1 『債務者』が亡くなった場合は『差押』ができない
2 相続人が不存在,不明,という場合は相続財産管理人選任の申し立てができる
3 相続財産管理人選任の手続の流れ
4 相続財産管理人による配当手続
5 相続財産管理人;配当;無剰余→按分配当
6 相続財産管理人による配当→剰余金の行方

1 『債務者』が亡くなった場合は『差押』ができない

<典型事例>

私(A)はBにお金を100万円貸していました。
Bは預金・不動産などの財産を多く持っていたので安心していました。
最近Bが亡くなりました。Bの子・兄弟はみな相続放棄をして,相続人が居ない状態です。
どうやってお金を返してもらえば良いのでしょうか。

1 『債務者』が亡くなった場合は『差押』ができない

財産はあっても,亡くなった方の名義のままでは,差押などができません。
既に亡くなった方の所有物ではないからです。

原則的に,相続人の所有物になっているはずです。
相続人が居れば,承継した相続人を相手方として差押などができます。

2 相続人が不存在,不明,という場合は相続財産管理人選任の申し立てができる

しかし,相続人が居ない場合『宙に浮いたまま』となるのです。
この点,親子などの身分関係が当事者の死後に生じることもあります。
詳しくはこちら|死後の認知|全体|認知を回避or遅らせる背景事情
そのため,戸籍上は相続人がいないように見えても,実際には相続人が存在するということもあるのです。
このように相続人の存在が不明である場合,家庭裁判所に相続財産管理人を選任してもらうことができます

<家裁による相続財産管理人選任の手続>

あ 要件

次のいずれかに該当する
ア 相続人が存在しない
イ 相続人が存在するかどうかが不明である

い 申立人

ア 利害関係人
典型例は『債権者』である
イ 検察官
詳しくはこちら|相続人不存在のケースで相続財産管理人の選任を請求できる者

う 家裁の決定

家庭裁判所が審理する
→『相続財産管理人』を選任する
※民法951条,952条
別表第1事件として分類されている
詳しくはこちら|家事調停・審判の種類の分類(別表第1/2事件・一般/特殊調停)

申立の際には,100万円程度の予納金が必要になることもあります。
詳しくはこちら|相続財産管理人の選任申立に要する費用(予納金など)

3 相続財産管理人選任の手続の流れ

相続財産管理人が選任される手続の流れを説明します。
全体で1年程度を要します。

<相続財産管理人の主な手続きフロー>

あ 相続財産管理人の選任

家庭裁判所が,相続財産管理人選任の審判を行う
相続財産管理人が選任されたことを知らせるための公告をする
↓2か月経過

い 債権者・受遺者に向けた公告

相続財産管理人は,相続財産の債権者・受遺者を確認するための公告をする
↓2か月経過

う 相続人に向けた公告

家庭裁判所は,相続人を捜すため,6か月以上の期間を定めて公告をする
→期間満了までに相続人が現れなければ,相続人がいないことが確定する
特別縁故者に対する相続財産分与の申立てがされることがある
財産管理人は,裁判官の許可を得て,被相続人の不動産や株を売却し,金銭に換える
財産管理人は,債権者や受遺者への支払,特別縁故者への相続財産分与を行う
相続財産が残った場合は,共有者への持分移転や相続財産を国に引き継いで手続が終了する
詳しくはこちら|相続人不存在の国庫帰属の引き継ぎ先と権利移転タイミング

4 相続財産管理人による配当手続

債権者として,相続財産管理人の選任申立をすることがあります。
この場合の手続について説明します。

相続財産管理人を相手方として差押をする,という発想があります。
しかし,差押の必要はありません。
相続財産管理人が財産を債権者に配当することになります。

相続財産管理人は,『破産管財人』と似ている業務を行います。
財産を売却するなどして金銭に換えて,債権者に配当してくれるのです。
既に基本的な相続財産管理人の業務フローに含まれているのです。

5 相続財産管理人;配当;無剰余→按分配当

債権者が多く,相続財産で返済しきれない場合は按分配当となります。
全額は弁済されないことになります。
相続財産管理人が財産換価,債権額の集計をして,債権額の割合に応じて弁済します。
※民法957条2項,929条

6 相続財産管理人による配当→剰余金の行方

債権者への配当後,財産が余ることもあります。
この場合の行方は法律上規定されています。

<相続財産管理人が行う,配当後の財産の処理>

※優先順序はこのとおりです。

あ 特別縁故者への付与

被相続人との関係が濃厚であったが相続人ではない人について
例=内縁の妻
→遺産が承継されることがある
※民法958条の3

い 他の共有者への持分移転

共有物についてだけ適用される
民法255条

う 国庫帰属

最終的に遺産は国庫に帰属する
詳しくはこちら|相続人不存在では遺産は特別縁故者か共有者か国庫に帰属する
※民法959条