1 相続|真実と登記の食い違い|基本
2 法定相続登記|相続人1名による単独申請|概要
3 相続×対抗関係|全体|概要
4 相続×対抗関係|まとめ|概要
5 相続×対抗関係|状況別説明|リンク
6 遺言内容vs相続人の処分|具体例|概要

1 相続|真実と登記の食い違い|基本

相続に関して『真実ではない内容の登記』が生じることがあります。
本記事では『真実と登記の食い違い』の原因や法的扱いを説明します。
まずは『真実とは異なる登記』が生じるプロセス・要因を整理します。

<相続|真実と登記の食い違い|基本>

あ 食い違い|基本

相続に関して次の2つの食い違いが生じることがある
ア 真実の権利関係
イ 登記上の権利の状態

い 食い違い|発生プロセス

『法定相続による登記申請』(※1)がされてしまう
その後,次の『ア・イ』いずれかのイベントが起きた
→その結果,『法定相続とは異なる状態』となった
ア 遺言が発見された
イ 遺産分割が完了した

う 登記申請×背景の調査

登記官は原則的に形式的審査権限しか持たない
→登記申請の『背景=実態の調査・質問』などはしない
例;遺言の有無・遺産分割協議の状況→調査しない
→形式的要件さえ満たせば申請どおりに登記が実行されてしまう

2 法定相続登記|相続人1名による単独申請|概要

法定相続の登記申請は,相続人のうち1名だけでも申請できます。
相続人1名が単独で『相続人全員分』の登記を申請できるのです。
これが,後で『真実との不一致』につながることが多いのです。
詳しい内容は別に説明しています。
詳しくはこちら|相続に関する登記申請|非協力者の存在×証書真否確認訴訟・給付訴訟

3 相続×対抗関係|全体|概要

以上のような事情で『真実と異なる相続登記』が生じます。
生じた場合は当然,権利関係がどうなるのかは大きな問題です。
この場合の法律的な解釈論はちょっと複雑です。
法律の適用・解釈の全体をまとめます。

<相続×対抗関係|全体|概要>

あ 対抗要件|概要

ア 対抗関係における優劣
『対抗関係』である場合
→不明確な権利関係について登記で判断する
詳しくはこちら|対抗要件・登記の基本|種類・獲得時期・不完全物権変動・単純/背信的悪意者
イ 対抗関係以外
『対抗関係』ではない場合
→登記の有無は関係ない

い 相続×対抗関係

相続に関する権利の帰属の問題について
→状況によって『対抗関係に該当するorしない』が異なる

原則的に登記は『対抗要件』の代表的なものです。
『登記を取得した方が優先』というルールが適用されます。
『対抗関係』と呼びます。
しかし相続の場合『対抗関係』となる場合,ならない場合があるのです。

4 相続×対抗関係|まとめ|概要

相続に関する『真実と異なる登記』の扱いの分類を整理します。
『対抗関係』となるもの,ならないものの大まかな分類です。

<相続×対抗関係|まとめ|概要>

状況 対抗関係となるか否か 第三者保護規定の有無
遺言執行者選任あり 対抗関係ではない=遺言優先 なし
法定相続・相続一般 対抗関係ではない なし
相続させる遺言 対抗関係ではない なし
特定遺贈 対抗関係となる
遺産分割(前) 対抗関係ではない あり(※2)
遺産分割(後) 対抗関係となる
遺留分減殺(前) 対抗関係ではない あり(※3)
遺留分減殺(後) 対抗関係となる

※2 民法909条ただし書
※3 民法1040条1項

これは大まなか判断の傾向です。
具体的な事情によって異なる判断となることもあります。

5 相続×対抗関係|状況別説明|リンク

上記のように,状況によって『対抗関係』かどうかが異なります。
状況の種類ごとに,別の記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|遺言執行者×抵触行為・相続人による処分の有効性
詳しくはこちら|相続×対抗関係|基本|相続一般・法定相続
詳しくはこちら|相続×対抗関係|遺言による承継|相続させる遺言・遺贈
詳しくはこちら|遺産を取得した第三者と遺産分割の優劣の全体像
詳しくはこちら|遺留分×第三者保護|基本|適用対象・価額賠償

6 遺言内容vs相続人の処分|具体例|概要

相続人が遺産を売却した後に遺言が発覚するケースもあります(前述)。
その場合は,具体的状況によって最終的な権利の帰属が決まります。
結論に影響を与える事情は,遺言の内容・登記の状態などです。
具体的事例を使った説明は別の記事に記載しています。
詳しくはこちら|相続|登記と真実の食い違い|具体例|遺言内容vs相続人による処分