【相続人の範囲|法定相続人・廃除・欠格|廃除の活用例】

1 法定相続人は『配偶者』と『子供→両親→兄弟』となっている

法定相続人の範囲は民法上、明確に規定されています。
具体的には次のように順位が決まっています。

法定相続人の範囲(順位)

あ 法定相続人

ア (被相続人の)妻と子供(胎児も含む)イ 子供がいない場合は、被相続人の父母(または祖父母)ウ 父母・祖父母が亡くなっている場合は、被相続人の兄弟姉妹※民法900条

い 代襲相続(参考・概要)

子供の代わりにその子供(孫)が相続人となることもある

代襲相続|孫・甥・姪が相続する・『相続させる』遺言・民法改正による変化

子供には死後認知される場合も含まれます。
詳しくはこちら|死後の認知の全体像(背景・遺産分割と金銭賠償)
例外的に、これら以外の者が遺産を承継できる場合もあります(後述)。

2 相続欠格|悪質性の高い行為→相続人から除外される

相続人でも、例外的に相続権を制限されることもあります。
相続欠格や廃除という制度です。
まずは相続欠格についてまとめます。

相続欠格

あ 相続欠格の事由

ア 被相続人又は相続について先順位・同順位の者への殺人・殺人未遂→故意、かつ、刑事罰の執行(執行猶予期間満了は含まれない)
イ 被相続人の殺害を知ったが告訴・告発を行わなかったウ 詐欺又は強迫により、遺言の作成・変更等を強要した、又は妨げたエ 遺言を偽造、変造、破棄、隠匿した

い 相続欠格の手続

家裁の審判などの手続は不要である

う 相続欠格の効果

相続人から除外される
※民法891条
遺留分の権利を行使することもできなくなる(後記)

相続欠格は、これ自体についての裁判所の手続はありません。
なお『遺言の偽造』はその判断で争いになることが多いです。

遺言偽造の実態・法的な問題と予防策(総合ガイド)

3 廃除|虐待・侮辱・非行→家裁の判断で相続人から除外する

相続人から除外する、もう1つの制度として『廃除』があります。

廃除

あ 廃除の事由

ア 被相続人に対する虐待・重大な侮辱イ その他著しい非行

い 廃除の手続|家裁の審判

家裁に審判を申し立てる

う 廃除の手続|申立人
申し立てる時期 申立人
相続開始前(生前) 本人(被相続人と想定される者)
相続開始後(死後) 遺言の記載→遺言執行者
え 廃除の手続|家裁の審理

家裁が『廃除の理由』の有無を審理する
→家裁が『審判』として決定する

お 廃除の効果

相続人から除外される
※民法892条、893条
遺留分の権利を行使することもできなくなる(後記)

ただし虐待や侮辱などを家庭裁判所が認定して初めて廃除が適用されます。
この家庭裁判所の審判は、被相続人が申し立てるか、遺言における廃除の意思表示によりなされます。

4 廃除|実務の実情=破綻・別居中の夫婦の活用例が多い

廃除の制度・手続が利用される実情はある意味『想定外』かもしれません。
利用される状況の典型的なものをまとめます。

廃除|利用の実情

あ 廃除の利用・実情
子(息子・娘)との対立 多くない
配偶者との対立 多い

※丸山秀平『事業承継特例法と事業承継の法務・税務』三協法規出版p165

い 夫婦間の廃除|典型的状況

夫が多くの資産を持っている
夫婦関係が破綻し、別居している
しかし妻が離婚に応じない

う 妻が離婚を拒否する理由|典型例

・高額の婚姻費用
・将来の相続による財産承継

夫婦関係が破綻しているのに離婚が認められないケースは実際によくあります。
このような法的な拘束は結婚制度自体がもつ不合理性が元になっているといえます。
詳しくはこちら|結婚制度の不合理性(婚費地獄・結婚債権・貞操義務の不公平・夫婦同姓など)
また、配偶者が相続の際に優遇される代表的な制度の1つは遺留分です。離婚に関する解決手続の遂行中にこれを意識した防衛策をとることもあります。
詳しくはこちら|離婚係争中×相続リスク|予防法=遺言作成・信託・遺留分キャンセラー

5 相続欠格・廃除の効果|相続権・遺留分権を失う

相続人(の中の一定の範囲の者)は遺留分の権利を持ちます。この点、相続欠格となった者や廃除を受けた者は、相続人としては扱われなくなります。そこで、これらの者は遺留分を行使することもできなくなります。
詳しくはこちら|遺留分権利者・遺留分割合と遺留分額の計算(改正前後)

6 相続人が存在しない場合『特別縁故者』が財産を承継できることがある

相続人が存在しない場合、遺産は最終的に国に移転します。
しかし、例外的に故人と関係が濃厚であった者が遺産を承継することもあります。
例えば内縁の妻が典型例です。
詳しくはこちら|相続人不存在では遺産は特別縁故者か共有者か国庫に帰属する
本記事では、法定相続人の範囲や相続人から除外される相続欠格、廃除の制度について説明しました。
実際には、個別的な事情により、法的扱いや最適な対応が違ってきます。

本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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