1 相続財産管理人の保全的な職務の典型例
2 相続財産管理人の保全的な職務の具体例
3 相続財産法人への不動産移転登記

1 相続財産管理人の保全的な職務の典型例

相続人が存在しないケースでは,相続財産管理人が選任されることがあります。
典型例は,被相続人に対する債権者が債権回収のために家裁に選任請求をするケースです。
詳しくはこちら|相続債権者による相続財産管理人の選任手続と換価・配当の流れ
相続財産管理人の行う職務は,財産の換価や弁済だけではありません。
財産の保全や維持のための,文字どおり『管理』そのものといえる職務もあります。
本記事では,このような相続財産管理人による保全的な職務の内容を説明します。

2 相続財産管理人の保全的な職務の具体例

一般的に,財産は所有しているだけで責任やコストを負担します。
詳しくはこちら|空家・土地放置問題|弊害・原因・所有者のコスト・責任
無駄な責任やコストを負わないように,就任直後から相続財産管理人は細かい措置をとる必要があります。

<相続財産管理人の保全的な職務の具体例>

あ 就任直後で行う事務の例

継続的契約を解約(解消)する
ア 新聞
イ 電気・ガス・水道の供給契約
ウ 電話
エ 借家(建物賃貸借)
※財産管理実務研究会編『不在者・相続人不存在財産管理の実務 新訂版』新日本法規出版2005年p150,p138;相続財産管理報告書(参照)

い 状況に応じて行う事務の例

ア 固定資産税を支払う
イ 火災保険に加入する
ウ 家屋を修繕する
エ 伸び放題になった雑草を刈る
オ 賃貸中の物件の家賃を徴収する
※財産管理実務研究会編『不在者・相続人不存在財産管理の実務 新訂版』新日本法規出版2005年p151

3 相続財産法人への不動産移転登記

相続財産管理人は不動産の登記を移転することも必要です。
例えば,相続放棄をした(形式的な)相続人が登記上の所有名義人となっていると,相続人に固定資産税が課税されます。
詳しくはこちら|固定資産税の賦課期日や建物の新築基準時点と台帳課税主義
また,建物の損壊や木などの植物の管理不備により第三者が損害を受けた場合も,登記上の所有者が責任を負う可能性があります。
詳しくはこちら|土地工作物責任の全体像(条文規定・登記との関係・共同責任)
詳しくはこちら|竹木の管理不備による占有者・所有者の責任の解釈と具体例
いずれも,後から清算が必要になってしまいます。
このような無駄な業務が発生しないためにも,移転登記はすみやかに行うべきなのです。

<相続財産法人への不動産移転登記>

あ 移転登記の必要性

相続財産の中の不動産について
登記名義を相続財産法人名義にしておく必要がある
保存行為or清算行為の前提として行う
相続財産管理人が登記申請をする
※財産管理実務研究会編『不在者・相続人不存在財産管理の実務 新訂版』新日本法規出版2005年p194

い 登記申請の時期

登記を申請する期限についての規定はない
早い時期に法人名義にしておくべきである
※財産管理実務研究会編『不在者・相続人不存在財産管理の実務 新訂版』新日本法規出版2005年p195