1 相続財産管理人の選任請求者
2 相続財産管理人の選任請求者
3 検察官が相続財産管理人の選任を請求する例
4 一般的な利害関係人の具体例
5 事務管理者による相続財産管理人の選任請求
6 公的機関である利害関係人(選任請求)の例
7 相続人による相続財産管理人の選任請求

1 相続財産管理人の選任請求者

相続人が存在しないケースでは,原則的に相続財産を管理する人もいない状態になります。
そこで,家庭裁判所が相続財産管理人を選任することができます。
典型的な活用例として,被相続人の債権者が債権回収のために相続財産管理人の選任請求をするケースがよくあります。
詳しくはこちら|相続債権者による相続財産管理人の選任手続と換価・配当の流れ
本記事では,相続財産管理人の選任請求ができる者について説明します。

2 相続財産管理人の選任請求者

相続財産管理人の選任を家庭裁判所に請求できる者は,条文上,利害関係人と検察官とされています。

<相続財産管理人の選任請求者>

あ 条文規定

家庭裁判所に相続財産管理人の選任を請求する者について
→利害関係人or検察官
※民法952条1項

い 利害関係人の意味

相続財産の帰属について法律上の利害関係を有する者
※谷口知平ほか編『新版 注釈民法(27)相続(2)補訂版』有斐閣2013年p688

3 検察官が相続財産管理人の選任を請求する例

検察官が相続財産管理人の選任を請求するのはレアケースです。

<検察官が相続財産管理人の選任を請求する例>

あ 事例

旅行者が死亡した
所持金などを有していた
本籍・氏名・住所などが一切不明である

い 公的見解

検察官が相続財産管理人選任を請求すべきである
※法曹会決議昭和9年7月6日

4 一般的な利害関係人の具体例

相続財産管理人の選任を請求する『利害関係人』の具体例にはいろいろな者が含まれます。
分類して整理します。

<一般的な利害関係人の具体例>

あ 相続人に近い立場の者

ア 包括・特定受遺者
包括受遺者がいる場合でも相続人不存在に該当する
※東京地裁昭和30年8月24日
イ 特別縁故者
ウ 遺言執行者

い 相続財産を取得する予定の者

ア 相続債権者
イ 相続財産上の担保権者
ウ 被相続人からの物権取得者
いまだ対抗要件を得ていない場合
→所有権移転登記請求権を有する
※盛岡家裁昭和52年3月24日
エ 被相続人の債務の保証人
被相続人に対して求償権を有するため

う 相続財産への弁済予定の者

相続債務者

え 事務管理者(後記※1)

※谷口知平ほか編『新版 注釈民法(27)相続(2)補訂版』有斐閣2013年p688
※財産管理実務研究会編『不在者・相続人不存在財産管理の実務 新訂版』新日本法規出版2005年p122

5 事務管理者による相続財産管理人の選任請求

事務管理者も『利害関係人』として相続財産管理人の選任を請求できます(前記)。
具体的には,現実に相続財産を管理している者や葬儀を行い,費用を負担した者が典型例です。

<事務管理者による相続財産管理人の選任請求(※1)>

あ 具体例

ア 相続財産を事実上管理している者
イ 相続財産が負担すべき費用を支出した者
例=葬儀を行った
詳しくはこちら|葬儀費用の負担者や香典の帰属の見解(全体)と税務上の扱い

い 法的な関係

事務管理の関係となる
※民法697条

う 相続財産との権利義務

受取物の引渡義務・費用償還請求権がある
※民法701条,645〜647条,702条

え 相続財産管理人の選任請求権

『あ』の者は『利害関係人』(民法952条1項)に該当する
→相続財産管理人の選任を請求できる
※財産管理実務研究会編『不在者・相続人不存在財産管理の実務 新訂版』新日本法規出版2005年p123

6 公的機関である利害関係人(選任請求)の例

やや変わった者が相続財産管理人の選任を請求することもあります。
国や地方自治体などの公的機関が利害関係人として選任請求をすることも認められています。

<公的機関である利害関係人(選任請求)の例>

あ 国庫

徴税事務などの個別的な国の事務を行う機関
→『利害関係人』に含まれる
否定する見解もある
※谷口知平ほか編『新版 注釈民法(27)相続(2)補訂版』有斐閣2013年p689

い 都道府県知事

土地(私有地)の相続人が不存在である
この土地を公共用地として取得する
例=道路工事or河川工事に関して
→都道府県知事も利害関係人に該当する
※昭和38年12月28日家二163号回答

う 市町村長

土地(私有地)の相続人が不明である
この土地を道路敷地として買収する
→道路管理者(町村長)は利害関係人に該当する
※法曹会決議昭和11年3月25日

7 相続人による相続財産管理人の選任請求

以上の説明は相続人が不存在である時の相続財産管理人の選任請求についてのものでした。
そこで相続人が選任請求をするということは想定していません。
一方,相続人が家庭裁判所に保存に必要な処分を請求する手続があります。
これによって,家裁が相続財産管理人を選任することもあります。
詳しくはこちら|相続財産の管理(相続人による管理と家裁による保存に必要な処分)
ところで,相続放棄をした(形式的な)相続人は,その後,管理責任だけは負います。
詳しくはこちら|相続放棄をした者も相続財産の管理義務を負う(管理継続)
また,固定資産税の納付義務も負ったままです。
詳しくはこちら|固定資産税の賦課期日や建物の新築基準時点と台帳課税主義
そこで,相続人不存在という状態で経済的な利害関係があるといえるでしょう。
そこで,相続人不存在における相続財産管理人の選任も,利害関係人として請求できると思われます。