妥当しない
しかるに成年養子の離縁の場合の有責当事者の請求拒否の解釈論は、対等者間の相互的縁組維持義務を前提とした議論であるので、未成年養子の離縁の場合には、本質的に妥当しないのである。
※中川 善之助・山畠 正男編『新版 注釈民法(24)』有斐閣2010年 11月p538
10 有責配偶者からの離婚請求|民法770条1項5号の判断基準(参考)(概要)
有責の当事者が自分から関係の解消を求めるという問題は、離婚の側にもあります。ただし離婚の側は、有責配偶者からの離婚請求を認めるかどうかの判断基準として別に組み立てられていて、要件の立て方が違います。離婚の側の判断基準と、判例がそこに至るまでの経過については、別の記事で説明しています。
有責配偶者の離婚請求に関する判例の歴史(否定から肯定への変化)
11 おわりに
養親子関係が客観的に破綻していれば離縁が認められるのが原則で、当事者の双方が無責であっても離縁を請求できます。その原則の上に、有責の当事者が無責の相手方の意思に反して離縁を求めることは許されないという限りが置かれており、新版注釈民法はこれを、権利の濫用ではなく民法814条1項3号の解釈の中に含まれるものとして構成しています。
一方で、この限りは狭く運用すべきものとされています。相手方にも離縁の意思があるとき、有責行為と破綻との間に因果関係がないとき、責任の差が大きいとまではいえないときには、有責とされる側からの離縁請求にも認められる余地があります。自分の側に原因があることが、それだけで離縁の道を閉ざすわけではないということです。
本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。
本記事の引用は、書籍・判例などの原文から範囲を選んで載せたものです。改行の位置は読みやすさのために当方で整えており、原文の改行と同じとは限りません。また、記号や外字の扱いにより、文字の一部が原文と異なって表示されることがあります。
本記事の表示では、読点を「、」に統一しています(引用の原文が全角の「,」や半角の「,」である場合を含みます。ただし「1,000」のような桁区切りはそのまま表示しています)。
2021年10月発売 / 収録時間:各巻60分
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